3: 名前:ブラックスター☆12/31(金) 16:16:24
プロローグ

2010年12月26日 日曜日 午後11時58分。

あと2分で誕生日になるという時、あの世へ行った少女が居た。


その少女の名は、田中 真 (タナカ マコト)。
17歳……、高校2年生だ。

彼女は、幸せそうな寝顔だった。

この『死』に、悲しむ人はいた。

そんな、短かった私の物語。

4: 名前:ブラックスター☆12/31(金) 16:34:33
第01話 MAKОTО

私の誕生日、12月27日。

それは、程遠い日だった。

―……

2008年。

「まーことっ!」
「……有紗っ!」

神田 有紗 (カンダ アリサ)。

私の親友。

幼稚園からの付き合い。

「あのね、うちね!
美術コンクールで審査員特別賞貰えたの!」

「えぇ! すごいじゃん!」

有紗は、素直な子だから神様に愛されてるって思う。

「ありがと~! マジ、真にそう言ってもらえると嬉し~」

そんなことないよ。
有紗は、『いい子』だから。

「そいえば、今日調理部、行っていい?」

有紗は、美術部だけど、コンクールが終わると何日か休めるんだって。

だから、私がいる調理部に顔を出す。

……

5時限目は、体育だった。

「もうやだ~。
食後とかきついんですけど!」

クラスの女子、数名が口ぐちに言う。

私は、言わない。

いいや。

『言えない』





5: 名前:ブラックスター☆12/31(金) 18:23:56
「今日は、リレーやるぞ!」

体育の先生の声で、校庭にいた私達のテンションは、もう最悪だ。

でも、内申を良くしておかなくちゃ。
だから、1人真面目に話を聞いていた。

有紗もダウンしていた。

私は、最後からアンカーだった。

私だって、内心嫌だよ。

でも……、『完璧』にしなきゃいけないの。

「はぁ、はぁ」

前の人が、息を切らしながら全力で向かってくる。
私は、バトンを受け取ったら走った。

2周は、きついよ。

なんて、言える訳無く。

「んはぁ、はぁ」

喉が、ヒューヒュー言うの。

胸が痛いの。

でも、誰にも言えなかった。


私は、余裕で1位だった。
私は、もう足がパンパンだった。
校庭2周はきつい。

合計、600メートル。

「大丈夫? タオルかそうか?」

同じチームだった人が、優しくしてくれた。
負けたチームの人は、機嫌が悪かった。

『負けたら、校庭2周』

だったから。
もうみんな疲れているんだろう。

アンカーだった人なんて、たまったもんじゃないよ。
きっと。

……

私が、着替えを終え、女子更衣室を出ようとした時。

バンッ!

勢い良く扉が開いた。

「あっ? 何じろじろ見てんのぉ?」
クラスの中で、有る意味目立つギャル?が睨んできた。

「はぁ、ゴメン。 偶々」

ここで、面倒事を起こすと……。

バシッ!

頬に、しびれのような痛みがきた。

ビンタ……かよ。

「ごめん、機嫌損ねたなら」
「っ、お前は良いよなぁ!
こうやって周りにあたし達がいるから『優等生』みたいに見られてよォ!?

内申、良くなるだろうなぁ!」

……なんで、逆切れ?

不思議だよ。



6: 名前:ブラックスター☆01/01(土) 16:54:13
「……ごめん」

私は、そう言って更衣室をでた。


「はぁ」

重い、重い溜息が出る。


……

部活が終わって家へ帰るこの時間が一番嫌いだ。

有紗は、逆方向だから帰れない。


ガチャッ

重い音と共にドアが開く。

「……ただ……い、ま」

私は、すぐリビングへ向かった。

リビングは、煙草の煙で充満していた。

「ケホッ」

小さく咳をした。

「今日、テスト返されたわよね」

「ケホッ、ケホッ!」

私は、咳をしながら頷いた。

見せたくない。
見せたら……。

「あら、貴方」

お母さんは、煙草を付けた。
お父さんも吸っているのに、これ以上部屋に煙草の煙を充満させないでよ。

なんて言ったら殺 される。

「この子、89点ですって」

バシッ!


