立ち読み週刊朝日

"婚カツ詐欺"・木嶋佳苗の被害男性が証言 ラブホで2度眠らされる


 首都圏の連続不審死に関わったとして殺人などの罪で起訴されている木嶋佳苗被告の裁判は、東京都青梅市の自宅で亡くなった寺田隆夫さんの審理が2月3日で終わった。この間、木嶋被告の服装と髪型に変化が見られ、木嶋被告を一目見たいと傍聴する女性たちも増えた。裁判を続けて傍聴してきたコラムニストの北原みのり氏が、裁判の様子をレポートする。

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 1月25日、佳苗にお金を支払った1人の被害者が証言台に立った。当時長野県に住んでいたM氏。M氏は当時49歳。2008年8月24日、佳苗からM氏にメールが来た。音楽教室の講師をしながら女子栄養大学の大学院で勉強している、という佳苗に、M氏は「苦学生」というイメージを持ち「ある程度は援助できる」と返信した。

 そんなM氏が佳苗から、「ラブホテルに行ったことがないから」と誘われた時は、どんな気持ちだっただろう。12月29日、長野県から上京したM氏は池袋のラブホテルに午後2時に向かう。佳苗はハーブティーとコーヒーを持参していて、部屋に入ってすぐ、M氏に飲ませた。佳苗がシャワーを浴びに行き、それらを飲んでいる間、いつの間にかM氏は記憶を失い、起きたら佳苗はいなかった。

 あまりにも不可解だったので、M氏が佳苗に「ハーブティーの効果でしょうか」とメールすると、ハーブティーにはそんなすぐに眠る効果はない、という返事と、「私としたことを、覚えてないですか?」というメールが来た。

 M氏は、睡眠薬を入れられたのではと思いつつ、佳苗を信じたい気持ちが強かった。そのため、「何かが憑依したのかもしれないから、もう一度同じ状況で実験をしたい」と提案する。佳苗は快く応じた。「何が起きるか、楽しみですね!」と。

 そして同じラブホテルに行った日。......M氏はまた昏睡したのだった。「絶対に寝ないように我慢しようと思った」とM氏は言うが、今度はさらに深い眠りについた。その日、M氏の記憶は欠落している。警察の記録によれば、この日の深夜、M氏は首都高を歩いているところを警察に保護された。ホテルで目覚め、フラフラする頭で慣れない東京を徘徊し、とにかく長野に帰ろうと首都高に歩いて入ってしまったのだろうか。

※週刊朝日 2012年2月17日号