市への公開質問状〈第2次〉

『守る会』は2002年4月24日、(前回の2月25日につづいて)再び川崎市市長室を訪れ、
市長宛として、次の3通の「第2次公開質問状」を提出いたしました。

(4)市が真剣に対応する意思があるのか、その姿勢を問いただす公開質問状

(5)教育環境に対する前回の市の回答の矛盾点を指摘し問いただす質問状

(6)環境アセスの内容に業者の不正・不実があることを指摘した公開質問状

(4)は、市長の、このプロジェクト問題に対する対応に真剣味がなく、市行政の仕組みもまっとうに機能していないのではないか、と指摘し、実効的な対応を求めるべく意見を供したもの。

(5)は、前回2月25日付で提出した公開質問状(3)学校施設の増設を含めた“まちづくり”に関するもの)への市の回答に対し、その内容のあいまい性・矛盾性を指摘しあらためて意図を確認する再質問を突きつけたもの

(6)は、4月13日に行われた公聴会の場で判明した事実を根拠として「この建築事業者が行った環境アセスの評価内容は不正確かつ不誠実なデータ歪曲によって行われているものであり、その内容は正当なものではない」と指摘し、それに関する市の見解と対応を要求するものです。

いずれも、市および建築事業者が“あいまいの内に隠蔽しよう”としている問題点を強く指摘し、そのことの“正当なる解決”を強く求める内容です。

2002年7月17日付で回答が(4)と(5)に続いて(6)に対するものやっと届きました。
併せて掲載いたします


(4)市が真剣に対応する意思があるのか、その姿勢を問いだたす公開質問状

 2002年4月24日

川崎市長 阿部孝夫 殿

公開質問状

 鷺沼地域の住環境を守る会

  拝啓 市長におかれましては益々ご活躍のこととお慶び申し上げます。
 お忙しいと存じますので、表にして質問させていただきます。

1.市長への面会について

『守る会』代表、市長への面会を要求(2002年1月)
             ↓
秘書課長は、市長は多忙で、面会時間がとれない
             ↓
本当に多忙なのか疑問
(市長小学校訪問/焼肉店に現れる[2月1日朝日新聞掲載]/在日外国人の教室訪問)
             ↓
これらは本当に必要な行為か。パフォーマンスではないか。
             ↓
市長への面会希望多数で困惑(秘書課長の談話)
             ↓
行政に対して、市民が非常に不満を抱いているから
             ↓
大幅な行政改革が必要、市民の意見を積極的に採り入れ、反映が肝要
             ↓
市長への手紙急増
(通常60件が120件へ[1月25日神奈川新聞掲載]新市長への期待のあらわれか)
             ↓
市長への手紙の返答は前市長と変わらず。ただ市の言い訳に終始し、なんら解決策を打ち出さない。各局にまかせて、答えさせている。もっと有効性のあるものにしたらどうか

2.環境影響評価について

環境影響評価が機能していないのはなぜか?
             ↓
環境影響評価の費用は事業者負担。評価の結果、開発行為を見直すという選択肢がない。制度そのものの不備(他の市町村のものと比較しても、そう)
             ↓
環境影響評価の裁定を下す審議会委員の構成に問題あり。
現在委員長の戸田孔功氏(弁護士歴40年)は高齢すぎ、判断にも疑問点が多い。
その他の委員は各分野の権威であって自分の分野には精通していても、総合的に判断する視点で疑問点あり。過去の例を見ても、個々の影響については若干修正はあるが、総体的影響については、正当な評価は下されていない
             ↓
つまり、市の「環境影響評価」は機能していない
             ↓
これでは、税金の無駄遣いではないか

