環境影響審議会の「答申書」全文

2002年7月12日、川崎市の環境影響審議会から【答申書】が出されました。

この【答申書】とは、川崎市長の任命で「環境影響の評価」を託された
全19人からなる審議会が「評価の結果」をまとめ、川崎市長に対して
「審議会のわれわれはこう判断しました」と“答申”したものです。
 
川崎市長は、この“答申”の内容をうけて「市の判断」を考え、事業者に対して
「その判断」を書き記した【審査書】を作成して送りつけます。
 
事業者はその審査書に応えて「ここを改善します/こう計画します」
という内容を記した【評価書】を市に提出します。

(このへん、環境アセスの詳しい手順についてはこのチャート図をご覧ください)

ここまでのプロセスが終わらなければ、
「鷺沼4丁目プロジェクト」に建築許可は出されない。
事業者は“建築”をすすめることはできない。

というところが大きなポイントです。

【答申書】の内容をみると、
高さ規制の除外をしていない(=5階建て程度の「通常の低さの」)建築計画との比較をせよ
建物の高さ市道からのセットバック公開空地のあり方等改めて検討せよ】、
とにかく近隣住民とよく話し合え
といった内容が含まれ、
近年10数年分の川崎市環境アセスの例と比べてみても
【かなり問題を含む計画である】とも受け取れるような記述箇所が見受けられます。

阿部孝夫市長(実務は、環境局環境評価室の職員)が、この【答申書】を受けて、どのような【条例審査書】を書き上げるかは、まだ不明ですが、これでは、すんなり環境アセスメントを通過させるわけにはいかないでしょう(そう信じたいけど、、、、さて、阿部市長、どうするんですか?)。

↓↓↓↓ 以下に、その全文を掲示します。ご覧ください! ↓↓↓↓

※すべて原文のままで掲載。注目すべきポイントを、HP管理人の責任において、太字強調文字等の加工を施しています。

14川環環審第16号
平成14年7月12日


川崎市長 阿 部 孝 夫 様

                                   川崎市環境影響審議会
                                   会長 戸 田 孔 功

(仮称)鷺沼4丁目プロジェクトに係る条例環境影響評価等の審議結果について(答申)

平成14年5月9日付け14川環評第34号により諮問のあった表記の件について、別紙のとおり答申します。

まえがき

 (仮称)鷺沼4丁目プロジェクト(以下「指定開発行為」という。)は、東急不動産株式会社、三菱商事株式会社及び株式会社新日鉄都市開発(以下「指定開発行為者」という。)が、宮前区鷺沼4丁目11番1号ほかの東急鷺沼グラウンド跡地において、共同住宅を建設するものである。

 計画地は、東急田園市線「鷺沼駅」の北西約600mに位置し、なだらかな丘陵地の頂上付近にあり、開発区域面積約2.7ヘクタールの区域である。

 計画地の用途地域は、第1種中高層住宅専用地域及び第1種住居地域に指定されており、計画地の東側、南側は戸建住宅中心の市街地となっており、北側は比較的新しい集合住宅中心の市街地が形成されている。また、西側は急傾斜地であり、下方に近接して東名高速道路が通っている。

 本審議会では、本計画に係る条例環境影響評価準備書等及び周辺住民等からの意見(以下「準備書等」という。)について総合的に審査し、次の結果を得たものである。

1 指定開発行為の概要

(1)指定開発行為者

 東急不動産株式会社  取締役代表 植木正威 東京都渋谷区道玄坂1丁目21番2号

 三菱商事株式会社  代表取締役 外村直久 東京都千代田区丸の内2丁目6番3号

 株式会社新日鉄都市開発  代表取締役社長 兵藤義雄 東京都中央区日本橋1丁目13番1号

(2)指定開発行為の名称および種類

・名称 : (仮称)鷺沼4丁目プロジェクト
・種類等: 都市計画法に基づく開発行為(第3種行為) 住宅団地の新設(第2種行為)
 (条例施行規則第3条で規定する別表第1の1及び4に該当)
・適用される手続き: 第2種行為の手続き

