富山とアルペンルートの旅
2005年5月23日(月)〜5月26日(木)

1.はくたか号で富山県

 また会社から5日間の休暇がもらえる時期となった。そんな訳で、5月23日の週にその休暇を取得して、久しぶりに旅立つこととした。さて、どこに行こうかと地図を眺めてみると、富山のあたりに未知の場所(空白地帯)があることに気付き、そこに行くことにした。ゴールデンウィークが明けて間もない平日なので、すいているだろうとの期待もある。

 世間では通常の月曜日の5月23日(月)、ラッシュのピークを避けて、いつもよりも早めに家を出た。小田急線の急行で新宿、中央線快速で東京。今日は、とりあえず指定を取ってあるので慌てることはなく、改札の外に出て(ここまでは定期券で来られる)八重洲地下街の適当なお店で朝食。時間になったので、駅に戻り上越新幹線のホームへ行く。7:48発の「Maxとき307号」である。東北/上越新幹線は発車3分前にならないと車内に入れない。車内清掃に時間がかかり過ぎだといつも思うのだが、とにかく乗り込むと間もなく発車。上越新幹線は久しぶりだが、珍しくはない。ボンヤリと車窓を眺めているが、高崎を過ぎるとほとんどトンネルだらけだ。といううちに、越後湯沢に到着。すぐに接続する「はくたか4号」に乗り換える。

 私の道の旅は、高校生の時に乗った「はくたか」から始まったようなものだ。しかし、当時は新幹線はなく上野から乗った。今はだいぶ様子が変わっている。新しい車両(681系)の「はくたか」は初めてだ。まだJR東日本のエリアなのに車両はJR西日本のもので、越後湯沢から出るのは「上り列車」なのだと改めて気付いた。指定は一番後ろの車両だったが、かなりすいていた。六日町に停車。ここからほくほく線に入る。これに乗るのも初めてである。線名の「ほくほく線」はあまり気に入らないが、仮称の「北越北線」でもいまいちセンスがよくないし。切符の経由にも、「新幹線、上越、ほくほく、信越、・・・」などと書いてあるのが、ちょっと間が抜けて見える。さて、そのほくほく線に入るとスピードを一気に上げる。在来線最高速度の特急らしいが、これは十日町にも停まるので、ノンストップの列車ほどは出していないかな? でも、JR線内を走る時と明らかにスピードが違うのがわかる。特急の停まらない駅はホームも短いため、気付かないうちに通過していることが多い。犀潟が近づきやや減速して信越本線に合流。直江津に停車すると、ここで乗務員がJR西日本の人に換わり、車掌は女性になった。直江津には、元「あさま」の189系が普通列車として停まっていた。直江津からは北陸本線を淡々と進み、富山県に入って入善、黒部、魚津、富山、と割と細かく停車する。高岡で下車。


2.万葉線と渡し舟

 まだ、正午には早いが昼飯を食べることにして、駅の近くにあった北前蕎麦屋「高田屋」で食事。さて、高岡に来たのは、久しぶりに万葉線に乗りたかったからだ。前に乗ったのは加越能道という、実態に反する壮大な名前(?)の道だったが、第三セクター「万葉線」に移管されて、どう変わったかというところだ。しかし、名前以外はあまり変化はなかった。いや、車両の塗色は変わっている。高岡駅前発は15分おきで、終点越ノ潟まで行くのは30分おきだ。路面電車の割には本数が少ない。単線である。12:30発の電車に乗る。新型LRTも走っているが、乗ったのは旧型車だった。平日の午後で乗客はわずか。米島口を過ぎて一旦専用軌道に入り、再び路面に戻る。新湊市内に入り六渡寺を過ぎると軌道から道に変わる。もともと富山地だった区間だ。終点の越ノ潟で下車。

万葉線(高岡駅前) 万葉線(越ノ潟)