3.教育問題について

前回質問状にて、鷺沼小学校、富士見台小学校の児童数増加による教室不足、教育環境の悪化を訴えた(2月25日)
             ↓
「鷺沼小学校の校舎内の改修を行って学習環境を整備する」と市から回答があった(4月1日付回答)。しかし、実際の計画は示されていない。校庭をつぶしてプレハブ校舎を建てるのか?本年度の空き教室数は「0」である。
             ↓
教育委員会は抜本的対策の必要性を認めている
             ↓
小学校を新設する適当な土地と予算がない、と市は言う
             ↓
「適当な土地」としては、鷺沼4丁目プロジェクトの土地が最適。
ここはもともとサレジオ学院の学校跡地であった。
             ↓
「予算がない」というが。
川崎駅西口の再開発のビルは、総工費230億円(この額について市側ははっきり回答せず)2000人収容できるクラシックホール2億円のパイプオルガンホールの維持費だけで毎年20億円? 1日の使用料が45万円。これは赤字必至の計画。(駅前の地元民は民謡が歌える気楽なホールを期待していたという)これは、地元活性化とはほど遠い、無意味な計画である。
             ↓
税金のおおいなる無駄遣いであり、これで「予算がない」とは言い訳にならない。
私たち市民はこんな無駄遣いのために税金を払いたくはない
             ↓
2000人収容のホールを作るためには税金を使い、小学校の校庭をつぶしプレハブ校舎を建てて児童をぎゅうぎゅう詰めにして「教育施設には税金を惜しむ」ということがなぜ許されるのか。等々力アリーナも100億円かけて作ったが、成人式以外にはそれほど活用されていないの現状。いまや、ハコモノを作って、それを「文化的事業だ」という時代ではない。次代を背負う児童の教育施設をないがしろにしてまで、ホールを作る必要などない。反対です。ホールの建築計画は、建築事業者への違約金さえ払えば、変更可能です。市長は、早く目をさましてほしい。

横浜市長に若い中田宏氏がなり、その実力のほどは判りませんが、「横浜市長に比べて、川崎市長(の働き)はどうも…」などと評されるのは川崎市民として心外です。「川崎市民はホールさえ作れば文化的だと思いこんでいる」。その程度の認識しか持っていないと見くびられるでしょう。横浜市に隣接する鷺沼小学校の教育施設が貧困なままでは、横浜市民に冷笑されるでしょう。鷺沼地区に市の施設はまったく(ひとつも)ありません。幼児から高齢者が気軽に利用できる施設を、あわせて建設してもらいたい。

 市長の手紙や公開質問状に対する回答を関係局に書かせていたのでは、以前と何もかわりません。それこそ税金の無駄遣いです。新しい対応のできる組織を作らなければ、何も改善されません。私たちは、これを、かなり絶望的な気持ちから書いています。ただの言い訳だけの返事は要りません。上記の質問および意見に対して直接、市長の口から、面会なり、電話なりの回答を求めます。

  以上

この質問状に対する回答(平成14年7月17日付)は下記の通りです。↓

質問1.の面会の要請については「担当部局が対応する(から、市長の私は面会しない)」という回答です。

質問2.の環境影響評価制度への不審指摘に対しては「川崎市の評価制度は、こういう仕組みになっているよ」と説明をしているのみの文章であり、まず質問に答える回答になっていません。(この市に、公聴会制度や、審議会制度があるのは、言われなくたって知っているし、審議会が何をしているのか、なんてことを質問しているわけではない。こんな内容をもって“回答でござい”と送りつけてくる阿部市長の国語読解能力を疑いたくもなります

質問3.の教育問題に関しては、あくまでも「学校内での改修・増築しか、しない」と断言するのみの内容。その理由は(ここには記してありませんが)財源がない、という主張があることはすでに判明しています。そのことに対する反論材料として川崎駅西口ホールの件を出しているのに、ホールの効能ばかりを並べる愚文にも辟易するところです。しかも、2億円超のパイプオルガンについては、口をぬぐって、触れもしません。

 お手紙拝見いたしました。また、御返事が遅れまして申し訳ありません。
 ご質問に対して次のとおりお答えいたします。

 初めに、私との面会についてですが、松岡様が市長への手紙で訴えていらっしゃる件に関しては、具体的な事案についての具体的な意見であり、すでに担当部局が条例等に決められた手続きに従い、その権限と責任のもとに対応しています。ご不満な点があるかと思いますが、今後も担当部局で制度に従って対応してまいります