(3)指定開発行為を実施する区域

・位置: 川崎市宮前区鷺沼4丁目11番1号他
・開発区域面積: 26,716,69平方メートル
・用途地域: 第1種中高層住宅専用地域・第1種住居地域

(4)計画の概要


     (以下、条例準備書と同様の計画内容概要の説明データが続く)
         →このwebページでは掲載省略します。

2 審査意見

(1)全般的事項

 計画地は、宮前区鷺沼4丁目の台地上の旧東急鷺沼グラウンド跡地であり、東急田園市線「鷺沼駅」の北西約600mに位置している。

 周辺の土地利用の状況は、東側、南側は戸建住宅中心の住宅街であり、北側は中層の集合住宅中心の市街地となっている。

 本計画は、このような特性を持つ地域においてA敷地では中層住宅を建設、B敷地で「川崎都市計画高度地区制限の適用除外」を受けた11階建て高層共同住宅を建設し、併せて公園、公開空地、駐車場を総合的に整備する計画としているが、周辺への環境影響を考慮し、建物の配置、デザイン、高さ、色調等について十分配慮するとともに、公開空地等への高木、中木、低木のバランスの良い植栽さど、準備書等に記載した環境保全のための措置を確実に実施する必要がある

 さらに、次の個別事項で述べる環境低減策、安全対策については十分精査し可能な限り環境影響が少なくなるよう検討する必要がある。

 なお、本事業における「川崎都市計画高度地区制限の適用除外」を適用しない場合での計画案総合的見地から比較を行いその有効性について、評価書の中に記載する必要がある。

(2)個別事項
 
ア.大気質

(ア)建設時

 建設時における大気質の主な発生源は、建設機械の稼働と工事用車両の走行によるもので、建設機械の稼働は比較的短い期間や限られた時間に集中して行われるので、環境影響も短時間(1時間)の基準で評価される。当該工事についても工事の開始から各種の工事工程を検討し、大気排出量が最大になる工事開始後8〜10か月の期間を対象に予測評価が行われているが、本計画では、この2種類の発生源について各々独立に影響濃度を評価している。

 建設機械の稼働についての二酸化窒素の予測結果は最大0.16ppm(バックグラウンド濃度を含む)で、中央公害対策審議会答申による短期暴露指針値(0.1〜0.2ppm)の範囲内であるとしている。この予測結果が導き出された経過を追うと、NOxからNO2への変換に自動車排出ガス測定局の統計モデルを使うなど適切でないと思われる部分もあり安全な予測値とは言えない。また、建設機械だけの稼働で、指針値の大部分を独占したとき、工事車両の排ガスとの重合汚染は考えなくても良いのか、という問題もある。一般的に、大気の基準や指針値が範囲で示されている場合、環境影響評価の立場では下限値を目標に対策を考えるのが普通であり、一事業だけで上限値を独占できるわけではない。

 このような理由から、建設機械の稼働による大気への影響については、発生源モデルや予測方式を再検討し、予測精度を高めるとともに、工事工程の見直しを含め大気汚染の低減に努める必要がある

 工事用車両の走行に伴う大気の影響については、一般に用いられている自動車排ガスの予測モデルを用いているので、予測方法には問題が少ないと思われるが、上述した建設機械による重合汚染について十分な配慮が必要である。

(イ)供用時

 本計画からの発生集中交通に伴う予測濃度の最大負荷率は、二酸化窒素で約0.36%、浮遊粒子状物質で約0.15%であることから、環境への影響は小さいとしている。この環境に対する濃度の負荷率という評価方法は、地域の環境濃度が環境基準を上回っている場合などに、やむを得ずに用いられることもあるが、地域の現況濃度が高いほど負荷率は小さいという、環境対策上矛盾した話になる。本地域のように環境基準ぎりぎりの場所では本事業の供用によって、環境基準が未達成になるという考え方も成り立つわけであるからアイドリングストップの完全実施、無用な空ふかしや急発進は行わないなどの環境対策について、入居者に予め協力を求めることが必要である。