 以前来た時は、ここから歩いて戻る形で新湊市の中心地を散策したが、今日は渡し舟に乗ってみようと思う。もともと線路はつながっていたが、富山新港のために分断されたところが渡し舟になっているのだ。おりたわずかな客はみんな渡し舟の乗り場に向かっていた。正確には富山県営渡船といい、なんと運賃は無料である。案内は日本語の他にロシア語で書いてある。また、日本語、ロシア語、英語の3ヶ国語で書いてあるところもある。なぜ、ロシア語なのだろう? 渡し舟は7分の接続で13:20発。ロシア人(かな?)も2人乗っていた。乗客は10人弱か。ほとんど自転車ごと乗っており、遠方から来た「見知らぬ客」は私くらいかもしれない。5分ほどで対岸の堀岡に到着。みんなどこかに自転車に乗って去ってしまい、さびしく取り残された。ここから富山市内に通じていた富山地射水線はもうない。分断された東側は廃止されたのだ。その代わり、富山に出るバスでもないかなと思って期待していたが、新湊市内を巡回するコミュニティーバスしかないようだった。それに乗ってもいいがどこに行くかわからない、と迷っていると、バスが来てすぐに行ってしまった。しょうがないので、適当にブラブラ歩いてみることにした。明らかに廃線跡とわかるサイクリングロードがすぐに見つかり、それに沿ってしばらく歩いてみたが、人影もほとんどない平日の午後で、暇な奴はいない時間帯なのである。「海竜マリンパーク」という案内板が見えたので、何かあるかなと思って海の方に行ってみたが、人影のないスポーツセンターがある他は何もない。バス停があるので覗いてみると、堀岡発着場を通るバスがここも通るのである。地図を見て位置関係を調べているとバスが来て停まった。乗る意思のないことを告げると行ってしまったが、乗ってもよかったかな。なんだかよくわからないので、海と反対側の町中に出てみるとまたバス停があり、そこにちょうどバスが来た。バスは右回りと左回りそれぞれ1時間に1本くらいしかないようだし、たぶん同じバスに何回も出会っている。バスがあちこち回っている間に先回りしてバス停にいるような感じで、なんだか怪しい人物と思われたかも?? 結局、渡し舟の乗り場に戻り、素直に船と電車で高岡に戻ることにした。帰りの船は14:30発で、また同じロシア人2人がいた。私と違い、ちゃんと用事があって来ていたんだろうな。

 船に乗ると空はどんよりと曇ってきた。富山は雨が多いと聞くが、そんな雰囲気である。そして、越ノ潟に着く頃、小雨がパラパラと降ってきた。接続する万葉線は14:45発。同じ道を戻り高岡駅前に着くと雨が本格的に降ってきた。やはり、富山県では雨は避けられないなあ。今日は富山に泊まる予定だが、高岡から富山まで特急に乗る気はせず、普通列車を待つ。雨が降っているので面倒になり、地下商店街をのぞいたりして時間をつぶしていた。駅に戻り普通列車に乗る。16:18発。高校生の帰宅ラッシュの時間でもある。発車を待っていると、札幌行きの「トワイライト」が来た。こんなところで「札幌行き」なんていうのを見るとは。いずれ乗ってみたいが、関東人には縁がない? 普通電車は413系の6両編成。17分ほどで富山着。雨はやんでいた。

富山県営渡船 堀岡発着場



3.富山の夜(その1)

