岡山県倉敷市のJX日鉱日石エネルギー水島製油所で起きた海底トンネル事故で、横穴を掘り進む掘削機の電源が失われ、掘削面を水平方向に支える圧力が低下して土砂流入を引き起こし、落盤につながった可能性があることが工事関係者への取材で分かった。事故直前、現場から「漏電」「ブレーカー」などと電源喪失を示す情報が工事会社の鹿島側に伝えられていた。トンネル先端部(掘削面)の真上に巨大なくぼみが出現しており、トンネル内で掘削機の一部が瞬時に破壊されたとみられる。
シールド工法に詳しい専門家によると、「シールドマシン」と呼ばれる掘削機は、進行方向の地盤との間で圧力バランスを保ち続ける必要がある。このバランスが崩れると、前方から土砂が流入する恐れがあるため、掘削機内にある電気制御された油圧式ジャッキ26本と鉄板で土砂を受け止め、圧力をかけ続けて掘り進む。
この圧力バランスはコンピューターで制御されているが、漏電などで電流に異常が起こりブレーカーが作動して電源が失われると、圧力調節機能も失われる可能性があり、ジャッキで押しとどめていた土砂が一気に流入し、落盤を引き起こす原因になるという。
油圧ジャッキは電源を失ってもただちに圧力が低下することはないとされていたが、掘削機メーカーは「あらゆる可能性を考える必要がある」としている。
鹿島などによると、巨大なくぼみがトンネル先端部の真上に生じており、縦穴開口部には、大量の海水が噴出した。トンネル先端部が落盤し、大量の海水流入につながったとみられる。【鈴木理之、平川哲也】
毎日新聞 2012年2月10日 13時30分(最終更新 2月10日 14時42分)