• 『正しいデート先の選び方』

  • 『正しいデート先の選び方』




    女の子に産まれたからには、夢があった。
    素敵な恋愛、素敵な結婚。
    相手を知る為の初デート。

    間違っても、こんな事は望んでない。

    「ねぇ、咲」
    「なに?真穂」
    「なんで私達、ここに居るんだろう」

    目の前にあるのは、いかにもな廃墟、しかも山奥の獣道を進んだ森の中。
    オマケに今は夜中だった。

    「もちろん、デート」
    「デートでこんな廃墟をセレクトする馬鹿がどこに居るのよっ!」
    「え?ここ」

    そういって咲が指さす方向には、廃墟の入り口を蹴り飛ばして開ける馬鹿二神。
    見た目は女神と見紛う妖艶な美姫――いや、美青年。
    神としては高位に有する存在であり、文武に優れた麗しき美神。
    しかし、真穂は思う。

    あいつら絶対馬鹿だと。

    どんなに聡明だろうと、どんなに優秀だろうと、どんなに強い力を持っていようと。

    あいつら、馬鹿だ。

    「ってか、私のデートってね」
    「うんうん」

    真穂は咲に泣きついた。

    「これが初めてなのに、なんで初デートが心霊スポット巡りなのよぉぉぉおっ!」
    「それはこの前のお詫びで」
    「んなお詫びなんていらないっ!」

    親友に抱きつきながら、真穂は今までの事を思い出した。


    「馬鹿っ!あんた本気でマジバカっ!」
    「真穂は怒りっぽいな、月のものか?」
    「くたばれバカ神!私と咲に近づかないでっ!ってか玲珠、なに咲の手を握ってるのよっ」

    それは、数時間前の事だ。
    突然現われた柳と玲珠に真穂は舌打ちしたくなった。
    春は恋の季節。
    けれど、この二神が纏わり付く限り自分達に恋など来ない。
    何せ、奴らは腐っても神。
    普通の人間が太刀打ち出来るような存在では無い。
    しかも、似非神とか低級の神崩れではなく、神々の中でも名の知れた高位の神だというからおかしい。
    確かに片方は『氷貴人』、片方は『雪華』と謳われる絶世の美女――いや、美青年という美しさだが、人間は顔ではない――あ、神か。
    というか、神なのに人間に付きまとうって何だ。
    いい加減離れて欲しい。

    特に人の良い咲はほだされやすいから、真穂が気をつけていなければ。

    そんな真穂の決意を知ってか知らずか、彼らは今日もやってきた。
    しかも、とんでもない爆弾を持ってきた。

    「デートはまだいい!でも、なんでデートの行き先が廃墟なのよっ」
    「行きたかったんだろう?」
    「はあぁ?」

    柳の言葉に真穂は本気で混乱した。

    「真穂、落ち着いて。ほら、以前心霊スポット巡り行ったじゃない」
    「は?スポット巡りって……あれの事?」

    心霊スポット巡りツアーを計画した友人達に強引に連れて行かれたあの一件。
    しかし、あれは途中で中止になった。
    強引についてきた柳と玲珠が原因だ。

    ――ここに幽霊なんていないぞ

    友人の知り合いで、自称霊能力者の男が居た。
    やれあそこに幽霊が、やれあそこに悪霊が、と得意げに話す男は何でか真穂にべたべたとくつっいてきた。
    一応はイケメンだから、他の女子達はキャァキャアと彼に纏わり付いていた。
    イケメンで、霊が見え、しかも自分が守ると豪語する男はとても頼もしく見えただろう――真穂にとってはウザイとしか思えなかったが。
    何しろ彼は咲に対しての対応が酷く、そんな男など真穂にとっては何の魅力もない。
    その点で言えば、咲を大切に扱ってくれる柳や玲珠の方が断然マシだったし、好感も持てる。

    だが天狗になっている男には真穂の苦言も効かず、それこそ独断場状態。
    このままでは、どこか暗がりに連れ込まれるのも時間の問題――となった時だ。
    柳が、幽霊なんていない発言をしたのは。

    その後の事はもう思い出したくも無い。
    結局、そこはただの壊れた建物だとして、心霊スポット巡りツアーは大失敗に終わった。

    その事に真穂は全く文句などなかった。
    そもそも最初から行きたくなかったし。
    なのに何故、今になってその件を持ち出し――。

    「そのお詫びに立てたのが今回の心霊スポット巡りだ」
    「なんで立てるのよっ」
    「だって、見たかったんだろう?幽霊。だけど前回は本当に何も居なかったからな。俺がそれを暴露してしまったせいでツアーも中止になったし」
    「いや、それは」
    「だからきちんとした幽霊が見れるように、本物の心霊スポットを数多く取りそろえた」

    こいつバカだ――真穂がそう思ったのは言うまでも無く。

    「俺と玲珠が厳選に厳選を重ねた本物揃いだ。しかも、本来なら即座に封印しなければならないというのを、神有家に頼んで俺達の心霊デートが終わるまで封印を待っていてもらう事にした」
    「おい、そこの駄目神ーズ、ちょっとここ座って」

    その後、数時間に渡って真穂は柳と玲珠に説教した。
    説教した筈なのに――。

    「どういう事よっ!」

    連れて来られた、本物の心霊スポット。
    来ただけで呪われるという。

    「こんなダブルデート嫌あぁぁっ」
    「ダブルじゃない、トリプルだ」
    「あ、連理さんに清奈ちゃん」

    後ろから現われたのは、ご機嫌の連理と、思い切り疲れた様子の清奈。
    たぶん清奈は強引に連れて来られたのだろう。

    「あ、呪いの事なら大丈夫だ。三神も神が居るんだからな、まず効かない。むしろ呪われたら元凶潰せばあらかたは大丈夫」
    「そんな助言なんていらんわぁぁぁっ」

    真穂の叫び。
    それは、虚しく夜の山の闇に消えていったのだった。


    終わり

    天然駄目―ズな彼氏に振り回される咲と真穂。
    というか、主に振り回されているのは真穂で、咲はとことんのほほんです。
    清奈は清奈で助けるどころか自分が危機的状況なので――連理いるし――助けは皆無という。

  • 2012年 02月09日 (木) 22時15分

コメント

はいはい、伊倉は自分の盗作騒動についてちゃんと謝罪と釈明をする方が先でしょ。
盗作で削除くらったっていう現実から目をそらしてもしょうがないよ。


伊倉盗作検証サイト
http://www14.atwiki.jp/ripoff/pages/33.html
投稿者:happy monday  [ 2012年 02月11日 (土) 15時13分 ]
なんて残念な神様達……そうじゃないでしょー!!デートってのはもっとこうっっ!!

ちなみに私とダーリンとのデート世間的にはどうかと思うのがコミケとフリーマーケット巡り……どっちがマシだろう……どっちも魔境だ……

いや、ちゃんと普通のデートもしましたよ。ダーリンはドライブ好きなので山によく連れて行ってくれます。
ただ……ダーリンは雨を呼ぶ男といわれるほどの雨男。そして私は晴れ女。相殺されて曇りになります。
いや、マジで。
投稿者:伊倉  [ 2012年 02月10日 (金) 15時47分 ]
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