「っ!」

お母さんは、煙草をすったまま、顔を近づけた。

「いい加減にしなさいっ!」

そう言うと、何発も私の体を、殴りけりした。

「っ! 痛いっ!
ケホッ! ケホッ!」

お父さんは、メモに何かを書いている。
見て見ぬふりに見える?


違うの。
何時も、お父さんも暴力を振るうの。

殴りけりするのは必ず、衣服で隠れる所。

「部屋に戻れ!」

お父さんに言われて、戻った。

ズキっ、ズキ!

体中が痛い。


私は、ベットの上に座った。

昔、私には妹が居た。

琴葉(コトハ)が。

でも、川で頭を打って……。

それ以来、お父さんたちは、暴力をふるうようになった。



7: 名前:ブラックスター☆01/04(火) 16:52:49
第02話 虐め

「おはよう」

教室に挨拶をしながら足を踏み入れたとき、

バシャッ。

「キャ!」

勢いよく、水が掛かった。

「おはよ!」

何事も無かったかのように挨拶してきた。

昨日、もめた岡原 真紀(オカハラ マキ)。

山崎 友美(ヤマザキ ユミ)。

川上 ルリ(カワカミ ルリ)。

「おっ、おはよ……う」

私も、何事も……は無理だけど、苦笑いで返した。

3人から舌打ちが聞こえた。


「はぁ」

あれ……?

私は、他の女子と仲良く話す有紗の姿を捉えた。
びしょびしょのまま、有紗の元へ行った。

「お、おはよ~! 有紗!」
「ちょっと、そんなびしょびしょでこないでよ!
でさぁ!」


あ、りさ?




8: 名前:ブラックスター☆01/07(金) 17:34:36
有紗は、私の事なんて無視して他の子と楽しそうに話し始めた。

それは、かなりショックだった。


―親友だと、思っていたのに。

その日、授業は頭に入らなかった。


その虐めは、毎日の……、日課になってしまった。

家へ帰っても、暴力を振るわれ、勉強し。
私の心を癒すものは無くなった。


それは、予想以上に辛かった。

今日も、朝学校に行く。

「はぁ」

溜息が出る。
机を見ると、机に落書されていた。

「っ!」

仕方なく必死になってマジックペンの落書を消した。

油性ペンだったらしく、いくら擦っても消えなかった。

それどころか、真夜中にいやがらせメールが届く。


「おい、最近くまがひどいぞ!
たるんでいるしるしだっ!

このっ、恥さらしめっ!」

私は、無言で家をでた。

何時も、同じ事の繰り返し。

「ばーか!」
「まだ、学校来るの?」

虐めと言えば、定番の言葉が私に向けられる。

「おい、やっぱ同性同士の虐めが1番怖いな」
「そうだな。
てか、女子がまず怖いだろ。
ま、田中、優等生ぶってるよな!」


私は、勢いよく自分の机を倒した。


バンッ!

物凄いおと共に、埃がたった。

「っ!
いい加減にしてよ!
何!? あんたらは、私に文句を面と向かって言えない訳!?

いい加減にしてよ!
これ以上、これ以上っ、私の人生めちゃくちゃにしないでよっ!

お父さんも、お母さんもっ……。
岡原さん達とか、有紗とか……、男子とか!