イ.地形・地質(土砂流出・斜面安定)

(ア)土砂流出

 本計画での造成工事中に発生する土砂流出量は、88.96立法メートルであり、造成工事中に流域面積に応じた規模の仮設沈砂池を設置することから、計画地周辺に与える影響は少ない。また、仮設沈砂池を定期的に管理するほか、梅雨時期の土工事を最小限とするとしているが、仮設沈砂池の維持管理の徹底など、万全を期す必要がある

(イ)斜面安定

 本計画の擁壁工事にあたっては、川崎市の「宅地造成工事に関する工事の技術指針」(以下「技術指針」という。)に基づき、許容安全率を長期(常時)1.5、短期(地震時)1.2と設定しており、各断面においてこの基準を全て上回っているとしている。

 しかしながら、造成計画において、西側には最大盛土約14mとなる箇所もあることから、技術指針を遵守するとともに、擁壁等の実施設計にあたっては、市担当部署と十分協議する必要がある

ウ.生物(植物相、特筆すべき個体)

 計画地には、特筆すべき個体、植物群落は存在しないが、本事業の供用後には新たな植栽地が創出去れ、より豊かな植生へと変化する。また、計画地内の生育状況が良好な樹木については、一部移植を図る。さらに、本計画における植栽予定樹種については、計画地及びその周辺に生育する樹種を考慮し選定することから、充実した緑地が形成されるとしている。

 しかしながら、より充実した緑化に向けて潜在自然植生に配慮した樹種の選定を行うとともに、生育良好な既存樹木の移植に極力努めるとともに、移植の時期、方法、場所等に十分配慮する必要がある

エ.緑(緑の質及び量等)

 緑化計画については、計画地の環境条件に適応した樹種を選定し「川崎緑化指針」に基づき植栽する。また、植栽土壌については、不足する土壌は計画地外より良質な客土を搬入する等の対策を講じる。

 緑被については、計画建物の一部を屋上緑化し供用時における緑被率を約29.8%とすることから、地区別環境保全水準に基づく緑被率(29.8%)は満足する。また、供用後は、維持管理計画を策定し、適切な剪定、刈り込み、施肥等を実施することにより、樹木の健全な成長を図ることなどから、質的にも量的にも良好な環境が図られるとしている。

 しかしながら、周辺は良好な緑環境が保持されている住宅地であることから緑化地の拡充に努めるとともに、樹木等の適正な管理・育成を図る必要がある

 さらに、屋上緑化計画の作成にあたっては、緑化地の拡充に努めるとともに、屋上緑化の位置、維持管理等について市担当部署と協議する必要がある

オ.騒音

(ア)建設時

 建設機械の稼働に伴う騒音レベルは、敷地境界線上で最も高く予測されるのは造成・解体工事時の82.5dBであり、地区別環境保全水準(85dB以下)を下回るが、低騒音型建設機械の採用等環境保全のための措置を講じ、騒音の一層の低減化に努めるとしている。

 しかしながら、工事にあたっては、防音パネル等の設置、低騒音型建設機械の採用、低騒音工法の採用、作業の平準化等騒音のさらなる低減化に向け対策を講じるとともに、工事工程、作業機関等について、事前に周辺住民に周知を図る必要がある

 工事用車両の走行に伴う道路交通騒音については全予測地点ともに現時点において環境基準(昼間65dB以下)を上回っているが、増加レベル(負荷量)は約0.1dB〜1.5dBであり、工事用車両の運行管理の徹底、規定積載量の厳守、低速走行の遵守等の対策を講じることから、生活環境に著しい影響を及ぼすことはないとしている。

 しかしながら、既に環境基準を超える状態の中で工事を実施することから、準備書で記載された内容を遵守する一方、必要に応じて運行管理計画等を見直すなど適切な措置を講ずるとともに運行管理計画等について周辺住民に周知を図る必要がある

