福島県の11年産米緊急調査で放射性セシウムが4月適用予定の新基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超えた地区があった12市町村のうち、11市町村が「100ベクレル超500ベクレル以下」の地区での今春の作付け制限に否定的なことが毎日新聞の取材で分かった。うち4市町は現行の暫定規制値(同500ベクレル)を超えた地区でも作付けを認めてほしいとした。農林水産省は自治体の意向を踏まえた上で2月中にも作付け制限計画をまとめる方針だが、調整は難航しそうだ。
12年産米について、農水省は500ベクレルを超えたコメが収穫された地区での作付けを制限する方針を打ち出している。100ベクレル超500ベクレル以下の地区については、100ベクレル超の農家が密集する地区では制限し、戸数が少なければ作付けを認める方向で各市町村と協議を進めている模様だ。
取材に対し、12市町村のうち二本松市は回答を保留。それ以外の市町村の多くは100ベクレル超500ベクレル以下で作付けを希望し、その理由を「作付けをしなければ農家の労働意欲が著しく低下し、農地の荒廃にもつながるため」とした。「高齢化が進んでおり、何年後かに作付けを再開できると言われても現実的ではない」(大玉村)との意見も出た。
500ベクレル超を検出した福島、伊達、二本松の3市を除く9市町村20地区で見ると、大半の地区では100ベクレル超のコメを収穫した農家は数戸程度にとどまる。483戸のうち3戸が100ベクレル超(最高155ベクレル)だった西郷村は、徹底的に除染して作付けした上で、県が12年度から予定する全袋調査が始まれば、汚染米の流通は防げると考えている。
500ベクレル超でも作付けは制限すべきでないとしたのは、福島、伊達、川俣、国見の4市町。「(セシウム汚染の)実験田として作らせてほしい」(福島市)▽「農家は価格が安くても作ることを生きがいにしている」(伊達市)との見解がある一方、国見町は「今年の作付けを制限するならば、国が除染を徹底し、13年産米以降は希望が持てるようにしてほしい」と要望した。
福島県は昨年11月の検査で福島市大波地区のコメから暫定規制値超えのセシウムを検出したのを機に、29市町村151地区の2万3247戸の農家を対象に緊急調査を実施。12市町村65地区の一部農家のコメから100ベクレル超のセシウムが検出された。【清水勝、深津誠】
毎日新聞 2012年2月10日 2時33分