「人口が減れば、日本の企業は否応なしに国際化せざるを得なくなります。優秀な若者は海外に進出していく一方で、海外からの移民が増えることになるでしょう。ただ、移民を受け入れて製造業などの現場の労働力にするとなると、日本社会の仕組みが変わってしまいます。多種多様な言語や宗教・文化が日本国内にあふれることになりますし、治安が悪くなるかもしれない。日本人はこれまで、安全と水はタダだと考えていましたが、これからは安全も水も、おカネを出して買わなければならない時代になる可能性が高い」
これからの世代に申し訳ない
前半で指摘したように、現在、すでに老年に差しかかっている人と、これから社会に出て行く世代では、社会保障関係の収支だけで、1億円以上も差が出る。
その上、これからの世代はここまで述べてきたような社会の崩壊などに巻き込まれ、最後には増税でトドメを刺されることになる。民主党・野田政権は、国会議員の定数削減や公務員の人件費削減を後回しにし、消費税を10%にアップしようと画策しているが、この恐るべき人口激減社会では、その税率は最終的に40%にも達すると見込まれている。そうしないと、国自体がもたないからだ。
「高齢者が4割に達し、労働人口が激減する中で、それでも現在と同じような社会を維持しようとすれば、これからの世代に大変な負担がかかる。50年後には労働人口がほぼ半減するわけですが、それでも今と同じGDPの水準を維持しようとすると、その時点での労働世代は、今の1・85倍の効率と生産性で働かなくてはなりません。若い世代に対し、何とかプラスイメージの将来像を描いてあげないと、負のスパイラルはどん底まで加速してしまいます」(前出・鬼頭氏)
「高齢者間の格差も、今後は増大していくでしょう。社会保障が縮小していけば、資産を持っているお年寄りと、そうでないお年寄りに大きな差がついてしまう。経済力がない高齢者は、十分な医療を受けたりできない人や、食事もロクに摂れない人が出て、寿命が縮む可能性があります」(前出・永濱氏)
あなたの子や孫が生きるのは、こんな時代だ。
大学を出て何とか就職をしても、給与は親や祖父の時代よりずっと下。にもかかわらず税金や社会保障の負担は跳ね上がり、収入の大半がその支払いに消えていく。貯金をしたいが、毎日を生きるのが精一杯で、そんな余裕はどこにもない。
結婚してもヘタに子供を産むことすらできない。病院に行く費用もバカにならず、そもそも近所にまともな病院がなくなっている。保育園や学校も周囲からなくなってしまい、子供たちは、本数が激減した電車やバスに乗り、老朽化した橋や道路を渡って遠くまで通わなければならない。
日本人の数が減った一方で、周囲には外国人が増えた。治安が悪い気がして警察にパトロールをしてほしいが、近所に警察署がない。何かあっても、パトカーや救急車が駆けつけるまで、何十分もかかる・・・・・・。
これは決して、空想の類ではない。近い将来、この日本で起きる「現実」なのだ。必ず来るであろう、この厳しく残酷な時代に、どう対処すればいいのか。〝現在の大人〟たちの叡智が試されている。
「週刊現代」2012年2月18日号より
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