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【社会】

治療薬ヨウ素説濃厚 西日本の汚泥からも検出

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 昨年秋、福島県各地の下水処理場の汚泥から相次いで検出された半減期の短い放射性ヨウ素131。福島第一原発からの放出を疑う声も出ていたが、最近は放出量は激減しているのに、福島以外の全国各地で検出され続けている。専門家からは甲状腺がんなどの治療で使われたヨウ素が、患者から排出されて検出された、との見方が強まっている。

 全国の自治体が調べた下水道汚泥の放射性物質の濃度の値を、国土交通省がまとめている。事故後間もないころならともかく、札幌市や長崎市など福島から遠く離れた地域でも断続的にそれなりの濃度の放射性ヨウ素が検出されている。

 仮にこれが福島第一に由来したものとすると、今も溶け落ちた核燃料が連鎖的な核分裂(臨界)をし、放射性ヨウ素が漏れ続けていることになる。ただ、核燃料の冷却が進み、大量の放射性ヨウ素が出る可能性は低い。

 専門家が排出源とにらむのは、甲状腺がんやバセドー病の治療で使うカプセル入りの甲状腺治療薬。甲状腺がんの患者には、一回の治療で三七億〜七四億ベクレルのヨウ素131が投与されるという。

 日本核医学会によると、こうした治療ができる医療機関は全国に約五十カ所ある。

 放射線医学総合研究所(放医研)の説明では、病院ではヨウ素が濃度限度(一リットルあたり四〇ベクレル)以下になるまで待ってから下水に流すルール。患者は体内のヨウ素残量が五億ベクレルまで下がれば退院できる。ただ、家庭のトイレからの排出基準はないという。

 東京大付属病院放射線科の中川恵一准教授は「ヨウ素131を使った治療は日常的に各地で行われている。事故から時間がたった後に検出されているものは、治療薬を飲んだ患者から排せつされたものと考えられる」と指摘する。各地の汚泥中の濃度は「問題がないレベル」とした。

 放医研は「体内に五億ベクレルが残る状態で患者が退院しても、一般公衆への被ばくは年間一ミリシーベルト以下になることが確認されている」と説明している。

 

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