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社説

シリア情勢 流血ただちに止めたい(2月10日)

 中東シリアで政府軍による反体制派への弾圧が続き流血の事態が止まらない。

 連日、数百人、数十人と犠牲者が増え続け、昨年3月に反政府デモが拡大して以来の死者は約6千人に及んでいる。反体制派も武力で反撃し始めており内戦に突入しかねない状況だ。

 シリアのアサド政権には武力弾圧をただちに停止し、これ以上の犠牲を避けるよう強く求めたい。

 懸念されるのは、シリア情勢をめぐり国際社会に深刻な亀裂が生じていることである。

 今月初めの国連安全保障理事会では、シリア政府を非難し暴力停止を求める決議案が常任理事国のロシアと中国による拒否権行使で否決された。中ロ以外の13理事国はすべて賛成していた。アサド政権による人命軽視の対応に国連は何らの意志も示せず、無力さを露呈した。

 英国のヘイグ外相が「中ロはアサド政権に味方し、さらなる暴力に道を開いた」と述べるなど、欧米やアラブの各国は中ロの姿勢を強く非難している。

 アサド政権を擁護している中ロには自国の利益を守ろうとの思惑があるとされ、仮にそうであるなら看過できない。

 ロシアとシリアは旧ソ連時代から密接な関係があり、シリアの地中海沿岸にはロシア軍の拠点が置かれている。シリアはロシアの主要な武器輸出先でもある。

 また中ロ両国とも民族問題を抱え、力による抑圧を続けてきた歴史がある。シリアの国内問題に対し欧米の干渉を許せば、自国にも火の粉が降りかかりかねないとの警戒感があると指摘されている。

 だがそうした事情は、「虐殺」とも非難されるシリアの事態を容認する理由とは到底なり得ない。各国と中ロは協議を続けて一刻も早く亀裂を埋め、シリアに一致して臨む態勢をつくらなければならない。

 ただ中ロの対応の背景には欧米各国などが留意すべき点もある。

 昨年3月にリビア上空に飛行禁止空域を設定し、カダフィ政権による市民攻撃を防ぐため「あらゆる必要な措置を講じる」とする決議案を国連安保理が採択した際、中ロは棄権し、結果として採択を後押しした格好となった。

 安保理決議が英米などによるリビアへの軍事介入に道を開き、犠牲を大きくした側面は否めない。

 シリアは民族や宗教による多数の派閥に割れており、政権崩壊後の国家運営は極めて困難ともみられている。軍事介入は避ける必要がある。

 各国は政権側、反体制派の双方に粘り強く対話を呼びかけ、混乱を平和的に収拾する道を選ぶべきだ。

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