 とりあえず、地の駅に行って明日の時刻を調べておく。宇奈月温泉や立山に行く特急や急行がバンバン走っているのかと思っていたら、1日に数本しかなくて、ほとんど各駅停車だということを初めて知った。時刻を確認して、宿へ向かう。宿は「楽天トラベル(旧旅の窓口)」で予約済み。パークイン富山はすぐにわかった。宿に着くと、応対も良かった。以前は、インターネットで予約済みというと不思議な顔をするところもあったが、最近は定着しているのか安心だ。最上階の一番端の部屋だった。荷物を置いて外に出る。ブラブラ歩いて、どこか適当なところで食事しようと思う。駅前まで戻ると途中で「武富士」のティッシュが3つも増えた。JRの駅で「ありがとう富山港線」のオレンジカードを売っていたので、ついつい購入。2006年にライトレール化されてJRとしては廃止される。駅の窓口の人は「このコウセンのカードですね」と言ったが、一瞬わからなかった。地元では「港線(こうせん)」と呼んでいるのだな。この後、路面電車(これも富山地の路線)に沿ってとりあえず歩く。路面電車は以前全線乗ったので、今日は歩いて町の散策だ。西町のあたりで、ふと「ネパール料理」の文字が目に入り、こういうのは好きなのでフラフラと入ってしまった。店の名を「ちゃとり かとり」という。経営者の名前らしい。ネパール料理は要するにカレーで、インド料理と限りなく近い。「ヒマラヤセット」を注文。まだ外は明るいからではないだろうが、入ってから出るまで、ずっと客は1人だった...。出る時に10個スタンプを貯めたらサービスというカードをもらったが、既に7個まで押してあるので、実質は4個貯めればよい。でも、一生のうちにあと3回来ることがあるかどうかわからない。帰りは西町から路面電車に乗って富山駅前まで戻り、宿に帰った。


4.富山地で宇奈月へ

 5月24日(火)は朝から雨が降っていた。昨日よりも若干気温も低い。宿で朝食を済まして出発。電富山駅に向かう。宇奈月温泉行きの時刻は8:12と9:13を確認しておいたが、早い方に乗れそうだ。富山地は、路面電車は全区間乗ったことがあるけど、道線の方はわずかに電富山−南富山(不二越線)に載っただけで、ほとんど初めてといってもいいのである。富山駅はJR、地とも朝の通勤、通学ラッシュである。高校生がたまっている電富山駅の待合室で待つ。この時間帯の発車時刻を見ると、8:02、8:07、8:08、8:12と大都市並みだ。目的の電車は8:12発。元京阪車の2両編成で、乗客はわずかだった。平日朝の下り電車だからすいてはいるのだろうけど。隣に元西武レッドアロー車が到着(なんと普通電車に使われている)して、入れ違いに発車。次の稲荷町まで複線だが、あとは単線。ここで「上り列車が遅れているため2分ほど停まります」とのこと。その遅れを取り戻すためか、次の駅までかなりスピードを出していたような気がするが、ほとんど直線なので大丈夫か...。高校生は数駅でおりてしまい、客は早くもガラガラになり、ノンビリと富山平野を進む。常願寺川を渡り、寺田で立山線と分岐。上市では進行方向が変わる。別に勾配がある訳ではなく、全くの平坦な土地でのスイッチバックは、歴史的経緯からいろいろな線を統合したからだろう。椅子の向きを変える。滑川市内に入るとJR北陸本線と並行する。JRとの乗換駅は滑川だが、1つ手前の中滑川が市の中心地に近いようだ。JRに比べて駅も多く、しばらくはひたすら並行する。魚津市内では高架になっている区間もある。新魚津はJR魚津に乗換えが出来るが、ここから幾分客が乗ってきた。北陸本線から宇奈月方面に行くのは、ここで乗り換えた方が早いのかもしれない。黒部市内ではJRとの連絡駅はなく、JRの線路を越えていよいよ山の中に入っていく。最後の一駅間だけ距離が長い。宇奈月温泉に定刻に到着。まだ、雨は降っているが、小雨なので傘なしでもなんとかなりそうだ。やや寒いが。

