日能研教務部算数科 真藤 啓
このページは、「進学レーダー3月号」に連載している算数エッセー「算数好きになるくすり ユーリカ2」のうち、問題や解説など、紙面で書ききれなくなったことを補足するために、開設しています。
今回から、サブタイトルをつけることにします。これはバックナンバーの目次用のことも考え、内容を一言で概観できるようにするためです。今回は「立体と規則性――積分学への胎動」としてみました。
アルキメデスは、球の体積をどのようにして求めたのでしょうか。アルキメデスの文章は、今日の算数の表現と比べ大変わかりにくいのです。と言うのは、算数(数学)の用語ができていない、積分という概念もない時代に、積分を日常語を駆使して、粘り強く書いているからです。
そういう意味では、小学生には逆にわかりやすいのかもしれません。
【予備知識1】 カヴァリエリの原理
2つの立体を、共通な平行面で切ったときの、切り口の面積がいつも等しいとき、2つの立体の体積は等しい。
説明
2つの立体、たとえば、底面積も高さも等しい円錐と三角錐があるとき、この2つの立体を水平面に底面を載せて、水平面に平行な平面でスライスしますと、切り口の面積はいつもそれぞれ等しくなります。
ここでスライスとは、同じ厚さ(薄さ)の紙のようなペラペラのハム(体積はある)を想像してください。
それで、スライスの体積は等しいので、全体の体積が等しくなります。
円錐と三角錐に限らず、2つの立体を共通な平行面で切ったときの切り口の面積がいつも等しいとき、2つの立体の体積は等しくなります。
これは直感的にわかると思います。
【予備知識2】 三平方の定理
直角三角形の直角をはさむ辺の平方の和は、斜辺(直角に向かい合う一番長い辺)の平方に等しい。(三平方の定理)
右の図のように、相似な図形ア、イ、ウの対応辺が、直角三角形を作るとき、
ア、イ、ウの面積は ア+イ=ウ となる。(先々月説明済みですが)
【予備知識3】 球の体積
球と円錐と円柱を同じ高さでスライスする。
まず、球に外接する円柱を考える。その円柱に内接する合同な2つの円錐を考える。
高さを半分に切っても割合は同じなのでそれで考えてみる。
たてに切ったときの断面図で半径を調べる。
円柱、円錐、球を同じ高さできったときの、切り口の形はいずれも円になり、そのときの3つの円の半径で三角形を作ると、いつも直角三角形になる。
説明
カヴァリエリの原理により、円柱の体積=円錐の体積+球の体積である。
円錐の体積は、円柱の体積のであるから、球の体積は円柱の体積の
となる。
円柱の体積=半径×半径×円周率×(半径×2)=2×円周率×半径3
球の体積=2×円周率×半径3×=
×円周率×半径3
球の体積暗記法
円周率をπ(パイ)で表し、半径をr(アール)で表し、
身(3)の上に、心配あるので参上す。
と暗記する方法が知られています。
《注意》 公式は覚えておかなくても大丈夫
公式は覚えておかなくても大丈夫です。球の体積を求める問題はあまり出ません。出る場合は、公式が与えられます。
楕円の面積や楕円体の体積について話しましょう。
楕円は板の上にピンを2本さして、糸で作った輪をかけて、鉛筆でピンとはりながらかけばかけます。
楕円はまた、円をたてまたは横に伸ばしたり縮めたりしたものと考えられ、長い半径と短い半径(正確な表現ではありませんが)と円周率をかけると求められます。
楕円の面積=長い半径×短い半径×円周率
円の面積=半径×半径×円周率
となります。逆にいうと円は楕円の2つの半径が等しい特別な場合とも見られます。
楕円体は、たて、横、高さの半径の積の×円周率倍です。
楕円体の体積=×円周率×a×b×c
楕円体の3種類の半径のうち、2つが等しいものを回転楕円体といいます。
回転楕円体の体積=×円周率×a×a×b
回転楕円体の体積=×円周率×a×b×b
楕円体の3種類の半径のうち、3つとも等しいものを球といいます。
球の体積=×円周率×半径×半径×半径
球を3つの異なる大円(球を、中心を通る面で切ったときの切り口の形を大円という)で切ると小さな三角錐ができます。球の表面積の一部分と半径とから球の体積の一部分が求められます。
球の一部(三角錐)の体積=
×半径×表面積の一部
その総和は
球の体積=×半径×表面積
つまり、×円周率×半径3=