 次に、環境影響評価についてのご質問ですが、川崎市の環境影響評価制度については、環境影響評価法及び他都県市の条例と同様に事業者の責任と負担の下に、調査、予測及び評価を行うと定め、実施時期については基本計画の段階で行うことと定めています。
 川崎市の環境影響評価制度は、他都市に比較し小規模の事業から実施していることが特徴のひとつとなっています。また、評価の目標とする基準等についても、条例に基づく地域環境特性等を基に、環境影響のできる限りの低減を求めるため、地区別環境保全水準を定めるなど、きめの細かいものとなっています。特に緑の量に関しては、緑被として独自の算出方法を定め、緑の確保に努めています。
 その他、市長意見表明の場としての公聴会制度、公平な立場で審議をするため、各方面の専門家とともに市民代表を含めた審議会制度等を設けています。
 なお、前述のとおり専門家及び市民代表党で構成する川崎市環境影響評価審議会では、事業者が準備書等で述べている予測・評価について、市民意見等を基にして可能な限り周辺環境へ配慮がなされているか、科学的、客観的な見地及び市民的な立場から審議を行っているところです。

 次に、教育問題についてですが、本市でも小学校等の整備については重要な課題として取り組んでいます。
 全国的に少子化が進んでおりますが、本市では住宅開発等に伴い、小学校・中学校の児童・生徒が増加する傾向も見られます。これに対応するため、既存の学校内での改修、増築等さまざまな方法により教育環境の整備を行っています。
 御指摘の鷺沼小学校については、校舎内の改修等により学習環境の整備を行ってまいります。

 また、御指摘の(仮称)川崎駅西口ホールについてですが、このホールは長い間、市民の皆さんや音楽愛好家の方々の念願であったコンサートホールです。
 「よいホールはよい聴衆によって支えられる」という考え方を基本に、児童・青少年のための音楽教育や親子コンサートの開催など、子どもたち、若者に豊かな文化、芸術にふれる機会を増やし、鑑賞者とプロ・アマチュアオーケストラとの交流を進めたり、さまざまな文化を通して国際交流を図るとともに、日本の伝統文化にもふれあえるようにしたりすることも、教育を支える大切な文化環境として捉えています。その主旨を理解していただきたいと思います。
 施設としては、音楽利用を中心とした大ホール及び小演奏会等の利用可能な小ホール的機能を備えた市民交流室のほか、練習室を数室設置し、また市民の方々の文化活動に寄与できる交流、学習機能等も備え、本市の都心の新しい魅力づくり、にぎわいのあるまちづくりにふさわしい文化施設としての計画を進めています。このホールを核に周辺の商業、業務機能との相乗効果を図り、首都圏の中でも特色ある文化機能を備えた魅力ある都心づくりを目指すとともに、今後も文化・芸術を享受できる場や機会を提供してまいります。

平成14年7月17日

川崎市長 阿部 孝夫

受付番号 124-1


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(5)教育環境に関する前回の市の回答の矛盾点を指摘し問いただす質問状

この再質問状のもととなる前回質問状および回答はこちらです。併せてごらんください。

平成14年4月24日

川崎市長 阿部孝夫様

公開質問状

 拝啓 貴殿におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。先日は、私ども「鷺沼地域の住環境を守る会」からの質問にお答えいただきましたが、それについて再度ご質問申し上げます。

 受付番号755でのお返事は、

(1)建物の建築確認は速やかに交付せねばならず、それに際しては学童の増加数は審査していない

(2)学校については既存の学校内での改修増築で対応する

(3)人口計画については将来予測や推計をもとに市政運営に努めている

(4)不特定多数を対象としたタウンミーティングは検討中

ということであると理解いたしました
 
 1.まず、(3)についてですが、どのような市政運営に努めていらっしゃるのか不明ですので、具体的にご説明ください。

 2.前後しますが、(1)でのお答えにあるように、建築基準法の上では人口数についての審査はないかもしれません。しかし、(3)のお答えとは矛盾しているように感じざるを得ません。次々に建設されていく集合住宅の入居人数を考慮せずには人口計画はあり得ないのではないでしょうか。このことについて見解をお伺いします。

