政治

文字サイズ変更

解説:診療報酬改定 「入院」額公表を拒否

 12年度の診療報酬改定では、病院勤務医の負担軽減に1200億円、在宅医療の充実に1500億円を振り分ける。しかし、厚生労働省は小宮山洋子厚労相の意向で主に病院の収入源となる入院医療への配分額公表をかたくなに拒み、本当に勤務医の待遇改善につながるのかという面で不透明な部分を残した。

 前回の10年度改定は「病院族」の民主党議員が主導し、個別の治療報酬額を決める前に、入院医療に回す金額を全体の9割、4400億円と決定した。疲弊の目立つ病院勤務医の待遇改善を図る狙いがあった。ところが今回は一転、10日の個別の報酬額答申後ですら入院医療への配分額を公表しなかった。小宮山氏は「前回改定で弊害があったから」と言う。

 確かに、個別の金額を決める前に配分の大枠を決めた前回は柔軟な配分がしにくかった面はある。それでも個別の報酬を決めた後、結果として入院医療にどれだけ配分することになったのかを公表することは何ら問題ないはずだ。

 公表を渋る小宮山氏に対し、事前の配分枠決定を求めていた財務省は「日本医師会(日医)への配慮ではないか」とみる。開業医が主力の日医は、主に病院が対象の入院医療への重点配分を必ずしも歓迎していない。衆院選を控え、日医を刺激したくないのでは、という読みだ。

 12年度改定を巡っては、昨年11月の政策提言型仕分けで「マイナス改定」とされたにもかかわらず、日医の後押しなどでプラス改定となった。厚労省は「医療サービス充実には財源が必要だ」と正当化したが、それならばより財源不足が深刻な入院医療にどれだけ配分するのかを早期に公表すべきだ。【鈴木直】

毎日新聞 2012年2月10日 東京夕刊

 

おすすめ情報

注目ブランド

特集企画

東海大学:健康に老いることを目指して抗加齢ドックに携わる。

現在の老化度を知り、今後の健康に役立てる

予防医学について聞く。

毎日jp共同企画