電鉄富山に停車中の富山地鉄



5.黒部峡谷

 地のホームのすぐ隣に黒部峡谷道の小さな車両が並んでいるが、乗り場は一旦改札を出て、少し歩く。宇奈月はいうまでもなく有名な温泉地だが、温泉は無視して道を目指すのであった。黒部峡谷道の宇奈月駅は予想していたよりもきれいで大きな駅だった。というよりも観光駅という雰囲気か。この列車に乗るには整理券がいるが、すぐに10:03発のがあるのでそれに乗ることにする。オール普通車の編成である。普通車とはトロッコ車のことであり、他に窓もある特別車や、さらに座席が寛げるリラックス車等がある。要するに今度の列車はどの車両に乗っても寒い。整理券で指定されたのは1号車。機関車のすぐ後ろのトロッコ車だ。客は3〜4号車あたりに団体、一般客は1号車に6人。13両編成の他の車両は空席である。機関車はEH。通常EDを2両使用するが、始めから固定したEHもあるのだ。EHの牽く13両編成の客車とだけ聞くとJRの幹線列車並みのようだが、車両はミニサイズ。機関車も目の高さにパンタグラフが見えるので、遊園地の汽車のようだが、もちろん立派な正規の道である。

 ホームでは駅弁や飲料を売っているが、誰も何も買っていないようだ。また、乗客の記念写真を撮っている。帰りに売りつけようということらしいが、少なくとも私は買うつもりはない。引換券だけもらっておく。列車は定刻に発車。もちろん一番後ろの車両に車掌も乗っている。確かに寒いが、窓越しでなく直に景観に触れられるので、貴重な体験かもしれない。どんどん深い山中に入っていく。元々は関電の専用線で「生命の保証はしません」の断り付きの便乗だったが、後に正規の道になり、関電から独立して黒部峡谷道になったのである。トンネルの壁は手を出せばすぐに接触するし、身を乗り出せば簡単に谷底に転落するが、そういう事故は聞いたことがない。安全な道なのである。事故が頻発している都会の電車の方が危険なのだ。さて、景観のいいところはしばらくは右側なので、客は右側に寄っている。柳橋のあたりでは自然仏が見える。石が仏様の形になった自然の造形だ。後曳橋では徐行して深い谷の眺めを堪能させてくれた。少々こわいくらいだ。(渡ろうとすると足がすくんで後ずさりするので、後曳橋というそうだ。) 途中の駅で対向列車と交換するが、あちらは窓付きの車両を連結している。暖かそうだなあ。5月の小雨のトロッコ列車はやはり寒いのであった。鐘釣は、途中駅で唯一観光客が乗り降りできる駅のようだが、まだ季節はずれなのか誰もおりない。近くに「黒部の万年雪」がある。しばらくして終点欅平到着。一様に「寒かったですねえ」の感想だった。

 欅平でおりても、まだほとんど通行止めで一部しか開放されていない。ただ、秘境にやってきたんだなあという思いだけを味わうために来ているのである。とりあえず帰りの整理券を確保しておく。すぐ折り返すのはさすがにつまらないし、次も早いかなと思い、13:10発の列車にした。窓付きの特別車があるので、今度はそれにした。ただし360円余分にかかる。駅の待合室ではなんとストーブが焚かれていた。5月下旬にストーブが必要とは。折り返しまで1時間半くらいあるので、ゆっくりと過ごす。まずは食事。欅平駅にある唯一の食堂でカツカレーを食べる。相変わらず小雨交じりの天気だが、下におりて奥鐘橋まで行く。ここを渡るともう先には行けない。万年雪かどうかわからないが、周囲には雪がかなり残っている。下界とはだいぶ様子が違う。温泉旅館もまだ営業していないし、何もやることがないという贅沢(?)を味わえるのである。一本前の12:49でもよかったかな、まあいいや。ボンヤリと景色を眺めたりして駅に戻る。

 帰りは13号車で、また機関車のすぐ後ろ。わずかな乗客は全員特別車に乗っており、後ろに連なった普通車(トロッコ車)は空席だった。まあ、そうだろうね。急に暖かい車内に入ったため、別天地のようだ。同じ道を戻るが、途中で雨もやんで太陽が出てきた。しかし、宇奈月に着いたらまた雨が降っていた。今日は一日こんな天気だろう。宇奈月に着くと、さっきの写真屋が「よく撮れていますよ」と言って寄ってくる。まあ、よく撮れているのは被写体がいいからだが(??)、買う意思のないことを告げる。雨の中を小走りに地の駅に向かう。