 3.“今後とも児童の増加への対応については長期推計を見ながら安全で快適な学習環境の確保を図れるように”とのことですが、教室数だけ確保されればそれでよいのでしょうか。最近の仮設校舎は昔と違い室内は快適なものになってきたと聞いています。が、仮設校舎の増築は、校庭をつぶしてしまいます。狭くなった校庭で複数クラスが一緒に体育の授業をすることになります。児童は校庭で元気に走り回るので衝突して怪我をすることも増えており、今現在でさえ安全で快適とは言い難い状況になっております。この点についても見解をお聞かせください。

 4.また、通学路も学習環境という点では考慮されるべきではないでしょうか。例えば、犬蔵2丁目の子ども達にとって犬蔵小学校は遠い上に安全に通えるとは言い難い状況のため、比較的安全に通える鷺沼小学校に越境通学しています。犬蔵地区、特にこの地域は交通量の多い道にも関わらず舗道もなく見通しも悪いのですが、整備の予定はないのでしょうか。

 5.加えてこの犬蔵2丁目では大規模な区画整理事業が始まり、広範囲にわたる宅地開発が行われます。その開発の中に学校建設は予定されているのでしょうか。予定があるとしたら場所を、ないとしたらなぜ必要がないと見なされているのか、お教えください。

 6.タウンミーティングについて、私共はたしかに公的なNPOのような団体ではないかもしれませんが、まちづくりと地域の住環境について真剣に考え行動しているものです。市長のご都合に全面的に合わせる形で開催致しますので、ぜひご出席をお願いいたします。

以上の点についてご回答いただきたくお願い申し上げます。

お忙しい中で恐縮ではございますが、5月10日金曜日までに書面にてご回答をいただけましたら幸いです。

敬具

鷺沼地域の住環境を守る会

この質問状に対する回答(平成14年7月17日付)は下記の通りです。↓ 当然のことですが、下記の回答文は、一文一句すべて元の“回答文書”の通りに記載しています。太字で強調したり、文字色を変えるといった加工はしていますが、文章内容はまちがいなく原文のママです。

質問状における1.「どのような市政運営につとめているのか」および2.の「集合住宅建築ラッシュによる人口変動への配慮はどうなっているのか見解を求む」という質問は、冒頭のただの1行で済まされています。ごくふつうに日本語を理解される方ならおわかりいただけると思いますが、これは"回答"ではありません。市民が質問していることに、何一つ答えていない。

質問状の3.「教室問題〜学習環境問題」に対しては、いつもの単なるお題目=「既存学校内での改修・増築」+「安全指導の配慮」のみの回答。

4.の「通学路の安全対策」にいたっては、言うことがとうとう何も出なくなったのか、乏しいボキャブラリーを繰り返すのみの内容になっています。これは、抜本的・本質的解決をめざそうという姿勢が全く何もないことを露呈しているようにしかみえないのですが、どうでしょうか。

このような“回答”しか示すことの出来ない人物が、この市の"長"を務めていることが、すごく不思議な気がします。いや、本当に阿部市長には申し訳ないが、そう思わざるをえない。それほどまでに、『虚無な』回答文です。

 お手紙拝見しました。また、御返事が遅くなりまして申し訳ありません。

 人口計画と市政運営についてですが、人口等の将来動向は川崎市全体の計画策定及び今後の施策展開の基礎となるものです。

 次に鷺沼小学校については、学区周辺の住宅開発等により児童数が年々増加しています。このため、既存学校内での改修や増築等により教育環境の整備を図っていきたいと考えています。また、校庭利用については、安全指導に配慮し、安全で快適な教育環境づくりに努めているところです。

 次に、通学路の安全対策については、毎年、児童生徒等の登下校時の安全を確保するため所管している教育委員会が学校、PTA及び関係機関と連携、協力し実態の把握と改善に努めています。
 市立犬蔵小学校及び鷺沼小学校においても、毎年交通安全計画を策定し、PTA及び関係機関と連携・協力しながら通学路の安全点検をし、道路環境整備や通学路の見直し等を実施しています。
 御指摘の通学路についても、その実態の把握に努めるとともに、学校及び関係機関と連携・協力しながら道路環境の整備あるいは通学路の見直し等を含めて児童生徒の通学路の安全対策を講じていきたいと考えています。

