工事跡地の今後の利用法について話し合うために
住民と事業者が懇談会を開き、
住民の希望を記した「要望書」を
事業者に手渡しました。

旧・鷺沼ヴァンガートンヒルズ(元・サレジオ学院跡地)の現地では、土壌汚染対策工事が着々と進められています。

その工事が完了した後この土地をどのように利用するのか(何を建設するのか)ということについて、住民と事業者が話し合うため、2005年6月4日(土)、まず最初の懇談会を開催しました。

会場は現地敷地内の工事事務所会議室。出席者は「守る会」代表を含む5人のメンバーと「守る会」が参加を依頼した建築士の方1名。事業者側からは、東京急行電鉄住宅事業部住宅部の課長をはじめ全3名が出席しました。

話し合いは全体的に友好的に行われ、この土地が現在抱えている問題点や、将来この土地に何かを作るとしたら何を作るのか(事業者はどう考えているのか/住民はどうしてもらいたいと考えているのか)といった点について、論議が行われました。そして、その論議をさらに深める最初の一歩として、「守る会」から下記のような要望書を事業者に提出し、受け取ってもらいました。


東急電鉄住宅事業部課長に提出した【要望書】

要望書

東京急行電鉄株式会社
都市生活事業本部 住宅事業部 殿

                   平成17年6月4日
                    鷺沼地域の住環境を守る会 代表

拝啓、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 鷺沼4丁目住宅造成工事においては、工事被害はあるものの、現地ご担当のN氏から被害の解決に向けて誠意ある態度でのぞんでいただいていることに、「鷺沼地域の住環境を守る会」会員一同感謝しております。

 また今回は、「守る会」会員が作成する「鷺沼4丁目計画案」を受けてくださり誠にありがとうございます。
「守る会」では会員内でのアンケート調査や集会において貴社にお願いする
最も重要な基本的要望内容を検討し、下記のようにまとめあげました。以下に記しましたので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

敬具

〔1〕 鷺沼4丁目旧東急グラウンド跡地(以降計画地と呼ぶ)の整備、開発は、東京急行電鉄株式会社が事業主となり、全工程を計画、遂行することを要望いたします。

〔2〕 計画地は、A敷地、B敷地とも分割せず、全敷地一帯として一括開発することを要望いたします。

〔3〕計画地は、住宅系建物を主として、建築物の最高高さは、「高度地区適用除外」または「総合設計制度」などを用いた「高度突破」の特例を用いず、川崎市が定めた高度地区を遵守することを要望いたします。

以上


この要望書での“要望”は3項目のみに、あえてとどめたものです。「守る会」の中で話し合った際には実に20数項目もの要望が挙げられたのですが、まだ話し合いが序章であることや、あまり詳細な話をいまの時期(土壌汚染対策がまだ完了していない時期)から行っても意味があまりないであろうという判断から、今回の書面では最も重要な基本的要望内容として、上記の3項目としました。

事業者は「今は土壌汚染対策が優先で、まだ事後の土地利用のことなど何も決まっていないし、決められる状態でもないが、まずはこの要望書の内容は社内に伝えます」と受け取りました。

その他には次のようなやりとりや情報確認が行われました。

事業者:「この土地の今後の利用法については、東急電鉄の中でも何も決まっていない。またマンションを作るのか、戸建ての家を作るのか、も決まっていない。将来的にはちゃんとプロジェクトチームを組んでものごとを決めていかなければならないと感じている」「だから、住民の方からこうご要望をいただいても、まだちゃんとした返答ができないことをご了承いただきたい」
事業者:「正直に言って、この土地では(前・事業者東急不動産らに土地代の払い戻しをしたり土壌汚染対策のコストがかかったりして)思わぬ出費がかさんでいる。会社としては、なんとか収益を上げてお金を取り戻したいとは思っている」「但し、住民のみなさんと敵対して何かを行うつもりはまったく無い。そのことはご理解いただきたい」(要望書第3項目に記した「高度突破」はしないつもり、か?)