黒部峡谷鉄道の車内 欅平に到着した黒部峡谷鉄道
欅平駅 欅平の奥鐘橋



6.富山地で富山へ

 富山地の今度の電車は14:59発で発車まで約30分ある。券売機で1,790円の切符を買うが、電富山までではなく岩峅寺まで行くつもりである。(宇奈月温泉からの運賃は同じ。) 折角だから上滝線にも乗っておこうと思ったのであり、途中下車もしてみようと思ったのである。今回は宇奈月温泉は乗換えだけの素通り。改札を入り電富山行きに乗車。寺田までは同じ道を戻る。電黒部を過ぎてJRに並走し、滑川市内を過ぎてJRと離れ、上市で向きを変えて寺田まで1時間15分。高校の最寄り駅なのか、時折高校生が乗ってくるが、概してすいていた。寺田で立山線のホームへ移動。このホームは扇形になっていて、真ん中が電富山方面、両端が宇奈月温泉方面、立山方面となっている。立山行きは9分の待ち合わせ。すいた電車に乗り込み、淡々と進んで岩峅寺で下車。

 このまま上滝線に乗り換えてもいいが、折角だから改札の外に出てみた。時刻表を見ると次の電車まで30分ちょっとある。この駅止まりも多いし、特急も停まるのに、駅前は寂しい。わずかな客がおりてどこかに行ってしまったら静かになった。雨も降っているが、ちょっと駅前を散策。さすがに傘が必要になり、出さざるを得なくなった。この岩峅寺のあたりは立山町域内であることを知る。駅に戻り切符を買う。自動販売機はなく窓口で電富山まで購入。駅員がコーヒーを買いに行ったので、私もついでにコーヒーを買い、待合室で飲んでから改札を入った。

 上滝線の電富山行きは17:15発だが、17:12にも寺田経由の電富山行きがある。しかし、上滝経由の方が3分早く富山に着くのである。駅に貼ってある時刻表を見て知った。確かに距離は短いが、立山へ直通する列車は長い方を通るので、上滝線は観光色の希薄な生活路線である。車両もやや古い形式のが使われているようだ。寺田経由に3分遅れて発車。宇奈月から乗ってきた電車よりも乗車率がいいのは、平日であり生活路線だからだろう。南富山で交換待ちのために少々停車。ここで路面電車に接続しているため、乗り換える人も多かった。ここからは不二越線と名前が変わる。不二越を過ぎ、稲荷町で本線に合流し、電富山に到着。下車。雨はやんでいた。

宇奈月温泉に停車中の富山地鉄 岩峅寺駅



7.富山の夜(その2)

 さて、明日はアルペンルートで長野県に出る予定だ。時刻を調べておき、窓口で信濃大町までの切符を確認すると、通しで買えるが、明日から使うなら明日買えということだった。今日の宿はコンフォート富山。昨日泊まったところと歩いて15秒くらいの距離だ。同じホテル連泊でもなんなので宿を変えたが、予約する際には駅からの所要時間と値段だけしか見ていないので、現地に行ってみると実はすぐ近くだったことを知った訳だ。また最上階の一番端の部屋。ミネラルウォーターのサービス付き。というか、予約の時に頼んだことになっているそうだ。そういえば書いてあったなあ。荷物を置いて外に出る。傘はもういらないだろう。雨がすっかり上がったようだ。宿の近くには居酒屋が多いようなので、今日はそのあたりで過ごす。たまたま目についた「寄せ来」に入り、日本酒(立山)をチビチビやりながら、刺身などをつつく。あとで追加した白海老の天ぷらはうまかった。常連客がいるようで、そちらで話がはずんでいるので、静かにひとりで飲める。ついつい酒が進んだようだが、なかなかいいお店だった。外に出るとまだ明るい。宿に戻って、ミネラルウォーターを飲みながら、TVで野球を見たりして寛ぐ。巨人はロッテにボロ負け。楽天はやっとやっと10勝達成。