 次に、犬蔵2丁目における区画整理事業に伴う学校建設ですが、区画整理事業地内には、学校建設の予定はありません。犬蔵小学校への受け入れが可能と考えています。

 最後に、このような具体的な件については、制度的に確立された公聴会等の手続きによるべきものであり、一般的に広く市政について意見を交換する「タウンミーティング」の趣旨とは異なるものではないかと考えておりますので、ご理解いただきたいと存じます。

平成14年7月17日

川崎市長 阿部 孝夫

受付番号 123

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(6)環境アセスの内容に業者の不正・不実があることを指摘した公開質問状

平成14年4月24日

川崎市長 阿部孝夫様

公開質問状

「(仮称)鷺沼4丁目プロジェクトに係わる環境影響評価」の不審点について
市の見解と対応をお尋ねいたします

 拝啓 貴殿におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 さて、去る平成14年4月13日土曜、(仮称)鷺沼4丁目プロジェクトに係わる公聴会が執り行われました。この席上で、指定開発行為者が、市の環境アセスの主旨に反して、現実の環境状況に即していない調査データに基づく不正確かつ不誠実な条例準備書を作成し、これをもって市に審議を図っていたことが判明したため、そのことをご指摘させていただくとともに、この事態に対して市がどのようにお考えなのかその見解と対応をお伺いしたく質問させていただきます。

 この公聴会の席上では、指定開発行為者(以下、事業者と表記)の不誠実な側面が数々露呈いたしましたが、その中でも明白な内容をもつ項目を下記に挙げさせていただきます。

【1】
条例環境評価準備書p.56「交通および地域交通:鉄道」の項目において、鷺沼駅における平成11年度の1日平均乗車人員数が、実は約2万8500人におよぶところを「約2万人」と少なく記述。
(「約2万人」は定期券購入者の数値。定期を買わずに切符で乗車する人員数を無視して評価)
【2】
条例見解書p.59「(1)鉄道関連:1)駅周辺整備及び駅混雑について」の見解において、平成9年〜平成12年の鷺沼駅乗降客数の推移データを示して「乗降客数は近年減少傾向にある」と記述しているが、ここでは、乗降客数が前年比7.5%増に転じていた「平成13年分」の推移データをあえて掲載せず、事実を押し曲げた見解を提示。(この「平成13年分」の調査データは、見解書作成時(平成14年1月)すでに川崎市発行の『統計川崎』で示されており、見解書掲載は十分可能であった)
【3】
条例環境評価準備書p.304「コミュニティ施設:小・中学校」の項目で、計画供用によって発生する鷺沼小学校の学童最大増加数(ピーク時=平成16年想定)を「243人」、増加クラス数を「3クラス」と記述。しかし、このクラス増加数の算出はすべての学年の違いを考慮せずに単純な割り算をした「1年生も3年生も6年生も同じ教室で勉強をする環境」を前提とする非現実的なものであり、このずさんな算定をもとに「教育環境に関わる問題は生じない」と評価を導き出している。
【4】
条例環境影響評価準備書p.330「交通および地域交通:道路交通」の項目で、交通分担率の記述において「昭和63年」のパーソントリップ調査のデータを使って算出。近年、推移の激しい「交通量」の評価をするのに、あえて十数年も昔のデータを用いている。最新のデータを使って、現実に即した評価を行おうとする姿勢がまるで見られない。
【5】
住民からの意見書で「公開空地を市道鷺沼12号線沿いに配置し、建物を12号線からセットバックさせた形にしてほしい」と多数提案されていたにも関わらず、見解書においてはこの住民意見を完全に無視し、「まるでそのような意見は無かった」かのように何の見解も示さなかった。これは環境影響評価における「意見書」とそれに応える「見解書」の存在意義を軽視した不誠実な対応である。
(公聴会でこの点を指摘された事業者は「見解書p.23  公開空地について にて、その意見への回答を示したつもりである」と公述したが、その見解書p.23にはそうした意図を示す明確な記述はなく、この事業者公述が詭弁であることは明白。)
【6】
説明会においても、意見書においても、そして公聴会の場においても、住民は
公開空地を設けるため、という理由で高さを11階までひきあげる計画は不要」「公開空地は要らないから、その分、低層の建築計画を」「この建築計画がこの地区の“景観”という地域生活環境に与える影響は甚だしく大きい」と、一貫して主張し続け、話し合いによる歩み寄りを望んできたにも関わらず、事業者は一方的に「公開空地は地域住民のためになる」「低層の建築計画は考えない」「この“景観”が環境に与える影響は小さい(但しその客観的理由については何も説明無し)」と言い張ることに終始する“説明にならない説明”を繰り返すのみ。(事業者が何回か開催した説明会もすべてこうした内容だけの「一方的説明会」であり、決して「話し合い会」にはなりませんでした。それ故、住民はこの「実り無き説明会」を1回ボイコットした経緯があります)

