【社説】韓国の政治家たちは国を滅ぼしたいのか

 選挙の日が近づくほど、国の土台にヒビが入り、崩壊する音が各方面から聞こえてくる。国防改革法案は2015年の戦時作戦統制権移管に備えるため、あるいは哨戒艦「天安」爆沈や延坪島砲撃など北朝鮮による奇襲攻撃に備えるためにも、一日も早く国会で可決しなければならないはずだが、今国会での採決は事実上、不可能と見込まれている。国会国防委員会に所属する議員のおよそ70%が賛成し、与野党間での政治的な駆け引きがなかったにもかかわらず、誰もこの法案が可決するとは予想していない。国会議員選挙の日程が近づく中、この法案は得票にはほとんどプラスにならず、しかも複雑で頭の痛い審議が必要だからだ。

 野党・民主統合党(以下、民主党)は「政権を獲得すれば韓米自由貿易協定(FTA)を破棄する」と明記した書簡を米国大統領に送付した。野党は実際に政権を担当していないため、現時点では国が直面するさまざまな事情にあまり詳しくはないだろう。そのため、今年12月の大統領選挙で野党候補が勝利し、それから実務担当者の説明を聞くなどさまざまな事情を把握した上で、FTAを破棄するかどうかを決めても遅くはないはずだ。ところが野党は現政権の任期がまだ1年も残っている今の時期から、デモでもするような勢いで米国大使館に押し寄せ、この書簡を伝達した。つまり野党にとってFTA破棄という問題は、国益という観点ではなく、選挙戦略という次元で取り扱われているということだ。

 国会政務委員会は与野党間の合意に基づき「不実(経営に問題のある)貯蓄銀行被害者支援特別法(以下、特別法)」を採択して本会議に送った。現行の預金者保護制度は元金5000万ウォン(約345万円)までの預金を保護することを定めているが、特別法はこの制度をわずか11年で見直すだけでなく、違憲が疑われる箇所も複数ある。ところがこれに反対の立場を表明した政務委員会所属議員はわずか1人だ。法制司法委員会はこの特別法が憲法に違反している可能性について「所管する常任委員会が採決したため、改めて問題視することはできない」などと責任逃れをしている。つまり政務委員会も法制司法委員会も、選挙を前にして貯蓄銀行問題の被害者から憎まれないよう計算しているのだ。

 民主党は「2017年までに非正規職を現在の半分にまで減らす」という公約を今月に公表した。すると与党セヌリ党は「2015年までに20万人の非正規職を正社員に転換させる」という公約を掲げた。昨年は大学授業料半額をテーマに与野党間で激しいやりとりが行われたが、最近は非正規職問題など、若年層の票を意識した話題が目立っている。セヌリ党は「卒業後に中小企業への就職を約束した大学生向けの奨学金制度の導入」や「徴兵時の給与を現在の9万ウォン(約6200円)から40万ウォン(約2万8000円)に引き上げる」という公約を提示した。これに対して民主党は「大手企業に対して毎年3%ずつ若年層の追加雇用を義務化し、これを守らない企業には罰金を支払わせる」と表明した。また零細自営業者を守るために、大型スーパーや企業型スーパーマーケット(SSM)を規制するという公約も掲げた。

 今この国の政治家たちは、票にさえなれば国の土台でも屋根でも何でも取り崩しそうな勢いだ。しかも、国の根幹を守るために必要なことでも、票につながらない場合は一切関心を向けない。まずは何が何でも自分の金バッジを守り、政権を獲得することが最優先で、実際の国の問題はその次ということだ。まるで与野党が一致団結して国を滅ぼそうとしているかのようだ。

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