鹿児島県内の作家や演出家でつくる鹿児島市の「空間創造事務所」のメンバーが、反原発をテーマにしたオリジナルの演劇「失われた革命のように」の稽古に励んでいる。東日本大震災から丸1年を迎える3月11日午前10時から、同市西千石町のアヴニールホールで公演する。脚本を書いた浅井夢司さん(33)は「福島の原発事故は人ごとではない。私たちの選択が子どもたちの未来を左右することに気付いてほしい」と話している。
作品は東北地方を舞台に、原発事故の放射線被ばくで亡くなった高校生の少女と、その母親の2人劇。原発の安全性や必要性を説く母親に、少女は「私が生まれた時にはもう原発が建っていた。未来を選ぶことができなかった」「原発が爆発して私たちの前から青春と希望がなくなった」と、流されるまま原発を許容していた大人たちを問い詰める。
少女は、反原発のビラをまき「うそつきの電波塔も倒してしまえ」「革命を!」「反乱を!」と叫ぶ。
3・11には鹿児島市でも反原発のパレードなどが予定されているが「自分たちにしかできないことをやろう」と2人劇を企画したという。浅井さんは「少女の目線でストレートな言葉を選んだ」と語る。
少女役は大震災で被災した岩手県宮古市出身の城内(じょうない)麻依子さん(31)。内陸にある実家は無事だったが、親族の家屋は津波で被災し避難や建て替えを余儀なくされた。演劇部員だった高校時代にも原発事故で亡くなる役を演じたことがあるが「当時は原発事故に現実感はなかったけど、今はリアル。復興よりも被災地からの避難を優先してほしい」と話す。
公演は無料。
=2012/02/09付 西日本新聞朝刊=