 上記のすべて詳細は公聴会の議事録に記録されておりますが、【1】【2】【3】【4】は環境影響評価というシステムのあり方そのものを無形化する行為です。こうした「データの歪曲使用」が一部発覚したということは、この事業者が準備書の他の項目においても「恣意的に歪曲化した評価」を行っている可能性を示唆するものです。さらに、【5】【6】はこの事業者が市としては、事業者に対し事業計画について周辺住民の方々と十分な話し合いを行い、理解と協力が得られるよう指導していくと阿部市長が文書にて明言公開質問状への回答文書:平成14年3月12日付[受付番号738]した行政の主旨にまったく反した、不誠実な姿勢で環境影響評価を進行させていることの証です。私共周辺住民は“十分な話し合い”も“理解や納得ができるような説明”も受けておらず、市の“指導”は実行されておりません。

 事業者、すなわち東急不動産、三菱商事、新日鉄都市開発の3者が、今回の環境影響評価をこのように“正当ならざる”経過で進めてきたこと、それが公聴会にて改めて判明したことを指摘するとともに、この件に関する川崎市行政の見解と対応をご回答いただきたく質問させていただきます。

 私共住民は、このような経過で行われた環境影響評価が正当に審議を通過してしまうことを到底容認できません。ここまで不審点があるのに是正されぬままこの環境影響評価が“通って”しまうとしたら、その際は川崎市における環境アセスメントのシステムそのものが重大な欠陥を内包していると判断せざるを得ない。そこまでの重大事態だとさえ認識しております。

 ご多忙のところ恐縮ではございますが、この重要懸案に関して、連休明けの5月15日水曜までに書面にてご回答ください。よろしくお願いいたします。

        敬具

鷺沼地域の住環境を守る会

この質問状に対する回答(平成14年7月17日付)は下記の通りです。↓ 

質問状でひとつひとつ掲げた【問題点】に関して、「すべては審議会に委ねます」という内容。つまり「川崎市長としては、この問題に対して“見解を示さないこと”見解です」と言っていることに等しい内容です。環境評価を審議するのは審議会に委ねた権限かも知れないけど、最終的に判断を下して【条例審査書】を出すのは“川崎市長”の役目です。それを知らぬふりして、こんな回答を出してくるようでは、いまの川崎市長って、コドモのお使いと同じじゃない? と思わざるをえません。オトナなら、もう少しオトナらしい仕事をしてほしいものです。

 お手紙拝見いたしました。また、御返事が遅くなりまして申し訳ありません。

 環境影響評価準備書等の記載内容についてのご質問ですが、準備書の作成については従来から事業者の責任と負担の下で行うと定めているところから、調査時点及び調査方法は事業者の判断で行うものです。なお、準備書等のデータについては市民をはじめ第3者が確認できるよう、出典、調査年度及び解析方法等を明記しています。

 次に、乗車人員に係る調査内容の誤りについては、公聴会での御指摘を受け、事業者に再度確認を指示しましたが、この点については、結論を特定の方向へ誘導しかねない旨の御指摘を含めて審議会に報告し、専門的な見地からの意見をいただくことが適当と考えています。

 次に、審議会での審議については、住民の方々から寄せられた意見書、この意見書への事業者の見解書及び公聴会の会議録等、これら全てを環境影響評価審議会に資料として提出しています。そして審議会では、現地視察を行うとともに、これらの資料を基に専門的な見地から審議を行っています。

 平成14年7月17日

川崎市長 阿部孝夫

受付番号 124-2

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