私だって、それなりに努力してるんだよぉ。
認めてよ。
こんなのっ、逆恨みじゃん」

きづいたら、床に膝まつきながら涙をながしていた。

教室は、静かだった。
あの瞬間、自分を制御できなかった。


「もう、やめてぇよぉ!」


「おっ、俺! 何もしてないからなっ!」
「私もだよ!」
「悪いのは、岡原さんたちだよ!」

一瞬にして、皆が誰かのせいにしだした。

「だって、だって!
う、ウザいじゃん!
田中とか!」

「うち、真の親友だから、先生に言わないよね!」






9: 名前:ブラックスター☆01/08(土) 15:23:15
「ていうかさ、真さんが、悪いんじゃない?」

クラスの1人。
谷崎 椿が言った。

椿は、双子で隣のクラス(2-B)に桜がいる。

「そうだよな! そうだよな!」

一気にクラスの子が私の敵になる。

もう……、ヤダ。
こんな世界。







10: 名前:ブラックスター☆01/09(日) 11:12:07
第03話 道

それからというもの、クラス全員からの虐めが始まった。

1日中見張られている。
先生にチくらないように。


「はぁ」

溜息をつく。
景色は、変わりやしない。

なんで、こんなヒドイ世界に生まれてきたのだろうか。

不思議だ。

子は、親を選ぶとか言うけど、だったら私は馬鹿だ。





13: 名前:ブラックスター☆01/09(日) 17:14:30
「っ、た……だいま」

リビングのドアを開けているのか、廊下まで煙草の煙は充満してた。

「ゴホッ! ゲホっ!」

私は、咳が前より悪化しているのに気がついた。

風邪かな?
ここらへんは、総合病院しかない。

仕方ないから、今度そこの内科で観てもらおう。

「ほらっ、小遣い!」

リビングの机の上に力強くたたき落とされたお札。

ざっとみて、10万程度か。

え?

何故こんな大金か?

大金じゃないよ。

だって、このお金で1ヶ月食べなきゃいけない。
携帯の電話代とかメール代って入ってる。


……


今日は、土曜日だ。

自転車で総合病院まで向かった。
その間も、咳は止まらなかった。

「えっと、強い咳が良く出るんです。
胸が痛くなったり……。

最近、食欲もなんか無いんです」
「そうですか……、熱などは?」

「無いん……ゴホッ! ゲホっ!
ゴホッ! ゴホッ!」

看護師さんが、私の背中をさすってくれた。

その時、口の中で嫌な味がした。

「ゴホッ!」
咳と共に出たそれを見ると……



『血』



だった。


レントゲンを撮ることになった……。




「ココに……、肺に大きな腫瘍が見えます。

おそらく、肺癌でしょう」








肺……癌?



それは、恐ろしい言葉だった。


「先生! 私、煙草とか吸ってませんよ!?」

「えぇ、田中さんは『受動喫煙』(ジュドウキツエン)を知っていますか?」
「受動喫煙?」


「他人の煙草の煙を吸う事です」

受動……喫煙。


「思い当たる点は?」
「両親が、2人共吸ってます……」


「おそらく、その2人ぶんの煙を吸ってしまったのでしょう」


「あの……、治るんですか?」
「もう、田中さんには色々な症状が出てます。
激しい咳、食欲無くなったり……、さっきは、血をはいたりなどもしましたね。
あと、胸の痛みも訴えています。

それに……写真を見る限り……。
腫瘍が大きいです。
発見が遅れたかと……。

助かる可能性は……極めて低いです」


そんなっ!

嫌だっ!

私は、自然と涙を流していた。

1人、帰る道はとてもさみしかった。

お父さんたちになんて言おう……。


15: 名前:ブラックスター☆01/09(日) 20:08:50
「ただいま」

勇気を持って、リビングに入った。

「お母さん! お父さんっ!」

「騒々しいわよ!」

怒鳴られてもひるまなかった。

「大事な……! ゴホッ。

ゲホっ!」

「大事な話があるの。
座って」

2人は、真剣な私を見て、座ってくれた。
言おうとすると、涙がでてくる。

お父さんたちに言うのが怖いのか。

死ぬと言うのが怖いのか。



どちらでも同じだ。

「言いたい事、沢山有るの」


……そう。
私は、決めていた。
虐めの事も。
お父さんたちの事をどう思っているのかも。

……病気の事も。


それは、私にとって、とっても勇気のいることだった。


「私、学校でいじめられてるの」

「何っ!?
それを何で早く言わない!?
この馬鹿が!」

「っ、言える訳ゴホッ!
ないゲホっ、げほっ!」

「真……」

お母さんが、顔をしかめていた。

「私、こんな世の中に生まれてこなきゃ良かったて思ってたの!
だって、琴葉死 んで、暴力振るわれてっ!

