川崎市が
鷺沼ヴァンガートンヒルズ問題をきっかけとして
高層マンションの建築審査における
新しい許可基準を正式に施行しました。

2003年10月にこちらのページでお伝えした通り、
川崎市は、市内における高層建築物の許可基準を見直し、
鷺沼ヴァンガートンヒルズのような建築計画をより厳正に検証する新しい基準を定めて
200411日から正式に施行しました。

この新基準は
川崎都市計画高度地区ただし書第2項適用の除外第4号の規定に基づく許可基準
と題され文書にまとめられています。この文書の内容構成は以下の通り。
第1章
総則
   第1条 目的
  第2条 手続き
    第3条 用語の定義
第2章
許可基準
第1節 市街地の環境維持のための基準
  第4条 周辺環境との調和(バランス度)
    第5条 周辺環境への貢献(貢献度)
    第5条 広域的まちづくりによる総合評価
    第7条 市街地の環境維持のための基準に基づく総合評価
  第2節 公開空地等による基準
    第8条 敷地と道路との関係
    第9条 敷地内の空地
    第10条 敷地面積の規模
    第11条 計画建築物の配置
    第12条 計画建築物の各部分の高さ
    第13条 計画建築物の高さの最高限度
    第14条 計画建築物の壁面の長さ
    第15条 公開空地
    第16条 建築物による日影時間
    第17条 北側斜線制限
    第18条 天空視界の遮蔽量
    第19条 駐車場及び駐輪場の設置
    第20条 建築計画の敷地が地域または地区の内外にわたる場合等の措置

このうち、第1条「目的」には、
 この基準は、川崎都市計画高度地区(昭和48年川崎市告示第141号。以下「高度地区」という)ただし書第2項適用の除外第4号の規定に基づく許可基準を定め、敷地内に日常一般に開放する空地(以下「公開空地」という)を確保し、かつ、良好な街並みおよび都市景観の形成または維持・保全を図ることにより、良好な市街地環境の確保および整備改善を図ることを目的とする。
と記されています。

肝心の「第2章 許可基準」は長文にわたり
かつ表記内容が専門的でありすぎるため
ここに引用掲載することはいたしませんが、
その要点(=旧基準とのおもな相違点)は次のとおりです。
※この相違点に関しては、市まちづくり局建築指導課の説明に基づいて記しています。
【1】 (第15条の1「公開空地の定義」において)
中庭は公開空地として認めない、とされた点。(ただし建ぺい率算出における“空地”としては認められる)
※つまり、今後は、鷺沼ヴァンガートンヒルズのような内容の計画が川崎市内で高度地区適用除外の対象とされることは無い、とのこと。
【2】 (第15条の3「必要有効公開空地率」において)
廊下、階段などを容積率に含めない場合は、必要とされる有効公開空地率が5%加算されるようになった点。
※鷺沼ヴァンガートンヒルズのように「廊下、階段を容積率に含めないで計算」された計画内容では、今後は、5%分多く公開空地を設けないと高度地区適用除外の対象とされない、とのこと。
【3】 (第15条の4「公開空地の管理」において)
管理規約やパンフレットなどに「敷地内のこの部分は公開空地であり、このような扱いとなる」という事を明記し、買主や入居者に十分周知させることを義務づけた点。
【4】 (第1節 第4条〜第7条において)
行政が建築計画の判断をするにあたって「周辺環境との調和」「周辺環境への貢献度」…等チェックリストに照らし合わせ、それぞれの項目でポイントをつける点数制を導入した点。
※総合評価80点以上が「合格」。ちなみに、建築指導課がこの新しいチェックリストで鷺沼ヴァンガートンヒルズの計画内容を試算してみると総合評価「78.5点」で不合格=許可されない、という結果になったそうです。 →下記の[特記事項]もご参照ください。
【5】 (第12条において)
「計画建築物の各部の高さ」を見る際に、全方位斜線で立体的に判断することとした点。
[特記事項]
【4】の点数制においては、建物外壁が敷地の境界線から「10m以上セットバック」していてはじめて高度突破を許されることとなりました。しかも10m後退していればいいわけでなく、10mは最低基準でしかない。点数でいえば、10m以上15m未満の外壁後退でやっと「マイナス14点」。プラスの点数を得るには、さらに数十mものセットバックをしなければ認められません。
鷺沼ヴァンガートンヒルズで、事業者は「この建物は9.5mも後退させて、環境への配慮をした」と大いばりで主張をしていたが、この後退幅が、見直された新基準上では最低ラインにも届かない論外なものであり、事業者はそのような計画内容で、高度突破を押し切ろうとしたことが明確になったわけです。「守る会」はじめ近隣住民はこの建築計画の不当性を主張しつづけてきましたが、いわば、その根拠のひとつがここで証明されたと考えます。

他にもポイントはいくつかあると思われますが、まちづくり局建築指導課への取材で、
(かつ鷺沼のこの件に関係しそうな点として)挙げられたのは上記各点でした。

この「川崎都市計画高度地区ただし書第2項適用の除外第4号の規定に基づく許可基準」の
詳細内容をご覧になりたい方がいらっしゃいましたら、まちづくり局建築指導課等に
お問い合わせいただければ、その内容をご覧いただくこともできるかと思います。



以前にも明記しましたが、この新基準が
鷺沼ヴァンガートンヒルズの計画申請に遡って適用されることはありません。

しかし、

こうした内容の新基準を、川崎市行政が、今の時期に、改めて制定したということは、
行政内でも「鷺沼ヴァンガートンヒルズの計画を許可したことは適切ではなかった
という意思が生じているからである、と私たち「守る会」は確信しています。


ともあれ、今後は、川崎市内において
中庭を公開空地とすることで」「高度地区の高さ規制を突破するような
高層マンションの建設許可されない、ということになりました。

東急不動産、三菱商事、新日本都市開発という3つの会社の、
“法の網目をくぐり抜けるような”建設計画のおかげで、
川崎市の住環境を保全するためのルール作りが、
一歩、前へ進んだとも言えるでしょう。


『鷺沼地域の住環境を守る会』の活動が、
これからのこの地域の住環境を考える上で
(そして“新たなるマンション紛争”を防ぐうえで)
前向きな方針を打ち出すきっかけとなったと思うと、
活動の成果をひとつ出せたようでうれしく思います。



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