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院長Blog(治療について)

名古屋市中区にて皮膚科・美容外科を診療する「皮ふ科SSクリニック」の院長Blogです。

多血小板血漿治療 しこりについて

多血小板血漿治療(W-PRP)について反省しています。
 
以前このブログでしこりなど作ったことがないと豪語していましたが、
その後三人の患者さんでしこりが生じてしまいました。
 
2例はケナコルト局注で症状が改善、もう1例は経過観察中です。
 
あえて合併症を報告して、その事実を踏まえて多血小板血漿治療について再検討します。
 
使用している採血管はCascade Medical社製。1800回転で15分遠心分離をかけます。
白いフィルターの下から1cm~1.2cmに血小板が多く含まれています。それを採取します。

 
採取した溶液には血小板、白血球、フィブリンが含まれています。
そしてこの溶液に細胞成長因子(b-FGF)を添加してシワに注射します。
 
私が最も信用をおく研究会からの抜粋です。
 
ほどよいシワ治療の効果を得るには適度な濃度の白血球、血小板、細胞成長因子が必要です。いづれかが多すぎてもよくないのです。
 
拡散不良、分葉核球・血小板・成長因子のいづれか、もしくは組み合わせの濃度が高い時にしこりを生じます。
 
白い線はフィブリン、黄色の球は血小板・細胞成長因子をイメージしてください。

 
 
W-PRP治療の本質は組織破壊と組織修復です。
白血球が組織破壊に関与します。分葉核球が多いと炎症が強く出てしまいます。
 
W-PRP療法は分かりやすい表現をすれば「肌の中のリフォーム」です。
少し肌の古い部分を壊して、自分の再生能力で作り直します。
 
注入方法も重要です。
面で注入するのではなく点で注入して面を作る。

 
しこりを生じた3例を振り返ると2例はワンショットの注入量が多すぎた気がします。
パンクチャーテクニックで少量ずつ点状に注入して全体として面を作るのが基本です。
 
また強すぎるマッサージも注入したW-PRPを修正したい範囲を超えて広く拡散させる可能性があります。
 
もう1例は27歳の若い女性です。
今までにヒアルロン酸などいろいろな注入療法を経験されています。
 
研究会でも前治療が問題となりました。
吸収されにくい注入物や架橋型のヒアルロン酸注入の既往があるとW-PRPでしこりを生じるリスクがあるとの報告がありました。
 
レスティレンなど純正のヒアルロン酸ではリスクが少ないようです。
 
W-PRP治療での合併症を回避させるためには、前治療歴をしっかりと確認する、一箇所に注入しすぎて拡散不良を生じさせない、分葉核球・血小板・成長因子のいづれか、もくしは組み合わせ濃度を高くしない、などが必要と考えます。
 
合併症ゼロでよりよい結果を出す。
この言葉をモットーに精進したいと思っています。
 
追伸
ブログ内容についてご指導いただいたK先生有難うございます。
多血小板血漿治療についての正しい知識が普及されるよう頑張りたいです。

頭痛、肩こりなど

眼瞼下垂症と頭痛、肩こりなどについて少し述べます。
 
42歳の男性です。
10年前より瞼が開けづらいとのことで受診されました。

 
目もとだけの写真ですみません。
眉毛が上がり、前額にはシワがくっきりと出ています。
 
瞼を開けるのに前頭筋をかなり使っています。腱膜性眼瞼下垂症の症状です。
 
眼瞼下垂手術では切開線が重瞼ラインとなります。
もともと一重瞼の方は眼をぱっちりとしすぎると顔の印象が大きく変わってしまいます。
 
一重瞼の方は睫毛の生え際から5~6mmの比較的低い位置で切開します。
奥二重ぐらいになるのをイメージして切開デザインします。
 
皮膚と眼輪筋も切除します。
皮膚と眼輪筋の負荷を取る事でより開眼しやすくするのです。
 
眼瞼下垂手術を執刀するたびに思います。
解剖的なバリエーションが多い、と。
 
挙筋腱膜の前転を妨げる下横走靭帯が太い一本の索状物となっている人もいれば、細く
数本に分かれている人もいます。
 
さらに言えば、一人の患者さんでも右と左で下横走靭帯の形態が異なることがあります。
この方は左眼の挙筋腱膜を前転するのに外眼角靭帯に割を入れました。
 
挙筋腱膜をスムースに前転させるのがこの手術の最大のポイントです。
眼科隔膜の眉毛側をカットするなど様々な工夫があります。
 
術後1ヶ月です。左眼は手こずったせいか、左上眼瞼がやや腫れています。
上眼瞼と眉毛の距離も縮まりすっきりとしたいい男になりましたね。
(ちなみにこの患者さんは保険診療で行いました。)

 
術後1ヶ月、患者さんの感想です(電子カルテから抜粋です)。
「眼が楽に開きます。今まで眼を開けるのにすごく力を使っていたのが分かりました。
体が楽になった。すっきりしました。たとえるならば詰まっていた鼻がすっきりした感じ。」
 