学校では虐められて!

お父さんに、良い点とっても褒められない!
悪い点取ったら何時もよりヒドイ暴力受ける!

それが、どんなに辛いことか!

分かんないでしょ!?
この苦しみが!

どんなに助けてもらいたくても、誰も手を差し伸べてはくれない!」

ポタッ ポタッ

机に、私の涙がこぼれる。

「まこ……と」

「ゴホッ。 ゲホっ、ゴホッ!」

お母さんが、いつもと違う表情で見つめる。
それは、悲しい表情だった。

「虐めは、親友だった有紗からも!
クラスメイトからも!

もう嫌だ!
死 にたい!

そう思った時もあった!

でもね……、でもね。
今は、生きたくて生きたくて仕方ないの!」

「何で?」

お母さんの一言で私は俯いた。

「ゴホッ。 ゴホッ。
ゴホっ。
ゲホっ、ゲホっ」

息が、荒くなる。
想像もしないだろう。



17: 名前:HELEN☆01/09(日) 20:38:59
名前変えます
――――――――――――――
第04話 病

「私、さっき病院行ったら、肺癌って言われたの」


お母さんも、お父さんも驚きを隠せないようだ。

「受動喫煙って言って……。
他人が吸ってる煙草の煙吸ってなるらしい。

もう発見が遅くて手打てないんだって!
お父さんたちのせいで私死ぬの!

何時も、煙充満させてるから!
サイテ―だよ!

私、お父さんたちに殺されるの!」

私は、大粒の涙を流した。

「お、お前まで行くのか。
俺たちを置いて!」

「っ何それ! 何それ!

散々暴力振るってたくせして!」

私は、部屋に閉じこもった。


あの時、先生に

『余命2年ぐらい』

と言われた。

次の日、学校へ行く時お母さんは心配そうな顔をしながら、
お父さんはつらそうな顔をしながら朝食を得た。

はぁ。

今更、母親面かよ。

そう思いながら学校へ向かった。

ガラガラ―

「うっわ来たよ来たよ!」
「良く来るよねー」

「死 んだら良いのに。
空気がもったいなーい!」

言われなくとも多分2年後には死んでるだろうね。

そう思いながら席に着いた。

机の中は、悪臭漂う雑巾が置いてあった。

男女共に、それをみてくすくすと笑っている。

何がそんなに可笑しいのか。

雑巾を綺麗い洗って、雑巾がけに綺麗に並べた。

皆驚いてる。

岡原さんは皆が見つめる中私の元へ来た。

「おはよう。
岡原さん」

「っチ! このブスが!
堂々と学校くんじゃねーよ!」

岡原さんは、私に暴言を吐き捨てた。

「なんで、学校来ちゃ駄目なのかな?
高校受験、余裕で合格したんだけど?」

「目ざわりなんだよ!」

「じゃあ、見ないようにしてよ」

私は、そう言って窓を見つめた。

「私達、明日死ぬかもしれない人間なんだからさ。
仲良くしようよ!」

そう言うと岡原は、クラスの皆が居る場所に向かった。

小声でなんか言ってる。

「ねぇー。 このクラスで死 んでほしー奴は!」

有紗がそんなこと言いだした。

「えー、田中!」

そう言うと皆賛成と言いだした。

「と言う訳で~!
真~。
飛び降りて!」

「あはは。 ゴメン。
死にたくないから。
それに、いつかは2年後には死ぬから」

「2年後?」

「うん。 あれ?
言ってなかった?
私、生まれつき心臓の病気なんだ!」

そう言うと、クラスのみんなが顔を青ざめた。

「って、嘘だよ」

「って、てめぇ!」

岡原さんが睨んでくる。

私は、決めたの。
言い返せることは、言い返してやる!