8.富山地で立山へ

 5月25日(水)、今日は快晴だ。宿で朝食をとる。昨日と同じようなおにぎりとサラダ。宿を出て、電富山の駅へ。駅前に「立山(室堂)の天候」が掲示されているが、今日の午前6時の天候は快晴、視界良好、気温−1℃。最高の状態だ。これも普段の行いがいいからだろう。窓口で信濃大町までの切符を買う。10,320円也。扇沢まで1枚の切符で、扇沢から信濃大町までのバスだけ別になっている。電富山発は8:07。昨日より5分早い。立山行きは昨日と同じ元京阪車だったが、昨日の宇奈月温泉行きよりも乗客が多かった。高校生は分岐する寺田までで大半がおりた(越中荏原、等)が、5分の差が通学時間に微妙な差異となっているのか。立山線に入り、五百石でも割と高校生がおりた。岩峅寺までは昨日も通ったが、その岩峅寺を過ぎると、客はわずかになった。ここからいよいよ立山の山登りに入っていく訳だが、いくら季節はずれとはいえ、立山黒部アルペンルートという、超ゴールデン観光コースの客がこんなに少ないはずはないなあ。立山に到着。おりた客は10人弱。ここで、ケーブルカーの整理券を受け取れという。これからのコースで唯一整理券が要るが、混雑時は入口で調整するのだろう。今日はすぐ次に出る9:20があっさり確保できたので、かえってゆっくりする暇もなくなってしまった。

立山は本日視界良好! 立山駅



9.立山黒部アルペンルート

 さて、まさかわずか数人の旅となる訳はないなと思っていたら、どこから来ていたのか団体さんがいた。しかも、会話は中国語。台湾から来ている35人の団体旅行であった。なお、富山地でずっと来ていた家族連れの人も中国語で会話。日本人は5人いるのだろうか。一般用改札から数人、団体用改札から35人が、立山開発道のケーブルカーに乗り込み、満員となった。会話はほとんど中国語。日本人は今日は普通の人はお仕事なんだな。ケーブルカーは貨車を連結している珍しいもの(と案内していた)だが、貨車は空のようだった。7分ほどで美女平に到着。一気に977mまで登ると、一面霧がかかっていた。ちょっと不安になるが、とりあえず、すぐに接続するバスに乗ることにする。ここではゆっくりするところもなさそうで、バスに乗るしかない。室堂まで行く人はこちら、途中おりる人はこちら、と2台に分乗するよう案内していたので、室堂直行の方に乗る。団体さんは分乗したのかな? たまたま近くに座った人からは日本語が聞こえ、日本人もいることを知る。

 バスは立山開発
道が運行する立山高原バス。時刻表は9:40発となっているが、客が一通り乗ったと見るや9:35頃発車した。ここから約50分で一気に2450mまで登るのである。マイカー禁止の道なので気分がよい。両側にはまだ数メートルの雪が残っており、これが夏には完全に消えるのか信じられないような感じだ。もちろん、道は完全に除雪されており、4月中旬に全線開通している。霧の濃い状態は続いており、途中の見所の一つ、称名の滝は「本日は霧で見えないため通過します」とのことだった。しかし、高度があがり雲の上になると完全に快晴! 雲ひとつない。アルプスの山々が美しい。本当に素晴しい。山の眺めがこんなにきれいに感じたのは久しぶりだ。台湾からの観光客も手に手にカメラを持って撮影していた。といううち、室堂ターミナルに到着。立山黒部アルペンルートの最高地点である。(これから徒歩で山頂まで登る人は別。) 気温は低いはずだが、すばらしい快晴と景観で、寒さは全然気にならない。もう少しゆっくりしてもよかったが、30分ほどいて、さらに先に進むことにした。

