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「放射能いじめ」に傷つく親子

福島に帰れない生活で高まる孤立感と無力感

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 会社の同僚だった夫(40)は、南相馬市に「単身残留」している。南相馬の家のローンが毎月5万円。年に100万円ある。それを考えると、4月に再開した職場を離れることができない。職場でも一緒だった夫と、こんなに長い時間離れているのは、初めてだ。

 職場も家も、原発から20キロの立入禁止区域からほんの2~3キロしか離れていない。自宅そばの空間線量が毎時1マイクロSv。学校で2マイクロSv。職場そばの側溝は毎時20~30マイクロSvあったと聞く。家の周りにはホットスポットや、政府が避難を援助する「避難勧奨地点」が出現している。

 子供には、まだ屋外での活動制限(1日2~3時間)もある。野球やバスケの好きな娘と息子はどうすればいいのだ。とても帰る気にはなれない。

 「線量とか言っても子供は意味が分かりませんから『帰りたい、帰りたい』と言います。現状はこれだけひどいんだ、と帰れない理由を説明するんですけど、言えば言うほど、私もつらい」

 しかし、群馬にいるのもつらい。

 「日々、こわいんです。精神的にも、何が向かってくるか分からないんです」

 例えば、どんなことだろう。

 「『おカネをもらえていいねえ』と言われます。そう言われた方の気持ちになってほしい。そういうのが子供に向かった時が怖いんです」

 「生活が苦しいので行ったハローワークにすら『東電におカネもらってますよね』と言われました。東電のおカネなんかいりません。3月11日の前の生活に戻してくれればそれでいいんです。」

 まるでハリネズミのように神経が張り詰めている。

 「・・・でもね・・・もう、疲れちゃった・・・」

 何があったんですか。私は重ねて聞いてみた。

 「訛(なま)ってるつもりはないのに『訛っている』と言われるんですよ。もうこれ以上は取れないのにね」

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