鷺沼ヴァンガートンヒルズの設計が
日本建築学会のシンポジウムで
批判を受けていたことが判明しました。

〜当守る会は、改めて、このマンションの設計会社(株)アーバンライフ建築事務所の見識に疑問を抱きます〜

そのシンポジウムは、去る2003年9月26日に行われた日本建築学会・司法支援建築会議の主催の催しで『都市居住を巡る建築紛争』と題されたものでした(会場:建築会館ホール 午後1時〜午後5時)。約120名が参加し、本講演とパネルディスカッションが行われました。

そのパネルディスカッションにおいて、ひとりのパネラーが「紛争の具体例」として、鷺沼ヴァンガートンヒルズの例を紹介しました。その発言要旨は次の通りです。

「建築基準法は全国一律であり、最低限の基準である。」

「都市計画法は用途地域制において構造的な欠陥があることは周知である。さらに、特例措置や規制緩和を受けて都市空間の乱れを助長している実態もある。」

「実例として、川崎市鷺沼に計画されたマンションがある。ここは川崎市高度地区がかかっていて、建物の絶対高さが15mに定められている。その計画地に「公開空地」を設けることで「高度地区適用除外」を受け、建物の高さを31メートルの高層建築にしている。」

「ところが、その公開空地が建物に囲まれた中庭で、公開空地とはいえない公開空地であるので、非常に驚いた例です。しかもこの“適用除外”は市長の承認を得れば高さ45メートルまでの建物が建つという内容です。」

【公開空地と高度地区適用除外についての詳しい説明はこちら】

建築界でも権威ある学会で、鷺沼ヴァンガートンヒルズ(固有名は伏せられていましたが)の建築計画内容が明示され、上記のように批判されたという点に、当守る会は注目をしています。

川崎市が高度地区の適用除外を認める許可基準では、たしかに中庭も「準公開空地」として算出数値に組みこむことが認められていました。が、鷺沼ヴァンガートンヒルズにおいては「公開空地」であるはずの中庭が、事実上、マンション居住者の専用庭として設計されているという現実に、専門家であるパネラーが驚き、建築学会の場で「これは公開空地とは言えない」と評したのです。 まがりなりにも「建築界」でプロとして仕事をされているはずの設計会社「アーバンライフ建築事務所」は、このことをどのようにとらえるでしょうか。


「中庭状の公開空地は“不当”である」という意見は、 以前だったら(この鷺沼ヴァンガートン紛争の初期だったら)“近隣住民の主観にすぎない”と却下されがちでした。しかし、建築学会でのこうした批判発言や、川崎市が許可基準を改正したこと)からしても、いまや、明らかに法の網をくぐり抜けた正当性のない設計であったと断言して構わないと思われます。

すでに別のページにて掲出しましたが、川崎市は「高度地区適用除外」の許可基準を平成16年1月1日より改正しました。鷺沼ヴァンガートンヒルズが“法の網を潜り抜けるような”設計で許可申請を出してきた事実から制度の脆弱性を反省し、川崎市ではこのマンション計画に「適用除外」の許可を下ろした直後の平成14年10月から、改正の試案に取り組んだそうです。新しく制定された基準では、中庭状の「公開空地」は周辺地域への貢献度がないとして、中庭を「公開空地」として認めないと明記しており、これによって鷺沼ヴァンガートンヒルズ計画の正当性は完全に否定されたと言ってよいでしょう。

この鷺沼ヴァンガートンヒルズの設計を担当した株式会社アーバンライフ建築事務所で実際に設計を担当した建築士はいったいどのような考え方を持ってこのマンションを設計したのかお尋ねしたい。


そもそも事業者は、裁判の準備書面の中で、コの字型の計画は「近年ごく通常の」配棟計画であると弁明していました

中庭が公開空地でもなんでもない通常のマンション共有地ならば、その主張は可能かもしれません。が、事業者は鷺沼ヴァンガートンヒルズの中庭は「公開空地」だと主張をし、その主旨からしてこれを「通常の」配棟計画と主張する道理は通りません。

