PJ: 今藤 泰資
杉の間伐材の商品で、雇用を創出!津山木工芸品事業共同組合の産学官連携事例=宮城
2008年06月10日 12:40 JST
津山木工芸品事業共同組合の産学官事例を宮城県産業技術総合センター佐藤明所長が発表。(撮影:伊藤昭一、5月23日) 
杉の間伐材の生産技術を磨き、食器・玩具から家具・住宅関連部材を商品にした津山木工芸品事業共同組合(宮城県登米市津山町)は、地域資源を活用して、地元の雇用をつくりだすことに成功している。このことから(独)中小企業基盤整備機構(略称・中小機構)による「産学官連携成功事例」のモデルケースに選ばれ、どのように連携と支援が活用されたのかを、5月23日に東京・経団連ホールで宮城県産業技術総合センター佐藤明所長によって報告された。(参照:「もくもくハウス」HP)
宮城県の06年の人口は236万人(仙台市圏約130万人、県内総生産8兆5700億円(80%が第3次産業)である。そのうちで津山木工芸品事業共同組合の地域・登米市津山町は1980年代に人口5000人弱となり、1650年以降人口減少が続いた。町の面積68k?のうち山地面積85%でほとんどが杉の山で、企業誘致などはとうてい望めない。地域産業の創出が課題であった。
その現状のなかで、津山木工芸品事業共同組合は、「なんでも創れる町づくり構想」の提案をした町長の卓越したリーダーシップがあった。ものづくりや経営を理解させるため、初めに研修施設を設置。その後、展示販売所の設置と協同組合を設置した。「木工芸品づくりと学校教育」を重点事業に置き、活動によって子供達の人格形成の上でも自信につなげていった。
津山木工芸品事業共同組合は組合員数16名、従業員が9名。出荷額は1億7000万円。その他木材関連分野出荷額は約4億円にまで拡大。特にモノづくり製品の課題である流通では、大学等のネットワークを活用して地域外流通(無印良品)への展開している。「もくもくハウス」への来場者も年々増加、昨年度35万人以上を記録している。現在も杉矢羽集成材を家具などに展開、杉矢羽商品が地域の顔となり、住民に浸透。商品のバリエーションが拡大し、「つやまの宝物」を絵本に(住民とデザインワークショップ事業)している。
この成功のポイントは、町長が地域素材(杉間伐材・木工技術)の活用と雇用の創出という目的を明確にし、1)行政や支援機関を積極的に活用。2)産業技術総合センターが商品化までのプロデュース役。3)大学からは技術やデザインの高度な支援を受けた。4)補助事業等の活用で人づくりを最優先。木材加工技術を習得、デザインの重要性を学ぶ。展示販売所設置など市場を見据えたものづくりなどを実行したことがある。
さらに東北工業大学・工業意匠学科第三生産研究室と武蔵野美術大学基礎デザイン学科の協力で、ビジョンづくりと地域資源の発掘と見直しができた。活動内容においても、木工加工技術にかかわる研修、デザインの研修と個別指導した。間伐材用途拡大のための集成材の開発、展示会企画、商品企画と流通先の紹介など、高度な発想で市場化にインパクトのある商品化に必要な製造ノウハウを導入している。
宮城県産業技術総合センターでは、技術導入から商品化までをトータルサポート。大学と地域(行政・住民)のコーディネート役から学術機関等の紹介。商品化に向けた技術・デザイン支援、研修事業の支援をした。随所での大学・専門家・支援機関の積極的な活用があった。特に大学のデザイン支援では、武蔵野美術大学教授の民芸品の芸術に対する造詣の深さに「まさに“現代の柳宗悦”にたとえたくなる」と、佐藤所長は大学の提案思想への感銘を語った。また「地域の背景や特性を同時に情報を発信することで、広まることがわかった」とも語る。
中小機構では、津山木工芸品事業共同組の成功の要因を次のようにまとめている。1)地域のモノづくりは人・モノ・地域がからみあって促進。2)モノづくりは、技術分野とデザイン・マーケティング分野の両輪が必要。3)コーディネーターは大学や支援機関、専門家などの外部活用が有効。4)市場拡大にはプロダクトマネジャーなど、人材がキーワード。5)地域資源を活用した商品は、地域背景などの地域の価値情報をつくり、発信することが重要。【了】
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