鼻詰まりがすっきりしたとは面白い感想ですね。
 
ここからが本題。
私は術後1ヶ月の時点で術前、術後の評価を行います。
この方は術前の肩こり、頭痛を10として術後の肩こりが1、頭痛が1まで低下しています。
 
頭痛、肩こりが改善する症例が多いことに驚きます。
 
しかし、しかしです。
あくまでも瞼の開けづらさに対して眼瞼下垂手術を行います。
そしてその結果としてなぜか頭痛、肩こりが改善したのです。
 
頭痛を主訴に眼瞼下垂手術を希望して受診される人もいます。それは違うと思う。
頭痛は生理学的に解明されていないことが多いはずです。
 
瞼が普通に開いている人にはまず神経内科を受診するように勧めます。
やっかいなのは代償性眼瞼下垂症という概念です。
 
瞼は普通に開いているように見えるが挙筋腱膜の外れを精一杯ミュラー筋が代償している。ミュラー筋の刺激が大きすぎるため青白核が刺激され頭痛を生じる。
 
このような方の話をじっくりと聞くと頭痛というようりは眼の奥が痛いという表現をされるのに気づきます。
 
代償性眼瞼下垂症による頭痛、眼瞼下垂症とは関係のない頭痛。
鑑別できるのか? 難しい、本当に難しいです。
 
眼瞼下垂症、本当に奥の深い疾患です・・・。

moku もくあさ

もくあさを知っていますか?
 
中日新聞の第4木曜日に入ってくるフリーペーパーです。
ついにSSクリニックが登場しました。
 
皮ふ科医が行うお肌のアンチエイジングです。

 
広告規制により治療後の写真が掲載できないのです。
 
治療後の写真が気になりませんか?
患者さんの同意を得たので出しますね。
 
左の写真から順に掲載します。
①48歳の女性、左頬部の多発性老人性色素斑です。

 
大型の老人性色素斑を3つQスイッチルビーレーザーで治療しました。
治療2ヵ月後です。軽い炎症後色素沈着が残っています。

 
半年もすればきれいになります。
炎症後色素沈着にレーザー照射するのはご法度です。
 
炎症後色素沈着なのか取りきれていないのか?
 
これは難しいです。だから一年以上長期にフォローするのです。
再照射するのは初回のレーザー照射から最低一年は待ちます。
 
しっかりとフォローしないドクターがいることが問題を複雑にしています。
 
②48歳女性、ほうれい線が主訴です。

 
W-PRP(多血小板血漿治療)4ヵ月後です。素晴らしいですね。It’s so natural .

 
ヒアルロン酸を何本使ってもここまで改善できません。入れすぎると硬くなりますよ。
 
ほうれい線治療はその自然な仕上がり、効果の持続からW-PRP療法がお勧めです。
 
③73歳女性、頬部・下眼瞼のホクロです。

 
顔の大きなホクロはうざったい印象を受けます。
 
レーザー治療5ヵ月後です。跡形もありません。

 
当院の美容治療は決して安くありません。キャンペーンもしません。理由があります。
これからもよい治療を続けるのみです。

ダーモスコピー

開業以来ずっと愛用しているダーモスコピー Derma 9500B (デルマ医療)

 
外来診療にダーモスコピーは欠かせません。
葛西形成外科を見学させて頂いた時、葛西先生がスカラ社のダーモスコピーを使用していました。便利が良さそうで興味を引きました。私もすぐに購入しました。
 
USB Microscope (スカラ株式会社)
パソコンや電子カルテにつなげてモニター画面で見られるのが大きな特徴です。

 
さっそく自分の肌チェック。
肝斑の人の肌は擦り減っていることが多いのでこれでチェックしたいですね。

 
無反射映像モードにするとシミを観察できます。倍率は30倍です。

 
肝斑とADM(後天性真皮メラノサイトーシス)の鑑別は本当に難しいものです。
これで診断の糸口がつかめればよいですね。
 
もう時代が違うのです。
よい治療をするにはよい医療機器が必要です。進歩なき医師は退場すべし、です。

ランベルト・ベールの法則

ランベルト・ベールの法則
 


 
ウィキペディアより引用。
 
千歳台きたのクリニックの北野幸恵先生に教えてもらいました。
距離Lを血管の大きさと考えます。Iゼロはレーザーの光と考えてください。
 
血管病変にはオキシヘモグロビンへの吸収率のよい595nm前後の波長が頻用されます。
なぜ脱毛に使われる810nmのレーザーが1~2mmの口径の血管病変に有効なのか?
 
ランベルト・ベールの法則から下の①が理解できます。
 
①血管径 50μmに対する吸収率は波長 595nmが0.798に対して波長 810nmでは0.033と全く歯が立ちません。血管径が 2mmになると 595nmが1、810nmは0.75とかなり頑張れる
数字になります。
 
②大きな血管径では吸収係数が低い波長のほうが血管全体に温度上昇を生じ易くなります。吸収係数が高い波長では血管の局所的な破壊にとどまってしまいます。
吸収係数は波長 595nmでは320に対し、波長 810nmでは7です。
 

 
この①②より810nmの波長が2mm程度の血管の治療に有効なことが説明できます。

さも分かっているように書きましたがすべて北野先生の講演内容からの引用です。
頭脳明晰とは言い難い私には理解にかなり時間がかかりました。
 
北野先生は頭がよすぎてついていくのが大変です。
脱毛、血管病変の治療ともなかなか奥が深いのです。
 
開業してからたくさんのよいメンターに出会っています。出会いに感謝です。


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