黒々とした眉をつり上げ肩をいからせる姿は、ご当地・紀伊生まれの怪僧・武蔵坊弁慶さながらだ。午前、午後の練習で延べ3200人を数えた観客もビックリ。佐々木監督が仁王立ちで声を荒らげた。
「そら見ろ、という感じですね。有頂天になってたら、あんたらナンボのもんよ、の世界」
カミナリの原因は、なでしこのふがいない姿だ。なでしこ入りを目指す「チャレンジ」メンバー主体の2チームとスコアレスドロー。U−20代表候補にも苦戦した。
DF浜田遙(FC高槻)に2本のポスト直撃シュートを打たれれば、DF中村ゆしか(関東学園大)にドリブル突破を許す。MF猶本光(浦和)には前線に鮮やかなスルーパスを通されるなど、猛攻を浴びた。
スコアは1−0ながら、佐々木監督は「2−1で負けてたね」とバッサリ。「ラスト10分は4−6で支配されていた。きょうはU−20の選手にしか、光るものがありませんでしたね」と切り捨てた。
今合宿は右ふくらはぎの肉離れで、MF沢が不在。オフ明けのコンディションや、不慣れなポジションをこなす選手が多いこともある。それでも圧倒的強さを見せるのが世界女王のプライドだ。
「失点しなかったのはよかったけれど、得点をもっと意識していかないと」とMF宮間。精彩を欠いたFW大野は「足りないのは決める力、勝つ力。チャンスを何度作っても、決められないと言われればしようがない」と力を込めた。
パス回しの練習中にも怒鳴るなど、“鬼のノリさん”を貫いた指揮官。「実力差なんてない。今のなでしこは危機感を感じないと」。代表選考の競争、W杯女王に立ち向かう列強。厳しい戦いを前に、キリリと手綱を引き締めた。(佐藤ハルカ)
(紙面から)