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日化工の六価クロム鉱さい処理費用返還訴訟       かけはし2001.4.30号より

汚染者負担原則確立へ

企業責任を明確化した勝利的な和解が成立

 【東京東部】四月七日、東京江東区東大島文化センターで「『東砂障害者施設クロム鉱さい処理費用返還請求事件』和解成立! 報告集会」が「公園のクロムを考える会」の主催で開かれた。
 一九九四年、江東区が心身障害者施設を建設しようとしたところ、その場所から大量の六価クロム鉱さいが出た。それを、江東区が一億四千万円かけて公費で処理したことを問題として、区民七十六人が六価クロムを排出した日本化学工業を相手取り、区へ処理費返還を求めた訴訟は三月二十一日、東京地裁(藤山雅行裁判長)で和解が成立した。同社が千六百五十万円を区に、訴訟費用五十万円を原告住民に支払う内容であった。和解条項では、区が今後も環境対策に尽力することも盛り込まれた。
 集会の最初に、江東区議の中村まさ子さんは「今回の和解は意義ある和解である。クロム処理地以外で、六価クロムが出てきた時、日本化学工業は処理費用を払うことになるだろう」と、和解を勝ち取った重要性を語った。
 原告代表の影山さんは「裁判を始めた時、汚染物質を出した会社が明らかであるので、勝てると思っていた。しかし、いつ捨てたのか細かく立証しないとだめだという裁判のあり方に歯がゆい思いをした。古い問題(鉱さいを捨てた時期が二十数年前)に取り組む困難さを感じた。だめかと思うことも何度かあった。企業から処理費用を出させることができ本当にうれしい」と語った。
 弁護士の小島延夫さんは裁判の経過と全国の土壌汚染で企業の責任を明確にする上できわめて重要な和解であることを実例をあげながら説明した。
 「この間、土壌汚染クローズアップされてきている。しかし、土壌汚染処理の費用負担は捨てた企業ではなく、土地の所有者負担が原則になっている。市街地での規制の法律がない状態である。そこで、六価クロムの捨て場になっていた市川市は、九五年に規制の条例を先駆的につくった。東京都は昨年十二月改正公害防止条例で、土壌汚染を入れ全国で初めて開発業者に対して汚染の調査や早期処理を義務付けた。環境庁は土壌汚染についての指導マニュアルを一九九九年に作った」。
 「アメリカでは汚染物質(石油やプラスチック)を作っている企業に税金を負担させるスーパーファンド法によって処理費をまかなっている。六価クロム問題は日本の土壌汚染の原点である。今回の和解で、二十年も前に埋めたものでも企業責任をとらせた重要な意義がある。市街地の土壊汚染は各地で問題になっており、国は汚染者負担を徹底する法の整備を急ぐべきだ」。
 報告の後の討論では、「江東区が本来、訴訟を含めて、日本化学工業を相手に行うべきなのに、やってこなかった。区は裁判の経過を区民にキチンと知らせるべきだし、区に入った和解金を環境対策費として使うべきだ」、「汚染企業に責任をとらせた今回の和解を広く知らせよう」、「最高裁で争われている東大島・小松川地区の六価クロム鉱さい処理問題についても引き続きがんばっていこう」という意見が出された。
 今回、日本化学工業が和解に応じたのは、アメリカやヨーロッパ各国では土壌汚染の汚染者負担(企業)が当然のことであり、WTOなどに提訴されれば、企業として国際的に生き残ることができないからだ。企業の責任をはっきりさせ、土壌汚染を出さないようにさせよう。    (M)


 六価クロム クロム鉛の製造工程などで出る有害物質。鼻の軟骨に穴があいたり、皮膚に潰瘍(かいよう)ができるなど、工場労働者の被害が報告されており、発がん性も指摘されている。

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