12/02 17:48 共同通信: 徴用時の不法行為を初認定 強制連行の賠償訴訟 長崎地裁
共同通信ニュース速報
戦時中に強制連行され三菱重工業長崎造船所(長崎市工と国に未払い賃金支払いと約一千万円の損害賠償を求めた判決が二日、長崎地裁であり、有満俊昭裁判長は金さんの請求をいずれも棄却した。
判決は、徴用とその後の労働実態について「警官らは違法な手段で連行し、半ば軟禁状態で労働させた」などと国と旧三菱重工(一九四七年一月解散)の不法行為責任を認定した上で、「旧三菱重工業は解散し三菱重工は債務を継承していない。国は旧憲法下の権力作用について、民法上の不法行為責任を負わない」と賠償責任などを否定した。強制連行をめぐる訴訟で、国の不法行為責任を認定したのは初めて。原告側は控訴する方針。 有満裁判長はまず、旧三菱重工の行為について「原告らを監視体制の下で、軟禁状態に近い状態にして労働に従事させた。国民徴用令に基づいても許されず違法。原告の精神的損害について不法行為に基づく賠償責任を負う」と認定。未払い賃金も「五十円の支払い義務を負う」とした。
しかし、戦後間もなく制定された企業再建整備法などにより「三菱重工は旧三菱の債務を継承していない」と判断した。
国の責任については、韓国での徴用時に日本の巡査に脅された点などを挙げ「国の被用者だった巡査が取った連行手段は違法」と認め、連行後も「寮で海軍の兵員が原告らの監視をしていた」として、いずれも「国民徴用令に照らし違法だ」と判断した。
判決によると、一九四四年十二月下旬、徴用令状が届けられた金さんは母親の実家に隠れていたが、日本人巡査に徴用に応じなかった場合の不利益を聞かされ、監視付きで長崎に連行された。寮でも二十四時間監視が続き、逃亡した徴用工には暴行が加えられることもあった。金さんは四五年八月に被爆。長崎を脱出し釜山に帰り着いた。
九二年、当時の日記を基に未払い賃金百二十四円の支払いと強制連行で受けた心身苦痛への賠償を求め提訴した。
同種訴訟では、昨年七月の「富山不二越訴訟」一審判決で韓国人女性が時効を理由に敗訴したほか、金さんと同じ被爆徴用工が三菱側と国を相手にした訴訟が広島地裁で係争中。[1997-12-02-17:48]