今、出来るコト、後悔しないようにやりとうすの!

「ゲホっ、ゴホッ。
ゴホッ。 ゲホっ。

ゲホっ。
ゴホ。
ゲホ、ゲホっ!」

「おい、それも演技かよ!」

「ゴホッ!」

だらぁ―――……

「あ」

気がついたら、血を吐いていた。

「ちょっ! なんで!
心臓のとか嘘じゃないの!」

クラスが大混乱。

その様子をみた他のクラスの生徒が、先生に言って、救急車を呼んでくれた。

嬉しいな。

大事にされてる。

「ゴホッ! ゴホッ!

ゲホっ! はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!

ゴホッ」


19: 名前:HELEN☆01/10(月) 11:40:15
病院で、一時的なものって言われた。

「入院をお勧めします」

「もう少し。 2年間も、病室なんて嫌です。
学校に行かせてください」


私は、そう頑固なワガママを言った。

お母さんが、向かえに来てくれた。

車の中は、無言だった。
それは、虐待されるより……痛かった。
『心』が。

私は、『居ない』ことにされてる。
そう思うと、喉の奥が熱くて、鼻が、ツーンとした。

家でも、ずっと部屋にこもっていた。






20: 名前:HELEN☆01/10(月) 12:20:59
ガラガラ―

「おはよ!」

私は、明るく教室に入った。
皆、そろっている。

「皆、もう来てたの?
私、ビリじゃん」

笑いながらそう言った。


「……」

皆、シーンとしていた。

やっぱ、昨日の事かな?
そう思った瞬間、

「ねぇ、ホントに心臓の病気なの?」

有紗が口を開いた。

「あはっ。 どうだろ?」

私は、知らないふりをした。
そんなことが、通用するとなんて思っていない。

でも、念のためだよ。

「嘘だ!」

有紗は、涙を流していた。

「大丈夫、死なないから」

そう呟いた。

皆に、ホントの事を言うのが怖かっただけだ。

自分が、

『死』

と対面しているというのが。

「おい! 言えよ! お前が、どっか、どっか行ったら虐める相手いねーだろ!」
私の机に小さなシミがいくつかできていた。


「っ!」

皆に、癌の事言ったら、優しくしてもらえるかな?

でも……2年だよ?

『なんだ。 まだまだじゃん』

って言われたら嫌だなぁ。
私にとっては、短すぎるもん。

「あのね、心臓なんて嘘! 私、もともと38度だったんだ。
昨日!
で、あの血痰は、ただの口内からだって!

ごめん、騒がせて!」


私は、嘘をついた。
涙も拭った。

「てめぇ! いい加減にしやがれっ!」

「あはっ。 ごめん。
私、特技嘘泣きだから!」

ホントは、肺癌なんて言える?
もう死も確認できてるし。

奇跡が起こるなら……。
病気を治してなんて言わない。


私と引き換えに……、




琴葉を生き返して。

そしたら、お父さんたち幸せでしょ?
最後の、最後の!

親孝行!



その日、普通に授業を受けた。
その日、普通に虐めを受けた。
その日、普通に部活もした。

普通に、帰った。

私は、なんとなく静かにドアを開けた。


そしたら、お父さんたちの会話が聞こえてきた。


「……、琴葉はだけじゃなくて、真も行くんだな」

「なんで、今まで虐待なんてしてたんだろう。
あんなに痣まで作らせて……」

おと……うさん。
お母さん!

私は、廊下でひっそり声を殺 して泣いていた。

「俺たちも、煙草禁煙しよう」
「そうね。 これ以上、吸ってほしくない。

琴葉に、怒られちゃうもの」

「俺たちは、今まで何をしていたんだ!」






21: 名前:HELEN☆01/10(月) 12:29:41
第05話 家族のキズナ

「っ! お父さん! お母さん、まだっ!