しかもヴァンガートンヒルズの設計は巾着型に入り口が細く閉じて、コの字形ですらありません(参照イメージ図)。“巾着”の入り口部分にはさらにゲートまで据えられており、この中庭を「日常一般に開放された」「公開空地」と称するのは、あまりに一般常識の範囲を超えた主張であると考えられます。

このようなものを、建築設計者が(事業者と同様に)「ごく通常の配棟計画」であると言い張るのなら、この設計者公開空地の概念をまったく理解していない職能不適格者であると批判されてもやむを得ないと考えます。


「中庭状の公開空地」はそのマンションを購入して住む居住者から見ても、不利益このうえない構造です。

不特定多数の人々が昼夜を問わず敷地内に入りこみ、飲食から宴会・花火・演奏活動等で騒がしくしても、追い出すことが不可能。かつ公道ではないので警察も犯罪性がない限り民事不介入の建前から踏み込めない。そのうえ、居住者は「公開空地」の管理費まで負担させられる。

お金はとられるのに自分たちで占有することもできない。結局、事業者のみが利益を得る建築計画でしかない、という実状をマンション購入者自身がしっかり認識しておくべきです。

追記1:現に、過去、近隣住民と居住者の間で度々「公開空地」についての認識の相違からトラブルが発生する実例が発生していたようです。このため川崎市は「新許可基準」において、「公開空地」の説明を契約時の「重要事項説明」の中だけではなく、事業者が作成する「マンション売り出し宣伝のチラシ」の段階で、購買予定者がよく「公開空地」の意義を理解する内容かどうかをチェックすることにしたそうです。

追記2:駅前の繁華街に建設される商業ビルやオフィスビルなどの建築物については、個人が管理費の負担をするのはないので、「公開空地」についての不満はあまり発生しておらず、むしろまとまった空地を設けたほうが環境によいとの判断もされています。が、個人資産となるマンションについては「公開空地」を設けることは問題点が多い。これは歴然たる事実だといってよいでしょう。


利益追求にしか眼を向けない事業者が中庭を公開空地にしてより多くの戸数を確保しようとするのは、百歩譲って“しかたのないこと”と考えても、設計者は「高度地区適用除外」の法の精神をないがしろにする設計を慎むべきであると私達は考えます。

近隣住民にとっても、マンション購入者にとっても不利益きわまる構造のマンション計画を設計したこの設計者は、すでに建築学会でのシンポジウムという公の席で「中庭状の公開空地」が批判されました。川崎市行政が「中庭状の公開空地を禁止する決まり」へ許可基準改正に踏み切った事実を考えあわせても、この設計内容が「高度地区適用除外の法の精神」に反し、良識ある建築界職能人としての認識に欠ける行為であると弾じます。

これらの点において、当守る会は「株式会社アーバンライフ建築事務所」の所作を改めて強く批判するものです
アーバンライフ設計事務所は、この当会の主張に対して異議がございましたら、ぜひとも当会に反論をお寄せいただきたい。当会は、原文のままそれを当サイトに掲載することをここで約束いたします。

もう一点。行政のあり方にも疑義を呈します。

今回のこの計画については、川崎市環境アセス審議会、建築審査会、川崎市議まちづくり委員会でもそれぞれ少なからぬ批判がなされました。が、それらの機関が十分に機能することなく、「高度地区適用除外」の許可に至ってしまいました。この点について、行政庁たる川崎市にも猛省を促したい

特に、環境アセス委員長は、その任をうけることによってしかるべき額の報酬を川崎市税から得ている以上、この委員会の目的趣旨に沿って誠意ある態度で臨み、職務をまっとうする義務があると考えられます。

しかし、委員会の傍聴に参加した多数の住民は、この人物が【計画内容に疑義を呈した他の委員の発言をさえぎり】あるいは【そうした委員の発言を無視するように感じられる態度をとって】アセス委員会の議事を強圧的に進行させていた場面を目の当たりに目撃しております。(この人物は、別の計画でのアセス委員会でも同様な姿勢をとりつづけていました)

この人物は、委員長の任に適性のないものとして辞任を要求することを、当守る会はここに表明いたします。



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