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最終更新日: 2012-02-09 09:26:30
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2012年02月01日 00:00
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こう着状態の地方参政権運動(上)
新たな戦略の立て直しが必要

 民団が1994年に最優先課題に掲げて取り組んでから18年の歳月が過ぎようとしている地方参政権獲得運動。日本の政局が混乱する中で獲得運動は停滞状態にある。昨年からは在外選挙への参加と並行する重要運動として推進されているが、運動の力点は在外選挙運動にシフトし、地方参政権は影を潜めている状態だ。2月23日には民団中央大会が開かれ、新しい執行部体制がスタートするが、地方参政権運動を今後どのように進めていくのか、民団にとって戦略の立て直しが求められている。

2007年11月7日、東京・日比谷野外音楽堂で開かれた「永住外国人に地方参政権を!11・7全国決起大会」。全国から5000人の団員らが集まった。
転換点を迎える民団の地方参政権獲得運動

 民団の地方参政権獲得運動は、1987年に「在日韓国人の権益に関する全国統一要望」(第6次)活動の中で、日本社会の「住民」として地方自治体選挙への参加要求から始まった。1994年4月、民団は名称・綱領・規約から「居留」を削除して在日韓国人として日本で定住することを宣言すると同時に、「地方参政権」を権益擁護運動の総括として推進する。ここを起点にすれば、地方参政権運動は18年間を経過した現時点で、昨年の野田首相の「参政権付与には慎重である」との国会答弁で事実上、暗礁に乗り上げてしまっている状態にある。
 現場で活動する団員らは消耗しているかのようだ。東日本大震災という未曽有の災害で民団の活動が復興に集中してしまったにせよ、参政権の方では現時点で中間総括がしっかりと行われているのかという指摘が出ている。
 呂健二・民団中央本部地方参政権獲得運動本部本部長代行(本部長=鄭進中央本部団長)は「これまで全国団長会議などで中間の総括はしている。全国から集まってくれた委員の方々の真摯な質問や提案を、その都度文書にまとめて執行部にも報告している」と説明する。
 しかし中央の指導層と現場では乖離があるようだ。地方参政権推進委員会に出席した団員は「ゼロからのスタートに戻った感じだ。私の地域でも地方参政権運動よりは、今年から始まる在外選挙に力点がシフトしているようだ」と話す。事実、去年の団長団会議では、参政権運動の扱いに比べて、明らかに在外選挙登録への取り組みに力点が置かれていた。本年1月1日付の「民団新聞」1面での中央団長新年辞では、一言も地方参政権に関して触れられてはいない。
 この18年間、民団は参政権獲得に向けかつてないほどの労力・エネルギーを傾注してきた。地方議会での意見書採択への取り組みや数々のシンポジウムの開催、そして各政党への請願活動と多岐にわたり、法案審議の俎上に乗せる段階にまで至った。
 しかし2001年の小泉政権の発足により運動は厳しい局面を迎えてゆく。国粋的な保守派議員たちにより、法案審議は事実上、先送りに。加えて北韓による日本人拉致問題や核・ミサイル問題の浮上、領土問題や歴史認識で日本世論も右傾化し、一部マスコミやネット上でのネガティブキャンペーンが始まり、地方参政権運動はこう着状態に陥ることになる。
 それらの動きに対して、民団は大規模集会やシンポジウムなどを開きつつ、特に国会議員へのロビー活動に力量をより注いだ。2009年9月の衆議院選挙ではかつてないほどに選挙に携わり、結果、民主党が衆院選に勝利し、永住外国人の地方参政権に賛同する鳩山政権が発足した。
 地方参政権獲得実現目前の段階まで来たと思われたが、その後、民主党政権の迷走、そして東日本大震災があり、与党民主党内の少なからぬ一部議員や自民党を始めとする反対派の動きもあって、先の野田首相の答弁となってゆく。
 法案成立を成し得なかった失望感もさることながら、日本の政局に翻弄され続けた団員たちの消耗は大きい。これらの現場の状況や声にどれだけ中央の指導層が応えているかが問われている。

