10月ならさらに遠くまで放射性物質の被害は及び、京都市、大阪市を通過して和歌山市まで広がっても不思議ではないという。
『原発列島を行く』の著者でノンフィクション作家の鎌田慧氏(73歳)は、瀬戸内地方に魅力を感じると話す。
「核を拒否する姿勢をはっきりとさせ、なおかつ温暖な気候の町、という条件を満たしている岡山県の倉敷市や瀬戸内市といった瀬戸内海沿岸に、私は住みたい。岡山県には人形峠というウラン鉱床があり、政府はここを核処理施設にすべく、県の自治体に計画実行を迫ってきた。しかし、それを拒否する市民運動が盛んで、岡山県下の首長たちも、市民と連携してずっと受け入れを拒否し続けています。倉敷市などは、まさに僕の条件にピッタリな町です」
一方、地震リスクを踏まえて探しても、「日本に安心して住める場所はない」というのは、日本地震学会会長で京都大学大学院教授の平原和朗氏(59歳)である。
「私が今住んでいる京都府宇治市にも、活断層はあります。『地震の専門家がなぜそんなところに住んでいるのか』と問われるとつらいのですが、それぐらい、日本には地震リスクが少ないところはないのです。
ただ、強いて言うなら、私の故郷・広島県呉市は地震環境的には良さそうです。ここは安芸灘を震源地とする震度5未満の地震が60~100年周期で起きるのですが、直近の地震が'01年だったので、当分起きない可能性が高い。もっとも、安全なのは私の世代までの話ですが」
岡山市はどうか
もちろん、あなたが日常生活で何を重要視するかによって、理想的な住まいとなる場所は異なってくる。『日本でいちばん幸せな県民』に掲載されている県民幸福度ランキングでは、福井、富山、石川の北陸3県がトップ3を独占している。しかし、「先日届いた手紙には『私は1位の福井市に住んでいますが、ここほど住みにくいところはない』と書いてありました。いくら幸福度1位の福井でも、男女や世代によって感じる幸せは違う」(著者の法政大学教授の坂本光司氏)のだ。
映画監督の大森一樹氏(59歳)は、「地域ブランド調査」(ブランド総合研究所)で例年トップ争いを演じている北海道函館市やベスト10以内常連の石川県金沢市ではなく、岡山市を挙げた。
「映画のロケで日本全国を訪れています。『テイク・イット・イージー』を撮影した函館市は情緒たっぷりでいい町でしたが、実は私は寒いところが苦手なんです。『恋する女たち』のロケをした金沢市も雪に埋もれていて寒さが身にしみました。昨年公開の『津軽百年食堂』を撮った青森県津軽市は、撮影期間がちょうど桜の季節にあたり、非常にきれいでしたが、長い冬のことを考えると尻込みしてしまいます。
一方、気候が温暖だと、ゆったり時間が流れ、人の性格もギスギスしていないように感じる。ただ、鹿児島県でもロケをしたことがあるのですが、桜島の灰が絶えず降ってくるし、沖縄県のような年中、暑い場所だと季節の移り変わりがあまり感じられず、物足りなさが残る。となると、岡山市のように温暖で四季がはっきりとしていて、ゆったりと時間が流れている感じのするところが、何とも言えず心地いいんです」
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