東京都で原子力発電所の賛否を問う住民投票条例の制定を目指す市民団体「みんなで決めよう『原発』国民投票」は、署名集め期間最終日の9日、条例制定を知事に請求するために必要な約21万4200人分(有権者の50分の1)を超える約25万人分(8日現在)が集まったと発表した。期間中に選挙があった自治体では署名集めを続けられることもあり、審査を経て有効署名数が確定するのは4月下旬以降の見通しだ。【武内亮】
団体は昨年12月10日に署名集めを開始。記者会見した今井一・事務局長は「最終的には30万人分を超え、直接請求は実現できる」と述べ、都議会議員に公開討論会を呼び掛ける考えも示した。
八王子、府中、小金井各市と三宅村は首長選挙があったため、署名期限が延長されることから、団体は目標の30万人分に向けて3月24日まで活動を続ける。
その後、各市区町村の選挙管理委員会に署名簿を提出、署名が有効かの審査を受ける。
同様の運動をしている大阪市(必要数は4万2673人分)では、6万2439人分を集め、選管の審査で5万5428人分が有効とされた。
「署名をお願いします」。8日午後、東京都板橋区の高島平団地内のスーパー前。請求代表者の柳浦彰さん(35)の呼びかけに、買い物帰りの女性が応じた。柳浦さんは「ここは私たちの説明に耳を傾けてくれる人が多い。10人に1~2人は署名してくれる」。この1カ月間で前半1カ月間の2倍強の17万人分超が集まった。
当初、新宿や渋谷など主要駅前での街頭活動を中心にしたが、1カ月間で集まった署名数は目標を大きく下回った。危機感を抱いた柳浦さんらは、大阪市の仲間を見習って商業施設や大型団地を重点的に回る方針に転換。柳浦さんは「どこで署名を集めているか知らない人が多かった。積極的に地域に分け入ることで、そんな人たちの思いをすくい上げることができたのでは」と分析している。【武内亮】
東京都は、東京電力の株式4268万株(2・7%)を保有する第3位の大株主。団体が作った条例案は(1)東電管内の原発の稼働への賛否を都民が投票し(2)有効投票総数の過半数の結果が、投票資格者総数の4分の1以上に達したときは(3)(株主として)知事や議会は、東電管内の原発の稼働について東京電力や国と協議し「都民の意思が反映されるよう努める」としている。
条例の成否をにぎる都議会からは慎重な声が相次いだ。民主の幹部は「成立が決まった段階で対応を議論したい」。自民幹部も「まったく白紙の状態。(手続きが先行している)大阪市議会の影響もありそう。注意深く見守る必要がある」と話す。【武内亮、柳澤一男】
毎日新聞 2012年2月10日 東京朝刊