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遺伝病でも正常iPS 京大などマウスで作製成功

(2012年2月11日) 【中日新聞】【朝刊】【その他】 この記事を印刷する

遺伝子異常を自然修復

遺伝病のマウスを使った実験の流れ

 京都大と帝京大などのチームは、遺伝病のマウスから、病気の原因の遺伝的異常が安全に修復された人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作ることに成功した。iPS細胞を使った遺伝病治療につながる成果として、米科学誌の電子版で10日発表した。

 iPS細胞は患者自身の皮膚などから作ることができ、神経や筋肉など望みの細胞に変えることができる。再生医療の切り札とされているが、遺伝病の場合は患者の遺伝子の異常を引き継いだiPS細胞ができてしまうため、治療に使うのは難しいとされている。

 京大の多田高准教授(幹細胞生物学)らは腎不全の原因にもなる多発性囊(のう)胞腎に注目。この病気のマウスからiPS細胞を作り、細胞分裂で1万1千個ほどに増やした後、すべての細胞の原因遺伝子を調べた。

 両親から受け継いだ遺伝子などが部分的に入れ替わる自然現象が起き、遺伝子の異常が修復されたiPS細胞を1個だけ見つけた。このiPS細胞を組み込んだ受精卵からマウスを誕生させても、多発性囊胞腎にならなかった。

 自然現象を用いるためiPS細胞の安全性が高く、片方の親から原因遺伝子を受け継いで発病する他の遺伝病に応用できる可能性がある。多田准教授は「人間でも使えるか確かめたい」と話した。

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