住民側質問:「汚染対策工事の進展はどんな感じか」

事業者:「A敷地(小さい方の敷地)は今年2005年の夏くらい、B敷地(広面積の方の敷地)は秋口くらいに完了する見込み(但し、その後にまた2年のモニタリング期間を経なければならない)」「早く回復するA敷地の方で、ここを一時的措置として駐車場などにして(収益の上がる)利用を考えたい」「この一時利用について、住民の方からなにか良いアイデアがあるようだったら、教えていただきたい」

住民側質問:「敷地を分割して何か開発をしてほしくない。その点はどう考えているか(要望書第2項目の確認)」

事業者:「(冒頭にも述べたように、まだ何も決まっていない現況だが)少なくとも“分割”はしない。分割すると、アセス逃れのように思われて川崎市からも認めてもらえない」「市の方でも、この場所についてはものすごく敏感になっている。私たちが市役所のどの部署に行っても『ああ、あの鷺沼の土地ね』と言われる」「そんな中で分割案を考えても、この土地に関しては市から絶対にダメと言われる」「今まで市当局へ協議しにいったときでも、なんでこんなに指導されるのかな、と思うくらいに厳しく言われている。『もしこの許可のことなどについて地元の人から問い合わせがあったとき、ちゃんと答えられるようにしとかないとダメだ』ということで厳しく検討をさせられている」

住民側質問:「東急電鉄でなく、他の会社に売却してその会社が開発するようなことはないか(要望書第1項目の確認)」

事業者:「これもゼッタイ売らない、といま約束することはできないが、少なくとも、また同じような問題を起こすようなことはできないと考えている。住民の皆さんのご理解を得ないで何かができるとは思わない。他のデベロッパーに売却して、そこの建築確認の看板が立てば、そのデベロッパーへではなく、まず東急電鉄に住民の方々から問い合わせがまっすぐ来て『どういう経緯で売ったのか』という話になるのはわかっているから」「その辺のことを理解して問題の起きないようにしなくては、と東急電鉄も考えている」

住民側:「この要望書だけでなく、もっと詳細に渡った要望書も、次の段階で提出したいと考えている」

事業者:「汚染対策工事が終了したくらいの段階で、プロジェクトチーム作りなどを考える予定でいる(来年3月くらいか?)」

住民側:「こんどはアセスに入る前に住民側に相談をしていただきたい。結局、それが御社にとってもいちばん早い道筋かと思う。また開発計画の内容について、本日のように住民と話し合う環境を整えてほしい。継続して話し合い、情報を共有し、手を取り合えるまちづくりをめざしたい」

事業者:「その要望は、社内にたしかに伝える」

住民側質問:「工事現場の地中に埋まっている基礎部分の撤去はどういう状況になっているか」

事業者:「A敷地の方は取れたが、B敷地のオモテの道路に面した部分はすごく難しくて、現実的に「撤去できない」という可能性も出始めている」

住民側:「撤去できない、という要因は何か」

事業者:「技術的なこと(地中の基礎を壊せる技術がない等)と、振動のことと、コストのこと。コストはまあ社内で解決できれば問題はないが、振動は、住民の皆さんに直接迷惑をかけてしまうので障壁が大きい」

住民側:「基礎を撤去しない場合に生じる不具合はあるか」

事業者:「地中に大きな基礎構造が残ったままでは、戸建て住宅を建てるのは難しくなってくるかもしれない(土地の所有者が分割されるため)。詳しくは、ちゃんと調べてみないとわからないが」

住民側:「上に何を作るのか、それによって地中のクイを撤去するのかしないのか、そのとき技術的にどういう事が可能なのか。そういったことを、まず御社のなかで早急に検討を進めるべきだ」

事業者:「了解した」

この日に話し合われたことの概略は以上のようなことですが、その中でも触れられた通り、(何を建設するかも重要だが)まずは、その利用法についてこのように住民側と事業者側が話し合いを継続して行っていける関係を深めることが重要だとお互いに確認し、この懇談会を第1回として話し合いを継続していくことでとりあえず合意をしました。

そうした意味でも、まずは、実りある面談ができたように思われます。



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