ダルビッシュ　米へいざ出発　２３日にアリゾナでキャンプイン

　レンジャーズに入団したダルビッシュ有投手（２５）＝前日本ハム＝は１０日、注目のメジャー１年目に向け、成田空港からロサンゼルス行きの航空機で渡米した。報道陣には無言を貫いたが、機内にマイマスクを持ち込むなどインフルエンザ対策は万全。９日付の米全国紙ＵＳＡトゥデー（電子版）では今季の注目すべき若手１００選手のランキングを発表し、ダルビッシュが見事に１位に輝くなどメジャーでの期待は熱い。レ軍バッテリー陣は２４日（現地時間２３日）にアリゾナ州サプライズでキャンプインする。

　夢舞台への引き締まる気持ちからか、はたまた、集結した報道陣の目線を避けるためか。いよいよ日本を離れることになったダルビッシュは終始うつむき加減で、歩みを止めることなく搭乗ゲートへ向かった。

　ダークブラウンの眼鏡に、濃淡を分けたグレーのシャツを重ね着し、さらにはジーンズにヒョウ柄のスニーカー。格好は、どこにでもいる若者のようにラフだったが、２５歳の双肩にかかる期待の高さは比類がない。出発直前の肉声を期待した報道陣から「キャンプに向けて一言」「行ってらっしゃい」と声が掛かっても反応は一切なし。出発時刻の１０分前、すべての乗客が乗り込んだ後、大トリで機上の人となった。

　米国での期待の高さは如実だ。米紙ＵＳＡトゥデーが特集した若手ランキングでは見事に１位を射止めた。同紙は「優勝候補の球団で、もしロックスターのように見なされる準備が万全に整っているのならば、そのすごさは想像がつかないほどだ」と論評。さらには「エースになる障壁は、異文化への適応だけだろう。周囲の人々は、その点も対応できると話している」と褒めそやした。

　レ軍の期待度は、投じた巨費にそのまま表れている。ポスティングシステムの入札金と年俸を合わせた総額１億７７０万３４１１ドル（約８６億円）は、松坂を抜く入札制度の史上最高額だ。チームをまとめる“伝説の豪腕”ライアン球団社長は、エース左腕ウィルソンが宿敵エンゼルスに流出するのを容認してまで、未知の力が潜むダルビッシュにかけた。

　ダルビッシュ自らも退路を断った。１月２４日、札幌ドームでの“公開退団会見”で、日本の打者が力と力の真っ向勝負を仕掛けてこなくなったと訴えた。「勝負をしたかったけど、（それは）相手にダルビッシュを打ってやるぞという気持ちがあって初めて成立するもの。それがなくなってきている」。そこまで言うからには、大リーガーを力でねじ伏せられなければ、日本プロ野球の打者は立つ瀬がない。

　キャンプ開始まであと２週間。ダルビッシュの新たな挑戦が始まる。航空機の座席に身を沈めながら、夢見ているのはどんな偉業だろうか。　（廣田学）