まだ、死にたくないよぉ!」
私は、勢い良くリビングのドアを開けた。

「! 真!」



……ギュッ……


その感覚は、暖かいものだった。

あの春のお日様に照らされてる感覚。

「ゴメンね。 ゴメンね。 真。

今まで! 今まで!

もう! もう、殴ったり、蹴ったりなんかしないよ!」

お母さんは、そう言って私の事を優しく抱きしめてくれた。

お父さんは、ずっと笑っていてくれた。

その顔は、

昔、琴葉が居た時……、100点のテストを持って帰ったときの顔だ。

1番見たかった顔。

「死 にたくないよぉ! 嫌だよぉ!」

私は、沢山泣いた。

「嫌いにならないでぇ。 私の事っ! ひっく!
嫌だ! 離れたくないよぉ!」


24: 名前:夏色☆01/10(月) 17:23:31
その日は、ぐっすり眠ることができた。

……

ガラガラ……

私は、教室に入って自分の机をみると驚いた。
菊の花が置いてあるではないか!

なんて、そこまで大げさじゃないけどさ。

やっぱ、嫌だよね。

「あ、ごめん。
私、花好きだけど、菊は、縁起悪いよ?」

私は、花を流し台の傍に置いた。

「あとで、欲しい人貰ってね」

そう言って、外を見つめていた。

なんか、昨日よりも気持ちが楽。

だってさ、親がしっかりと後ろに居てくれる。
だから……、かな?

バンッ

勢い良く、黒板が叩かれた。

岡原さんだ。

拳は、真っ赤。
相当強くやったんだろうね。

「皆~。 集合」

その言葉の中に、私が入っていないことは分かる。
だから、行かない。

お母さんは、本屋で働いて、
お父さんは、すぐ近くの工場で働いてる。

だから、あぁ見えて真面目なんだよ。


そうこう考えているうちに、クラスの皆が私を囲んでいる。

「ちょっと、ついてきて?」

そう言われて、私は、ついていく。

階段を何段も上がる。

そう、そこは屋上だった。

屋上には、貯水タンクやゴミ置き場がある。

あと、物置も。

私は、物置に入るように言われた。
もう、続きは分かる。

この人達の脳は、ここまでも働かないんだ。

私は、そう思っていた。

勿論、物置の中は真っ暗。

クラスの皆は、のこのこと帰っていく。
念のため、ドアを引いてみる。



……開く訳無いか。

この学校は、真面目でさぼる生徒なんていれば放送で呼び出される。


キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン

と、同じ音が繰り返される。

「はぁ、遂にサボったわ」

そう思う。

それから、何分もすぎ、

遂に20経過した。
まぁ、多分だけどね。

だって、この暗闇じゃ、腕時計を正確に読めっこない。

<2年C組 田中 真。
至急、2年C組に来なさい。
繰り返します>……

同じ事を2度言われなくとも分かる。

あぁ、そうか。
これ、授業が補習になるわけだ。

だって、生徒がもし、どこかで倒れてたら?

それは、学校側の責任になるからだ。




25: 名前:夏色☆01/10(月) 17:34:12
「アホくさ」

家族と、仲良くなると今まで大切にしていた学校がどうでも良くなる。

人間って、飽きやすんだ。

そこは、学べた。

「っ! ゲホっ、ゲホっ。
ゴホッ。 ゴホッ」

っ!
胸が、痛い。
咳したから?

私は、ハッとした。

「携帯有るじゃん」

そう思って、学校に電話をかけた。

可笑しいけど、学校に。

「先生! 私、田中 真です!
屋上の、物置に居ます!
鍵が、かかってるんです!
ゴホッ、ゴホ。
ゲホっ、ゲホっ。

ゴホッ、ゴホッ。
ゲホっ!」







ツールボックス

下から選んでください:

トラックバックをみる リンク元をみる 新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。