2004年7月11日、
東急電鉄/東急建設による
「土壌汚染対策説明会」が行われました。

2004年7月11日(日)、東急電鉄T課長等全4名、東急建設I工事部長・O工事所長他全5名、そして国際航業からM氏1名が出席して、現地敷地内の工事事務所にて行われました。去る2004年5月23日に行われた「鉄骨や構造物等の残骸を撤去する工事に関する説明会」のときと、ほぼ同じ陣容での説明会でした。

唯一前回と異なっていたのは、今回は川崎市環境対策課から主幹はじめ全3名が出席をしていたことでした。この市行政3名は「事業者の説明を補足する役でなく、オブザーバーとして出席した(S主幹本人談)」とのこと。

事業者の説明は下記に掲示したレジュメ書類に沿って進行され、汚染の調査経緯、調査内容、その対策方法(工法)等についての説明などが詳細にわたって行われました。その説明の中では、「前事業者である東急不動産/三菱商事/新日鉄都市開発/施工者大林組が、この土地に打ち込んだ基礎杭(大きいものは長さ約40m)は全部で1,173本におよんでいた」という報告もなされました。

汚染対策工事に費やされる期間はおよそ2年間(HRC注入作業は2年間まるまる。ゴミ混じり土の掘削除去作業は約1年。地山部分の掘削作業に約2カ月。その跡地を良質土で埋め戻す作業に1年8カ月etc.)で、平成18年3月まで。さらにその後、汚染が本当に解消されたか定期的に観測をする期間が、さらに2年間(つまり平成20年まで)。それまではここに、再度マンション等の大型構造物を建築することはできない、との説明でした。

下記にその説明内容を示した配布書類(現事業者が作成したもの)を掲載します。ご覧ください。


平成16年7月11日
事業主 東京急行電鉄株式会社
施工 東急建設株式会社

鷺沼四丁目所在土地における土壌汚染について

 前事業主による計画建築物の施工中に、敷地内の一部埋土層(東名側窪地)内において、ゴミ混じり土が認められました。そのためゴミ混じり土および敷地内全体の土壌の健全性を評価するため、土壌環境調査が実施され、その結果基準値を超過する土壌汚染確認されました。また、地山・地下水部においても、揮発性有機化合物(VOC)の汚染が確認されました
 今回事業においては、汚染の範囲(浄化対策範囲)の確定調査を実施し、対策範囲を確定しました。その結果について、調査報告書、汚染土壌等処理実施計画書としてとりまとめ、川崎市と協議中です。
 対策工法は、地下水部において汚染拡散防止対策として、
揚水曝気工法(※1)、また埋土部の揮発性有機化合物汚染に対して真空吸引工法(※2)を実施しております。地下室汚染に対してのHRC工法(※3)は、現在試験施工を実施中です。

1.事業引継後の経緯

平成16年2月27日 (東急不動産ら前事業者と、東急電鉄の間の)土地売買契約解除
平成16年3月7日 近隣住民説明会開催(前事業者が「事業計画中止」を説明)
平成16年3月10日 汚染範囲を確定する調査を開始
平成16年3月22日 川崎市との協議開始(宅地造成等規制法などの協議)
平成16年5月23日 現場見学会および建物解体についての説明会
平成16年5月26日 既存建物除去届けを川崎市に提出
平成16年6月4日 地元「鷺沼地域の住環境を守る会」と工事協定締結(東急建設(株))
平成16年6月14日 既存建物解体工事着手
平成16年6月15日 土壌・地下水調査報告書および汚染土壌等処理対策実施計画書を提出
(川崎市との汚染対策工事協議を開始)

 

2.調査概要

土壌汚染調査時期 第一回 平成15年4月3日〜平成16年2月27日
第二回 平成16年3月1日〜平成16年6月10日
調査機関 川崎地質株式会社(環境省調査指定機関 環2003-1-5)
三菱マテリアル資源開発株式会社(環境省調査指定機関 環2003-1-18)
  ※第一回、第二回とも
調査管理 第一回調査 株式会社大林組
第二回調査 東急建設株式会社
総合監修 国際航業株式会社
調査内容 有機性有機化合物、重金属等、農薬等、ダイオキシン類、可燃性ガス、地下水に係る調査

3.土壌汚染の状況

埋土部 埋土部において確認されている土壌汚染物質は、
・重金属等として、鉛、六価クロム、砒素、フッ素、ホウ素
・揮発性有機化合物(VOC)として、トリクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、ベンゼン
 ※汚染内容は参考資料A参照、汚染範囲は図1「埋土部汚染状況平面図」図4「汚染状況模式図」参照
 
地山部・地下水 埋土部以深の一部範囲において、揮発性有機化合物(VOC)による地山・地下水汚染として、トリクロロエチレン、および、シス-1,2-ジクロロエチレンを確認。
原因としては、汚染物質が埋土部から埋土層株の地山部(旧地盤)を通過し、地下水へ達したため、地山部の汚染および地下水汚染を引き起こしているものと考えられます。
 ※汚染範囲は、図2「地山部汚染範囲平面図」図3「地下水濃度分布図」参照

  

4.対策計画 要旨

埋土部・地山部対策

埋土部・地山部汚染は、ゴミ混じり汚染土、地山汚染土を掘削処分。汚染土と廃棄物は現地で分別し、汚染土はセメント工場で処理。廃棄物は産業廃棄物処理施設へ搬出。掘削して除去した部分は、対策後の造成計画に基づき良質な土で埋め戻します。

