現在の日本の農家は、農業とは別に近くの工場などでパートをしたり、高齢者の年金と合わせた収入で成り立っていますが、年金ももらえるか不明、地方に工場が存在するかも怪しいとなれば、将来、この国に農業など果たして存在しているのだろうか---と大いに疑問です」(土居氏)
前出の国交省の報告書によれば、2030年頃から、「インフラの維持管理・更新費が倍増」するという。道路や橋、上下水道など日本のインフラ基盤は、1960~1970年代の高度成長期前後に建設されたものが多い。これが、これから一斉に耐用年数の限度を迎え、造り替え・建て替えや、補修工事を余儀なくされる。
そのため、今は年間8兆円前後のインフラ維持・補修費が、2030年頃には年間20兆円近くに達する恐れがあるというのだ。
移民を受け入れるのか・・・・・・
年金や医療費すら賄えるか危うい中、当然、こうしたインフラ整備に、十分な予算を回せるはずもない。結果として、橋や道路はロクに補修を受けることもなく、そのまま朽ち果てていく。そして、東日本大震災のような天災に見舞われた際に一気に崩壊し、大きな被害を出すことになる。
「農地の荒廃は、自然の荒廃と同義です。森林は荒れ放題になり、洪水や土砂崩れなどに対する耐性が著しく低下します。その結果、自然災害が多発することになる」(前出・土居氏)
インフラ同様、行政コストの増大も大問題だ。財政危機に苦しむ欧州各国では、ゴミ収集車が動かなくなって街中にゴミが山積みになったり(ギリシャ)、パトカーのガソリン代がなくなってガス欠になったりする(イタリア)など、今の日本では信じがたい事態が起きている。
だが今後、日本でも同じことが、より大規模に起こることもあり得る。人口減少に伴う行政コストの増大に各自治体が耐えられなくなれば、肝心な際に、救急車や消防車が来ないことが想定される。そもそも、周辺に警察署や消防署、病院がなくなっている可能性すら高いのだ。
「その他、大学など教育機関も危機的状況です。今、全国に大学は700以上ありますが、将来はこれが300程度に減るのは避けられません。地方の大学は、現在でも学生数が1000~2000人程度ですから、なくなってしまう可能性が高い。地方銀行に内情を聞いてみても、不良債権先として危ないとされるのは、旅館、病院、そして大学と言われていますから」(土居氏)
こうしてすべてが負の連鎖、悪循環につながっていく。人が減ることで、そこで働き、生活を維持することはどんどん困難になっていく。空き家や空き地、荒れ地だらけになり、不動産価値は暴落する。公共サービスは低下・消滅し、ますます人が減る・・・・・・。
こんな国に住んでいたくない。将来の世代は、おそらくそう思うのではないか。だが、それがまた、人口減少と日本の空洞化に拍車をかけることになるという。信州大学経済学部教授の真壁昭夫氏はこう話す。
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