(イ)供用時

 供用時の道路交通騒音については、全予測地点で現況値が環境基準(昼間65dB以下)を上回っているが、関係車両の走行に伴う道路交通騒音の増加レベルは、約0.1dB〜1.5dBであり、生活環境に著しい影響を及ぼすことはないとしている。

 しかしながら、より一層環境保全を図るため入居者に対し、無用な空ふかし、急加速等の高負荷運転をしないよう促していく必要がある。

 なお、統計各地は東名高速道路に近接しており、入居者から騒音への苦情が懸念されること等から、建設にあたっては防音措置等を講ずるとともに、入居予定者に対し、十分な事前説明を行う必要がある。

カ.振動

(ア)建設時

 建設機械の稼働に伴う振動レベルは、敷地境界線上で最も高く予測されるのは、造成・解体工事時65.4dBであり、地区別環境保全水準(75dB以下)を下回っている。一方、工事用車両の走行に伴う振動レベルは、最大で48.8dBであり、振動を感じ始める「閾値」(55dB)を下回っていることから、いずれも生活環境に著しい影響を及ぼすことはないとしている。

 しかしながら、工事にあたっては、建物解体時に予測を越える振動も考えられることから、低振動型の建設機械の採用、作業の平準化工事車両の運行管理の徹底など、可能な限り振動の低減を図るほか、振動対策等について、事前に周辺住民等への十分な周知を図る必要がある

 また、工事期間中は適宜、振動測定を行う必要がある

(イ)供用時

 供用時における車両走行に伴う振動レベルは、予測値の最大が、54.2dBであり、振動を感じ始める「閾値」(55dB)を下回り、生活環境に著しい影響を及ぼすことはないとしている。

 しかしながら、入居者に対し、公共交通機関の利用、無用な空ふかし等の高負荷運転の抑制等について配慮を促していく必要がある

 なお、上述の最大予測値54.2dBは、工事車両の走行に伴う振動レベルの最大値48.8dBを越えることから、再計算した結果、予測値の最大は48.2dBになったが、この再計算結果を環境影響評価書に記述する必要がある

キ.廃棄物(一般廃棄物・産業廃棄物・建設発生土)

(ア)一般廃棄物

 供用時に発生する一般廃棄物の量は1.37t/日と予測している。本計画において廃棄物保管施設は、「廃棄物保管施設設置基準要綱」に基づき、適切な容量及び位置を確保して設置するとともに、入居者に対しては、ごみの減量化やリサイクルの推進に積極的に取り組んでいくよう促すとしている。

 なお、上述の1.37t/日に算入されている生ごみについては、各戸に設置されるディスポーザーにより処理するとしているが、その設置計画や悪臭対策などを含む維持管理計画を明らかにする必要があり、今後、市と十分な協議を行っていく必要がある

(イ)産業廃棄物

 本計画の工事に伴って発生する産業廃棄物は、廃棄物の種類ごとに分別保管し、再利用が可能なものについては、現場内での再利用により減量化を図り、搬出する産業廃棄物についても再資源化を図るとともに、産業廃棄物処理業の許可をうけた処理業者に委託し、マニフェストを使用して適正に処理することから、周辺の生活環境に支障を及ぼすことはないとしている。

 しかしながら、建物の解体、杭打ち工事等からの発生予測量が大きいことから、その再利用・再生利用計画及び処分先について、事前に市に報告する必要がある

(ウ)建設発生土

 本計画の建設発生土については、植栽土壌や埋戻土として再利用するほか、適正に処理するとしているが、具体的な再利用計画及び処分先について、事前に市に報告する必要がある

 また、建設発生土の搬出にあたっては、荷崩れや飛散等が生じないようにシートカバー使用の徹底、道路の汚損防止に向け適宜洗車を行う必要がある

ク.景観

 本計画地は南側の戸建住宅中心の市街地景観と、北側の比較的新しい集合住宅中心の市街地景観により、市街地密度の比較的高い都市景観が構成されている。この都市的景観に、新たな都市的な景観要素が加わることになるが、周辺地域と一体となった都市的な景観を構成するとしている。