また揮発性有機化合物(VOC)の濃度が第二溶出基準(※4)を上回る箇所は、掘削の前処理として真空吸引工法(※2)によってその濃度を第二溶出基準以下に下げてから掘削処理をします。

地下水部対策 地下水部においては、汚染拡散防止対策として揚水曝気工法(※1)を実施。揮発性有機化合物(VOC)に対しては自然減衰(※5)を促進させる工法としてHRC工法(※3)の試験施工を実施中です。

 

〈脚注〉

※1 揚水曝気工法
地下水をポンプで汲み、水中の揮発性有機化合物(VOC)を水から分離し、活性炭に吸着させて処理する工法。

※2 真空吸引工法
土壌中の揮発性有機化合物(VOC)を真空吸引により吸い上げ、その土中濃度を下げる工法。現地に施工した数カ所の井戸に、吸引機を設置して真空吸引する。

※3 HRC工法
自然状態で極めて緩やかに分解していく揮発性有機化合物(VOC)に対して、その分解を、水素を供与して促進させる工法。水素供与化合物として、乳酸とグリセリンの合成物質をボーリングで現地に注入します。

※4 第二溶出基準
第二溶出基準は、おおむね土壌環境基準の10倍〜30倍の値(物質によって異なる)。廃棄物埋め立て基準と同等の値で、土壌汚染措置において、不溶化、封じ込め等の可否判断の基準として採用される。

※5 自然減衰
土壌や地下水中の汚染物質が、微生物分解や自然科学分解をうけ、時間とともに濃度が減少すること。

 

参考資料A:今回の調査で確認された特定有害物質

特定有害物質名

溶出量基準値mg/L

第2溶出量基準値mg/L

今回最大値mg/L

主な用途


1,2-ジクロロエタン
0.004 0.04 0.049 塗料溶剤、洗浄、抽出、殺虫、塩化ビニル中間体

シス1,2-ジクロロエチレン
0.04 0.4 1.4 溶剤(油脂、樹脂、ゴム等)、医薬(麻酔)

トリクロロエチレン
0.03 0.3 8.6 金属表面の脱脂洗浄、塩化ビニリデン原料

ベンゼン
0.01 0.1 0.036 溶剤、抽出剤、合成原料(樹脂、繊維、ゴム等)、ガソリン、灯油等油類混入

 

   溶出基準値超過物質



六価クロム化合物
0.05 1.5 0.33 酸化剤、触媒、写真、漁網染料、革なめし、石版印刷

鉛およびその化合物
0.01 0.3 0.18 合金、はんだ、活字、水道管、鉛ガラス、ゴム加硫、電池、防錆ペイント、顔料、殺虫剤、染料、塩化ビニル安定剤

砒素およびその化合物
0.01 0.3 0.072 半導体製造、殺虫剤、農薬

フッ素およびその化合物
0.8 24.0 2.0 金属の研磨、ステンレスの洗浄、鉄鋼業等で原料として使用するホタル石に含有

ホウ素およびその化合物
1.0 30.0 1.5 金属表面処理、脱硫剤
  含有量基準値超過物質

含有量基準値mg/kg
---

今回最大値mg/kg
---

鉛およびその化合物
150 --- 2,000 ---

◎特定有害物質とは

「それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるもの」と定義。
土壌汚染対策法では25項目の特定有害物質を指定しており、その特性等より3種類に分類している。

 1.第1種特定有害物質:揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compound) 11物質
 2.第2種特定有害物質:重金属類 9物質
 3.第3種特定有害物質:農薬類 5物質
 

◎揮発性有機化合物(VOC)とは

特徴 1.高比重・非水溶性の液体(水よりも重く、高揮発性、難水溶性)
2.粘性と表面張力が小さく、土壌への吸着や分解を起こしにくい。
3.油に溶けやすく、水に溶けにくいものが多いため、生物体内の脂肪分に蓄積し食物連鎖によって生物濃縮が起こる。
4.不燃性。
5.油の溶解度が高い。
主な用途 1.一般金属の前処理
2.塗料の溶剤
3.IC基板、ブラウン管マスク、電子部品の洗浄
4.ドライクリーニング用の溶剤
従来、蒸気洗浄、部品への吹きつけ、布に染みこませてのふき取りなど、ほとんど開放状態で使用されていたため、土壌・地下水への汚染が懸念されている。
 

◎重金属とは

比重が水(1g/立方cm)の4〜5倍以上ある金属のこと。イタイイタイ病を引き起こしたカドミウム、水俣病の水銀(有機水銀)、クロム等、人体内に蓄積されると有害なものが多くある。ただし、微量元素として人体に必要不可欠な元素もある。

 

 

図1埋土部 汚染状況 平面図

 

図4汚染状況 模式図

 

図2地山部 汚染範囲 平面図

 

図3地下水 汚染濃度 分布図

※近隣住民以外の人にはいささかわかりづらい図かもしれませんが、上記図1、図2、図3は敷地の南半分のみを描いた平面図となっています。こちらの建物イメージ図の「奥側」半分であり、同じ頁の航空写真の下側(=南側)半分部分である、とご理解ください。



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