東京電力福島第1原発2号機の原子炉圧力容器底部にある温度計の一つが保安規定の制限値80度を超えた。東電や政府は温度計自体の不良との見方を強めているが、原子炉の安定冷却の大きな指標となる温度データすら信頼性を欠き、炉内の状況を把握できないままの「冷温停止状態」の危うさを露呈した形となった。
東電によると、問題の温度計の表示が上昇し始めたのは1月末。この時点では実際に温度が上がっているのか、温度計の不良かは判断できず「念のため」(東電)注水量を増やしたという。だが、12日午後になり、短時間に75~90度の間を乱高下するようになったことなどから不良の可能性が高いと判断した。
温度計は、温度によって電気抵抗の変わる金属を利用し、電流から温度を算出するタイプ。東電は電気抵抗の再測定などで温度計の状態を確認する。
しかし、そもそも野田佳彦首相が昨年12月に福島第1原発の冷温停止状態を宣言した最大の根拠は、1~3号機の圧力容器底部の温度が100度を切ったと判断されたことだった。当時から温度計には最大で20度もの誤差があるとされていたが、今になって故障の可能性に言及することは、これまでよりどころにしていたデータの信頼性に疑問を抱かせかねない。
工藤和彦・九州大特任教授(原子炉制御工学)は「炉内の燃料の分布を把握できていない以上、局所的に高温になっている可能性も完全に排除すべきではない。高線量のため、新たに温度計を設置することは不可能で、もし残りの二つにも異常が出た場合には深刻な事態になる」と指摘している。
【西川拓】
毎日新聞 2012年2月13日 15時33分(最終更新 2月13日 15時36分)