 さらに、公開空地により街並みと一体となったオープンスペースを創出するとともに、高木等を植栽し、建物の高さによる圧迫感の低減に努め、また、建物のデザイン、色調は近接する集合住宅や戸建住宅との調和に配慮することから、計画地周辺の景観に与える影響は少ないとしている。

 しかしながら、本計画は、なだらかな丘陵地の頂上付近の中低層の市街地の中に11階建ての高層建築物を建設するもので、新たな景観が創出されることから、周辺景観に配慮した建物のデザイン、色調等について配慮するとともに実施にあたっては、市関係部署と協議する必要がある。

 また、本計画地周辺住民への圧迫感の低減などのため建物の高さセットバックの検討道路に面する公開空地の拡大、バランスの良い中木や高木の植栽など、その対策について検討する必要がある

ケ.日照阻害

 本計画による日影の影響は、冬至日において8時から16時の間において日影を受ける住宅等の棟数は42棟で、そのほとんどは日影時間が1時間未満であるとしている。

 しかしながら、法令上は満足しているものの、地盤面レベルでの日影では4時間〜6時間未満の日影の影響を受ける建物が2棟あることや、他の建物との複合日影も考えられることから、関係住民に対しては、その影響の程度について十分説明する必要がある

コ.電波障害

 計画地周辺のテレビ受信環境は、現況において地形等の条件から良好とは言えず、本計画の出現により、計画地周辺のテレビ受信環境にさらに影響を及ぼす可能性があるとしている。そして、供用後に障害が発生した場合、その程度に応じて、受信アンテナの改善、共同受信施設の設置等、受信障害の改善措置を講ずるとともに、地元住民等と十分協議するとしているが、工事中を含め、障害が発生したときの問い合わせ窓口を関係住民に明らかにする必要がある。

サ.風害

 本計画に伴う風環境は、敷地内外の一部において風速の増加が見られるが、ほとんどの予測地点で領域A(住宅地としての風環境)に相当する風環境であり、計画建物の建設により重大な影響を及ぼすことはない。

 また、計画地周辺において、風速の増加により風環境に悪化が見られる地点については、事業終了後にモニタリング調査を実施することから、事業実施による計画地周辺の風環境への影響を少ないとしている。

 ビル風害の予測については、川崎市における環境影響評価では従来風洞実験によって行われてきたが、今回初めて数値計算による風害の予測が採用された。この手法による実績や経験は浅く、今後この手法による予測の安全性を注意深く見守る必要がある。本計画では、現地での事後調査を約束しているが、ビル風の発生は頻度が少なく、範囲も限られるので、細心の注意をもって風環境の影響が相対的に悪化が予測されている地点を中心に四季を通しての風速・風向等の実態調査を行い、その結果に基づいて必要な対策を実施する必要がある。

 住民からのビル風についての苦情があった場合には、誠意を持って対応すること

 また、風環境の予測地点No.45は、95%値で領域D、すなわち、「好ましくない風環境」となっているが、この場所は、サレジオ学院の児童送迎などで利用頻度が高い場所となっているので、さらに対策を強化する必要がある。

 なお、実態調査実施にあたっては、地域住民及び市関係部署と協議する必要がある

シ.コミュニティ施設

(ア)小・中学校

 本計画の実施に伴う児童・生徒の増加は、鷺沼小学校が供用開始後1年目(平成16年)にピークとなり、教室数の不足が見込まれるが、実態を見ながら川崎市により様々な対応が図られることを前提とし、本計画の実施に伴う影響は回避されるものとしている。

 また、有馬中学校については、供用開始後4〜7年目(平成19年〜22年度)にピークとなるが、教室数に余裕があることから、本計画の実施に伴って発生する生徒数が中学校施設に及ぼす影響は少ないとしている。

 しかしながら、市の児童・生徒数の将来予測によると、鷺沼小学校、有馬中学校ともに増加の傾向にあることから、市が教室数不足を回避するための措置が事前に講じられるよう市へ入居予定状況などの情報提供を早期に行うほか、入居予定者へ事前に説明しておく必要がある。