 今度は立山黒部貫光のトロリーバス。同じアルペンルートでも、扇沢−黒部ダムの関電トロリーバスは古くからあるが、こちらは以前は普通のバスだったが、平成8年頃にトロリーバスにしたのである。日本にはこの2路線しかない。トロリーバスは無軌条電車ともいい、バスではなくて
道なのである。台湾の団体さんとはここでお別れだが、トロリーバスに乗ってきた客はまた中国語の客が多い。中国語の中で旅するとは予想外だったなあ。運転手が乗ってきて「こんにちは」と大きな声で挨拶。「写真を構えていらっしゃる方、残念でした、全区間トンネルです。では出発します。」と、なかなかナイス。定刻の10:45発。走る音はやはりバスではなくて電車の音だった。約10分で大観峰に到着。標高2316mである。

室堂からの眺望 大観峰からの眺望

 大観峰からも眺めを楽しむ。下に黒部湖が見える。緑の湖面が美しい。これからそこまで下りていく訳だ。アルプスの山々を見て、あれが何岳、これが何岳という知識は残念ながらあまりないが、美しい眺めを堪能できることには変わりない。大観峰からは立山黒部貫光のロープウェイ。途中に1本の支柱もない。一気に1828mまで下りていく。ロープウェイはすいていた。団体さんよりはちょっとペースが早いのかな? 11:10定刻に発車し、黒部平に向かって真っ直ぐにおりていく。黒部平ではちょっと正午には早いが、昼食をとることにした。2階にある食堂に入ったら客は他にいなくて入っていいのかどうか迷ったが、問題ないようなのでカツカレー(またか)を注文。「今からカツを揚げますので10分ほどお待ちいただけますか」とのこと。なんだか、一番乗りで入ってしまったようだ。ひとりで食べていると、しばらくして下の方から「35名様ご到着」の声が聞こえた。台湾の団体さんが一本あとのロープウェイで追いついたようだ。入換えで出た。

立山ロープウェイ 黒部湖


 黒部平からは立山黒部貫光のケーブルカーで黒部湖までおりる。12:00ちょうど発のケーブルカーは、微妙に団体さんとタイミングをずらすことに成功したのですいている。全線トンネルの中という、珍しいケーブルカーだ。これも景観保護のためだという。約5分で到着。1455mまでおりてきた。ここらはトロリーバスの乗り場までは徒歩連絡だ。ゆっくりと黒部湖沿いに歩いていく。アルペンルートは、どのポイントに行っても眺めがいいねえ。今まで行かなかったのが不思議。途中で、山いちごソフトを買って食べる。上の方の展望台にも行ってみるが、結構長い階段を登るのでいい運動にもなる。黒部湖の眺めを堪能した後は、関電トロリーバスの乗り場へ向かう。乗り場に向かうトンネルの中はひんやりしていて寒い。トロリーバスも全線トンネルの中なので、黒部ダム駅もトンネルの中だ。13:05発に乗る。運転士が大声で「こんにちは」と挨拶。さっきの立山トロリーバスと同じで好感が持てる。発車の際に「この電車は・・・」と案内した。そう、トロリーバスはバスではなく電車なのである。13:05発車。やはり電車の音をさせながら、約16分トンネルの中を走る。途中、行き違い交換のための場所がある。「単線」なのである。終点扇沢はトンネルを出て明るいところに着いた。

 アルペンルートもいよいよ最終区間である。バスの時刻を確認して、土産物屋等を適当に覗いたりして過ごす。ちょっと「駅」の回りも歩いてみたが、別に見るようなものはあまりない。バスは14:20発。川中島バスの信濃大町行きだ。待っていると、周囲が少々賑やかになった。見ると、武田鉄矢氏と細川ふみえさんがいた。何かのロケで来ていたのだろうか。武田氏はバス乗り場近くの喫煙所で煙草を吸っていた。周囲のオジサンたちに溶け込んでいて、言われないと気付かなかったかも。ふみえちゃんは奥の方にいたが、TVで見るよりも可愛らしかった。2人を含む一行はマイクロバスで出発。その少し後を、我々の乗ったバスが追っていくような形となった。あとは山をおりていくだけ。大町温泉郷で結構おりた人が多かった。アルペンルートを通ったあとはここに泊るのが普通のコースなのかな。私はそのまま終点の信濃大町まで乗っていった。信濃大町はもう下界の町で、快晴の天気ゆえに結構暑く感じられた。

