自民が円高・デフレ対策の与野党協議を提唱、日銀法改正も-国会
2月10日(ブルームバーグ):10日開かれた衆院予算委員会の質疑で自民党は円高・デフレ対策での与野党協議を提唱し、野田佳彦首相も協議すること自体には前向きな姿勢を示した。自民党は日本銀行の金融政策に対する政府の影響力を強めるための日銀法改正も主張。与野党協議が実現すれば政策課題として取り上げられる可能性があるが、政府側は法改正には慎重姿勢だ。
自民党の西村康稔衆院議員(シャドウ・キャビネット財務大臣)はデフレ脱却の必要性を強調した上で、「まずデフレ・円高を一緒にやろうではないか」と呼び掛けた。これに対し、野田首相は「超党派で意見交換しながら知恵を出していこうという提起は私も賛同する。国会だけでなく政党間の協議も大いにやってほしい」と前向きに取り組む考えを示した。
西村氏は物価上昇率の目標について「政府が目標を決めて日銀に指示する、あるいはアコード(協定)を結んで目標を共有する。それをやるために日銀法の改正をやるべきだ」と主張。与野党協議は日銀法改正も「視野」に入れつつ、政策責任者レベルで行いたい考えも示したが、野田首相は「政府は日銀と緊密に連携し、問題意識を共有しながらそれぞれ機動的な対策を講じるという姿勢だ」と述べるにとどめた。
日銀法改正
これに先立ち質問に立った自民党の茂木敏充政調会長は、デフレ脱却に向けた日銀の取り組みは不十分として、「日銀に任せていても円高・デフレは解消されない、そのことを断言する」と批判。その上で、「われわれだったら日銀法を改正してでも絶対にデフレ・円高から脱却する。そういったことを進めなければ消費税にも進んで行けない」と述べ、消費税増税論議の前提としてデフレ・円高対策が必要との認識を示した。
日銀法改正は、みんなの党や民主党の「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」(デフレ脱却議連)などが主張。自民党内では山本幸三衆院議員ら一部議員が提唱してきたが、これが政策責任者レベルにも広がった形だ。
これに対し、安住淳財務相は予算委員会で「首相も今年からかなり日銀との意見交換をしっかりやって共通の認識をできるだけもつように会合の場を増やしたりしていくと言っているのでその方向でやっていきたい」としながらも、日銀法改正については「法律の改正まではなかなか厳しい」と否定的な見解を示した。
野田首相は日銀との連携については「よりひざつき合わせての議論をどんどんやっていきたい、と白川方明日銀総裁とも一致している。頻度も高めながら日銀が適宜、果断に金融政策ができるように緊密な意見交換をしていきたい」と語った。
物価目標
西村氏は政府の物価上昇率の目標についてもただした。古川元久経済財政担当相は「物価上昇率でみて2%以下、緩やかな物価上昇、インフレを目指すということについては政府も日銀も認識を一致していると考えている。その範囲で緩やかな物価上昇、インフレが実現するような政策を打っていく」と語った。
西村氏の「中長期的な物価安定の理解」についての質問に対し、日銀の白川総裁は「2%以下のプラスで中心は1%程度だということを明確にした上で、この状況が展望できるまで現在の包括的な緩和政策の下でのゼロ金利政策を続けていくとはっきり約束している」と説明した。
西村氏はこの両氏の発言について「一致していないのではないか」と指摘。野田首相は「政府と日銀の問題意識にそごはない」と反論。白川総裁も「認識の差があるとは思っていない」と語った。
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更新日時: 2012/02/10 13:41 JST