2012-02-09
放射線を出さない影のセシウムの危険性
フクシマ事故による放射線被曝による健康被害の規模がどのようなものになるか、はっきりしたことの言える専門家はいない。チェルノブイリの経験から推測するしかないというのが現状である。
インターネット上では原発事故以来、それまでにはなかった健康被害が多く報告されている。これらを被曝によるものと考える人もいるが、すべてストレスのせいだと片付ける向きもある。事故当初から夏くらいまでの間、ネット上には喉の痛みや咳、目のかゆみを訴える人が多かった。「気のせい、誇張、虚偽」などを差し引いて考えても無視できない数だったと思う。非常に気になったが、事故後まもなくから出始めたこうした症状が放射線被曝による症状だと判断する決定的な材料がなかった。この件について理系研究者である弟と話したところ、「原発から放出された物質には単体、あるいは化合物という形で毒性を持つものも多い。その化学的毒性によって健康被害がもたらされる可能性もあるのではないか」というのが彼の見解であった。
以下は彼の考察である。医学や核物理の専門家ではないので、あくまでも研究者としての常識の範囲内での考察として紹介したい。
放射線を出さない影のセシウムの危険性
昨年6月上旬、経産省は福島第一原発からの放射性物質放出量の試算値を発表した(10月下旬に改訂)。ここには、31種類もの放射性元素がリストアップされているが、その中でとりわけ放出量(ベクレル数)が大きいものがキセノン133である。キセノン133は、ウランとプルトニウムの核分裂によって生成し、原子炉内の再臨界を確かめる手がかりでもあるため、ニュースでなじみの方も多いと思う。文科省の航空機モニタリングや群馬大の早川教授による放射能汚染マップに見るように、外部被曝の影響を考える上で、最も注視されている放射性核種はセシウムの134と137だが、経産省発表の試算が正しければ、キセノン133の放出量はそれらの1000倍に及ぶ。キセノンは他の元素と化学反応を起こしにくい希ガスの一種であり、沸点はマイナス108℃と非常に低い。つまり、原子炉が開放状態になれば、容易に大気中に放出される。
キセノン133の半減期は5.2日と短く、ヨウ素131のように1ヶ月もすれば、ほぼ全てが壊変して消滅する。従って、現在は新たな放出がない限り被曝の心配はない。では、キセノンの消滅後には何が残るだろうか?代わりに登場するのはセシウムである。但し、ここで生み出されるセシウム133は安定核種であり、放射線を出さない。セシウムはアルカリ金属元素に属し、キセノンとは反対に化学反応性が非常に高い元素である。この性質のため、大気中に放出されたキセノンから生み出されるセシウムは、またたく間に空気中の水蒸気と反応して水酸化セシウムになると考えられる。化学物質の安全情報を見ると、水酸化セシウムは「眼刺激性・気道刺激性の毒劇物」として区分されている。
実は、半減期が数日しかないキセノン133から生成するセシウム133は、ベクレル数ではセシウム134,137の1000倍であるが、重量に換算するとセシウム全体の1/4程度の量でしかない。しかし、壊変して固体の微粒子に変わるまではガスであり、大気中で容易に拡散すると考えられる。昨年の春から夏にかけて、東北・関東を中心に目や喉の痛みを訴えるケースが、インターネット上で数多く報告された。これらの多くは、「空気中から放射性物質の粒子を取り込んだことによる、被曝の影響ではないか」、という説もささやかれている。原発からある程度離れた地域においては、キセノン由来の水酸化セシウムの化学的毒性が、喉などの不調の主因の一つであるとも考えられる。
キセノンガスが、気流に乗ってどの程度の量が輸送され、また、降雨に伴ってどの程度フォールアウトしたかは定かではない。しかし、原発起源の水酸化セシウム粒子が空気中を舞い、地表にたまった粒子は、風で再度空気中に舞い上がって継続的な被害をもたらしている、と考える余地はありそうである。ヨウ素、セシウム、ストロンチウム、キセノン以外に、原発放出物には、一般に毒性が強いと考えられる重金属も多く含まれている。事故当初、「プルトニウムのように重い物質は遠くまで飛ばない」と言った専門家がいたが、実際には、原発から飛び出した重い物質は、少なくとも福島県の広範囲に飛散している。放射線に加え、化学的にも毒性を持つ原発放出物群の危険性に対し、今後も慎重な注意を払うべきである。
水酸化セシウムに関しては以下のサイトが参考になる。
原発事故の影響でもっとも懸念されるのが被曝による健康障害であることには変わりがないが、危険は放射線だけではない。また、上記の計算はあくまで公式に発表されたデータに基づくものであって、実際の放出量が発表されているよりもずっと多い可能性も否定できない。
熊本市の内科医、小野俊一医師は講演会の中で、公に発表された放出量は少な過ぎると指摘している。(動画の14:38付近を参照)
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