関電トロリーバス(黒部ダム) 関電トロリーバス(扇沢)



10.大町から松本へ

 久しぶりにJRだ。駅で「南武線中野島まで」と言って切符を買おうとすると、「中野島...ですか?」と言って路線図を調べた。中野島駅を知らないのか? 「15:29のでいいですか?」と聞くので何かと思ったら、特急券のことらしいので、「乗車券のみでいい」といい、無事購入できた。でも、その特急に乗れば、余裕で今日中に帰れるなと思ったが、折角だから松本に一泊してから帰ることにしたのである。普通列車は16:00と16:36があるが、後の方は信濃大町始発なのでこちらに乗ることにした。大町市は初めてではないが、以前来た時からかなり立っているし、その時は友人と八坂村の方まで行ったので、駅周辺はあまり記憶がない。という訳で適当にブラブラと散策。駅に戻ると、始発の松本行きが停まっていた。山版「走ルンです」E127系だ。帰宅の高校生は、南小谷行きにはたくさん待っているのに、松本行きにはあまりいなかった。定刻に発車し、大糸線の各駅に停まっていく。松本に到着して下車。宿に向かう。松本グリーンホテルはすぐにわかったが、富山の2泊のホテルに比べると、ちょっとグレードが落ちるような...。宿泊費は同じだが、朝食代は別なので(富山はいずれも込み)、結果的に700円高い。今夜は最上階ではなかった。窓から目の前に電車が見える。荷物をおいて町に出る。

 そういえば、数週間前にも松本に来たが、またすぐに松本に来ることは予測していなかった。とにかく町中を歩き、目についた蕎麦屋兼居酒屋に入り、日本酒(佐久の花、真澄、等)と岩魚の塩焼きなどでチビチビやっていると、富山産ホタルイカの文字が見えたので、それも注文。富山の思い出を松本で? 蕎麦で仕上げて適当に切り上げたら、またいい値段になった。一人で飲むと酒が進むんだよなあ。酔い覚ましにブラブラ歩き、宿に戻る。TVで野球観戦をしていたら、また巨人は負けたが、楽天は勝った。と応援している2チームの結果はチェック。


11.あずさで帰宅

 5月26日(木)、今日も晴れだ。あとは帰るだけだが、急ぐ理由もないので、ゆっくりと宿を出る。立川までの自由席特急券を購入し、立川に停まる列車の時刻を確認すると、9:55のがあるので、これに乗ることにした。まだ時間があるので、松本城の方に行ってみた。天守閣の中は数週間前に入ったので、今日は外から眺めて、あとは適当に町中の散策。中途半端な時間なので、あまり大した行動は取っていない。駅に戻り、改札を入る。

 「あずさ12号」は、間もなく回送で入線してきた。E257系だ。自由席はガラガラにすいていた。平日の中途半端な時間だからすいているとは思っていたが、3両ともガラガラである。定刻に発車。松本を出ると、塩尻、岡谷、下諏訪、上諏訪、茅野、と「スーパー」でないただの「あずさ」なので停車駅が多いが、ここを出ると甲府、八王子、と「スーパー」並みの停車駅なのである。それで立川にも停まるのだから有難い。甲府でやっと乗車率がよくなった。甲府まで来たら、もう帰ってきたような気分になってしまう。相模湖で201系を追い抜くと、もう現実の世界だ。立川で下車。途中下車して昼食を取る。北口に「高田屋」があるのを思い出し、そこに行く。高岡で入った店と同じだ。食事を終えて、南武線で帰った。


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