2004年3月23日、
東京地方裁判所にて口頭弁論があり、
裁判を終結させる事に決定いたしました。

今回は東京地裁の法廷にて、原告(住民)側と裁判官、被告(事業者)側の三者がひとつの丸テーブルを囲んで座り、協議をしました。その詳細を記す前に、まず前回協議から今回にかけての経緯を改めてご説明します。


前回(2004年3月3日)の協議の報告(こちらのページ)で記しましたが、今回の裁判の終わらせ方には2通りの方法があり、それは

(a) 原告が訴えを【取り下げる】こと
(b) 取り下げはせず、裁判官に判決文を書いてもらって【裁判を結審する】こと

でした。3月3日にはこのどちらの方法をとるか話し合いをしたわけですが、ここで被告である事業者側がまったくもって奇妙な主張を繰り広げ、この日は結論を出すことができなくなってしまった、とお伝えしておりました。

その「事業者側の奇妙な主張」とは、被告である事業者側が、「どちらになるにせよ、文書上に【事業中止は土壌汚染を理由とするものである】という点を明記してくれ」と言って譲らなかったことでした。

この主張に対する裁判長の返答は「土壌汚染は裁判の争点ではない。訴状その他においても土壌汚染という事柄は一言も触れられていないため、それを理由にする・しないの判断は裁判所はしない。裁判所はその情報をまったく持っていない」でした。つまり、裁判の争点に「土壌汚染」は「まったく関係ない」と言われたものです。

しかしそれでも事業者側は主張を譲りませんでした。事業者側にはこの裁判の記録において、この工事中止はあくまで土壌汚染が理由である、と、ことさらに明記しなければならない事情があったようです。

原告である住民側は、3月3日時点で、この件に対して次のような意思決定をいたしました。

1. 被告が、事業中止だけを主張するのであれば、原告は訴訟を取り下げる。
2. 被告が、事業中止に関して土壌汚染にこだわるのであれば、原告は取り下げをせず、結審して判決を下してもらうこととする。

「2.」の判決を下す場合も、当然「土壌汚染を理由とする」といった文言は入ってこないはずです。裁判官は、原告側の示した「取り下げ条件」を受け入れるように、何回も被告らに話をしてくれたようですが、ここに出席していた被告らはそこでは意思決定できず、

(土壌汚染を理由としてという一文をどこにも入れないで済ませることができるかどうか)
会社に帰って、検討し直します」

 などと言い出す始末。このために結局、決定はこの3月23日に延期されることとなってしまった次第です。


さて、そのような顛末を経過して行われた3月23日の協議でしたが、ここでも被告事業者側は、準備書面に「土壌汚染を理由に…(中略)…本件事業の中止を決定した」という文面を書き記して提出してきました。

原告住民は(…この事業者は、裁判に関係のない土壌汚染という事由をどうしても文書に入れこみたいのだな、と半ば呆れながら…)「事業中止は認めるが、その他理由については否認する」という返答をしました。

裁判官は原告側に「事業中止が、土壌汚染とは無関係という前提であれば【訴訟取り下げ】をするか」と意思を確認しました。また被告側も(原告側の主張の後で)「取り下げ」に同意したとのことで、その時点で【訴訟取り下げ】が成立し、この裁判は終結することとなりました。

今回は原告が取り下げ文を書くのではなく、調書に「原告は、計画中止によって訴訟を取り下げる」「被告らは取り下げに同意する」と書き記すことで手続き処理されるそうです。その調書の内容は、下記の通りです。

※別紙物件目録等の添付書類は、当サイト上では掲載割愛します。

裁判長(認印)

第5回 口頭弁論調書

事件の表示 平成15(ワ)第8805号
期   日 平成16年3月23日 午後2時30分
場所及び公開の有無 東京地方裁判所民事第1部法廷で公開

弁論の要領

被告ら 準備書面(4)(平成16年3月18日付け)陳述
原告ら 1.
上記被告ら準備書面の内容について、「本件事業の中止を決定した」部分については認め、その余は不知。本件事業中止決定の理由が土壌汚染であることについては事実関係も確認できないし、納得のいく説明も受けていないため認められない。
2.
別紙物件目録1記載の土地にかかる、別紙物件目録2記載の各建物の建築の中止が決定されたので、本件訴えを取り下げる。
被告ら 訴えの取り下げに同意する。

証拠関係別紙の通り

裁判所書記官 ○○○○(認印)

ともあれ、2003年4月22日の提訴から始まったこの裁判は、わずか1年足らずで幕を引くこととなりました。この訴訟問題に関心をもち、ご注目くださっていた皆さま、今までありがとうございました。

ここで事件を終了させることにあたって、問題の終結にしては不可解な点もいくつかあります。事業者が事業を中止するのは、本来さまざまな要素があり、土壌汚染のみではないと私共には考えられるからです。事業者が書面に土壌汚染を記すことに拘泥する点なども“尋常ではない何かの事情”を感じさせるものです。が、そうした疑念を胸に抱きつつ、私達は次の問題処理(荒らされた土地の今後と、いまだ残されている土壌汚染問題)へと、活動のステップを進める次第です。



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