(イ)集会施設

 集会施設は、計画建物内に定期刹那規模の施設を確保することから、本計画実施が周辺の集会施設に及ぼす影響は少ないとしているが、その評価は概ね妥当と考える

(ウ)公園等

 本事業により提供公園と提供緑地及びこれらを結ぶ歩道状のオープンスペースを整備することから、より良い環境が創出されるとしている。その評価は概ね妥当であると考えるが、公園計画策定にあたっては近隣住民の意見を聞き利用しやすい公園とするよう検討する必要がある

 さらに、敷地中央の公開空地については、誰もが利用できるオープンスペースであることから、周辺住民が利用しやすい開放性のより高いものとする必要がある

ス.地域交通(混雑・安全)

(ア)工事中の交通量

 工事中における交通量は、都市計画道路 尻手黒川線の土橋交差点の犬蔵側断面で、工事用車両交通量44台/時による増加率は1.5%であること、また工事用車両を負荷させた工事中の交通量による各交差点の飽和度は0.55〜0.76で、交差点飽和度の指標値0.9を下回ることから、工事用車両の一般車両の交通流に影響を及ぼすことは少ない。

 工事中における交通安全については、工事車両ルートの一部にガードレールが設置されていない箇所があるなど、歩行者の通行に影響を及ぼす可能性があるが、登下校時間帯への配慮、低速走行等の安全教育の徹底、交通整理員の配置、工事用車両の運行管理の徹底などの対策を措置を講じることから、歩行者に対する交通安全は確保されるとしている。

 しかしながら、工事車両予定ルートは現在通学路に指定されており、さらに、大型車両通行禁止となっていることから、交通安全対策の徹底をはかるとともに、周辺住民に工事用車両の走行等について周知を図るほか、苦情が発生した場合には速やかに対応できるよう、窓口を明確にしておく必要がある。

(イ)供用時の交通量 

 供用時における交通量は、最大となる土橋交差点の犬蔵側断面で、計画地からの発生交通量26台/時による増加率は0.9%である。また、各交差点の飽和度は0.54〜0.76で交差点飽和度の指標値を下回っていることから、周辺道路の一般車両の交通流に影響を及ぼすことは少ないとしている。

 しかしながら、良好な地域交通環境の保全のため、来訪者用駐車場の確保や公共交通機関の利用促進、通勤・通学時の自動車送迎の自粛などについて、入居者への周知が望まれる。

(3)環境配慮項目に関する事項

 環境配慮項目のうち、地球温暖化、酸性雨、オゾン層、資源、エネルギー及び地震時の災害の各項目について、環境保全のための措置を講ずるとしているが、その積極的な取り組みを図るとともに、具体的な実施内容について、市に報告する必要がある。

(4)事後調査に関する事項

 準備書に記載の事後調査計画を修正するとともに、本書で指摘した事項を踏まえて事後調査の結果を市に報告すること。

3.市への要望

 本計画のような大規模なマンション建設に伴い増加が見込まれる児童・生徒数については、川崎市では人口推計、周辺の開発状況、私立学校への進学率等を考慮し児童・生徒数を6年先まで推計しており、児童・生徒の増加に対しては教室の増築・既存教室の改築等で受け入れ可能かどうかを判断するとしている。

 川崎市は、「川崎市義務教育施設整備基準」に加え、教育条件整備の責務を担う機関として、今後生じ得る同様の「急増」問題に対して一貫した姿勢で対処すべく児童・生徒のために、学ぶための「良好な環境」を確保するため、事業者に対する行政指導の指針及び学区内住民に対する説明と対話のための指針を作成することが望まれる。

審議経過

平成14年5月 9日  審議会(諮問)
平成14年5月10日  審議会(現地視察)
平成14年5月27日  審議会(事業者説明)
平成14年6月17日  審議会(第2回事業者説明)
平成14年7月 9日  審議会(答申案審議)

以上


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