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新大阪・新神戸駅なぜできた? 在来線駅あったのに…

2011/10/15 7:00
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 出張から戻る新幹線の車内で、新大阪駅への到着を告げるアナウンスを聞き、ふと疑問に思った。同じ大都市でも、東京や名古屋では新幹線の駅は在来線駅に併設されているのに、なぜ大阪と神戸には新しい駅がつくられたのか。国内交通の大動脈の歴史を探った。

広い用地が必要だった新大阪駅(大阪市淀川区)

広い用地が必要だった新大阪駅(大阪市淀川区)

 東海道新幹線の開通に伴って新大阪駅が開業したのは1964年。在来線の大阪駅から約3.5キロ北にある。JR東海とJR西日本に質問したが、両社とも「当時を知る関係者はもう社内に残っていません」との返事だった。

◇            ◇

 鉄道史に詳しい近畿大学の西城浩志教授に疑問をぶつけてみた。「立地選定には様々な条件があったようです」と、当時の状況を説明してくれた。

 旧国鉄が65年に発行した「東海道新幹線工事誌」などによると、大阪は折り返し駅となるため、広い用地が必要だった。候補地は(1)大阪駅に併設(2)梅田貨物駅(大阪市北区)付近(3)戦前の「弾丸列車」計画で国鉄が買収した、東淀川駅(大阪市淀川区)近くの用地(4)宮原操車場(同区など)付近――の4カ所あったという。

 だが(1)案と(2)案、つまり大阪駅周辺は繁華街の中心で、私鉄の線路や駅もあり「空き地がありませんでした」(西城教授)。交通渋滞の悪化も懸念されたという。(3)案も周辺に民家が密集し、拡張が難しかった。都心部から約4.5キロあり、離れ過ぎていたのも難点だった。

 採用されたのは(4)案。「操車場の一部が用地に利用でき、都心部からも遠くない」とされ、ここに新大阪駅が設置されたという。

 大阪には、さらに西へ山陽新幹線を延伸する事情もあった。在来線の大阪駅に新幹線を通すと、コースが大きく曲がり、淀川を2度渡る必要がある。「所要時間の短縮や建設費も、場所選びを大きく左右したはず」と西城教授はみる。

トンネルのはざまに設けられた新神戸駅(神戸市中央区)

トンネルのはざまに設けられた新神戸駅(神戸市中央区)

 では東京や名古屋はどうだったのか。大阪同様、駅周辺は立て込んでいたはずだ。今度は産業考古学が専門の吉備国際大学の小西伸彦准教授に聞いてみた。

 「どちらも用地が手当て済みだったんですよ」というのが答えだった。東京駅では、在来線を拡充する用地をあらかじめ確保してあり、それを転用すればよかった。名古屋の場合、「弾丸列車」計画で、在来線の駅の隣接地を戦前に買収してあったという。

 新神戸駅の立地も「用地の確保」「コース取り」が影響したようだ。同駅の開業は72年。神戸市中心部にある在来線の三ノ宮駅から約1.5キロ北にあり、今もJR西日本の在来線と接続していない。

 三ノ宮駅周辺は六甲山と瀬戸内海に挟まれた、狭い平野部。JR・私鉄各線や高速道路が集中している。山陽新幹線を新設する余地はなく、騒音対策もあり、六甲山を貫くトンネルを通すしかなかった。新神戸駅は、六甲トンネルと神戸トンネルのはざま(約500メートル)に設けられた。

 「夢の超特急」が開通して40年余り。JR東海は現在、東京―名古屋間で2027年の開業を目指し、リニア中央新幹線の駅やルートの検討を進めている。次はどんな新駅が登場するだろうか。

(大阪社会部 増野光俊)

[日本経済新聞大阪夕刊いまドキ関西2011年10月12日付]


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