昨年11月鳥取市内で開催された地方参政権シンポジウム

 呂本部長代行は「参政権獲得は早い方がいいに決まっているが、何年かかってもいいという覚悟で始めた。運動は継続していかなければならない。日本の国会が決めることなのでロビー活動も大事だ。日本の方や在日の方にも啓蒙活動を続けなければならない」と話す。
 民団鳥取では、これまでに地方参政権問題のシンポジウムを数回にわたって開催し、地域での情報発信や問題提起に努めてきた。薛幸夫団長は「私が団長になってから、5回のシンポジウムを開いた。やはり日本社会に対する啓蒙活動を続けていくしかない。民団は全国的に一斉にやらなければならない。単なるロビー活動だけの状態では実現は難しい」と話す。薛団長はさらに「新たなプロジェクトチームを作り、専門家チームで戦略の建て直しをする必要がある」と指摘する。
 在日同胞が日本の地で地域住民として生きてゆく上で、地方自治に参加する権利としての地方参政権がいかに重要であるかは語り尽くされてきた。日本が真の「国際化」を果たす上でもこの問題は避けて通ることはできない。
 「暗礁に乗り上げている」今だからこそ、18年間の総括を行うべきである。獲得運動が大衆運動たりえたのか? 日本世論の支持は得られたのか? 在野の市民運動との連携はどうであったのか? 反対勢力の攻勢に対処できたのか? ロビー活動に偏重していなかったのか? 国際世論の喚起は成しえたのか? 総括項目は数多く存在する。これらを総括し、それをすべての団員と共有し、その上で鮮明で力強い運動方針を明らかにする。それが中央本部指導層の責務ではないか。2月23日の中央大会ではそのことも問われるべきだろう。

民団地方参政権獲得運動の歩み

第1期(1987年~1993年)
運動の始まり
第2期(1994年~2001年3月)
最優先課題に
第3期(2001年4月~2007年7月)
運動の停滞
第4期(2007年8月~2010年6月)
早期実現に向けて
第5期(2010年7月~現在)
こう着状態の運動
1987年
全国統一要望書(第6次)で住民としての要望表明
1991年1月
韓日外相覚書に在日韓国人の地方参政権要望を明記
1992年
生活拡充運動を開始
1993年5月
青商連合会(呂健二会長)が地方参政権シンポジウム開催
1993年9月
大阪・岸和田市が全国で初めて定住外国人の地方参政権で意見書採択
1994年4月
辛容祥執行部が地方参政権獲得運動を最優先課題に。地方議会での賛同意見書採択や国会議員への立法化要望運動展開
1995年2月
地方参政権付与許容の最高裁判決
1996年
意見書採択した自治体が1000を超える
1998年10月
民主党と公明党が初めて国会に法案提出
1999年8月
国会で初めて法案審議
1999年10月
自自公連立与党が「成立させる」で合意
2001年4月
自民党の小泉純一郎氏が総裁に。推進派の野中広務氏らが非主流に
2001年5月
国会が地方参政権法案の採決の先送りを決める
2001年6月5日
採決先送りに抗議し、東京で4000人が決起大会開催や街頭デモ
2002年1月
滋賀県米原町が全国で初めて外国人住民に住民投票権付与
2004年11月
定住外国人の地方参政権を実現させる日・韓・在日ネットワーク結成
2008年1月
民主党内に地方参政権を実現する議連が発足。会長に岡田克也氏
2008年12月
民主党の小沢一郎氏が「政権を取れば地方参政権を実現」と発言
2009年2月
中央委員会で地方参政権付与に賛同する候補を支援することを決める。地方参政権獲得運動本部設置
2009年9月
民主党が与党に。11月以降に「政府案」で成立させることを公表
2010年1月
小沢氏の元秘書逮捕。与野の反対相次ぐ
2010年7月
民主党が参議院選挙で大敗し、国会は衆参ねじれ状態に。地方参政権の国会での進展がみえず
2010年11月
公明党の山口那津男代表が李明博大統領と会談。実現に向け努力表明
2010年11月
鳩山由紀夫前首相がソウルで特別講演会
2010年11月
第34次韓日議員連盟合同総会で日本側議員に格別の協力を要請
2011年9月
野田佳彦政権が発足。地方参政権に慎重姿勢示す

2012-02-01 3面
 
こう着状態の地方参政権運動(下)
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