×半径×表面積となる。
だから、表面積=4×円周率×半径2 となる。
《参考》 円柱と球
球と円柱を同じ高さの平行面で切ったときの平行面ではさまれた部分の表面積は等しい。
円柱はずんどう型なので半径は変わらない。球は半径が北極や南極にいくほど小さくなるが面が斜めになるので、結局、どこをどの幅で切り取っても面積は変わらない。アルキメデスはこの事実を大変難しい計算を根気よくして見つけました。
薄く切ったときの、円柱の側面はどこも同じです。他方、球面では極に近づくほど半径は小さくなるのですが、ちょうどその分斜めになるので一定なのですが、少し詳しく述べますと、
右の図では、
a:b =:
となります。相似の直角三角形の辺の比として考えられます。
結局、薄く切らなくても、8枚切りでも12枚切りでも、そうして、何にも切らなくても、円柱の側面と球の表面の面積は等しいのです。
この発見におどろき、アルキメデスは、「お墓に球とそれに外接する円柱の絵を描いてほしい」といっていました。アルキメデスが、図をかいてほしかったのは正解です。図であれば、時代を超えことばを超えて、アルキメデス生涯の歓喜の言葉「ユーリカ」が発信できると思ったのだと思います。
算数数学の中身は世界中に共通であるということを改めて感じます。これは、敵のローマ軍の司令官によってかなえられました。しかし、やがて、そのお墓は行方不明になってしまいました。
ところが、1936年から始まった、「数学のノーベル賞」と言われる世界規模の数学の賞の一つ「フィールズ賞」のメダルには表にアルキメデス、裏にはアルキメデスの「球と円柱」が描かれています。このときから、球と円柱の関係の発見は世界のユーリカとなったといえるのではないでしょうか。
「円柱と球の体積比が3:2、表面積比も3:2、円柱の側面積が球の表面積と等しい。」などがこめられたこの図案は、これからも青年数学者や、未来人である子どもたちに感動の追発見をさせ続けることでしょう。
フィールズメダルの画像がWEB上で見つかりました。
http://www.mathunion.org/Prizes/Fields/AboutPhotos.html
「Stefan Zachow(ZIB)が製作したものですが、著作権なしで自由に出版できる」とありますので掲載します。
メダルの表の面の中心は、アルキメデスの横顔です。アルキメデスの画像を囲んでいるのは、ローマの詩人マニリウスの詩の一部で、「あなたの精神を超えて、あなた自身を宇宙の支配者にするために」とラテン語で書いてあります。
顔の左の文字、RとTとをMでつないだマークは、つまり、R(obert) T(ait) M(cKenzie)は、彫刻家のサインです。メダルの原型はカナダの彫刻家ロバート・タイト・マッケンジ-によって作られました。その下のMCMXXXIIIは製作年1933年です。
顔の右文字 APXIMHOYΣ は「アルキメデスの」という意味のラテン語、つまり「アルキメデスの(顔)」という意味。
メダルの裏の面には、これもラテン語で「全世界の中で、著しい業績を上げた数学者」とあり文字の後に月桂樹の枝があり、背景は、アルキメデスの墓の上にあったと考えられる、「円柱に含まれる球の図」です。図が分かりにくい人は画像をクリックしてください。
メダリスト(受賞者)の名はメダルのふちに彫られます。
「カヴァリエリの原理」は知っていても、カヴァリエリ自身についてはあまり知られていないのではないでしょうか。
アルキメデスを後世によみがえらせた人といえるかもしれません。フランチェスコ・カヴァリエリは1598年、イタリアのミラノで生まれ、彼がまだ少年のころ、ミラノで宗教的な組織エスアチ(イエスズ会ではありません)に加わりました。彼は名前にボナベントゥーラをつけました。
彼は1617年、ピサへ転勤しました。ここでは、彼は哲学と神学を勉強して、B・カステッリと接触しました。そして、その人の影響で『原論』などユークリッドの著作に刺激され、幾何学に興味を持ち、生涯、幾何学の研究をするようになりました。
1620年に、カヴァリエリはミラノに戻りました。そして、1621年に彼はボロメーオ枢機卿の助祭になりました。彼はミラノで3年間、神学の講義をしました。
ミラノの修道院にいるとき、カヴァリエリの才能を認めたフェデリーボロメーオ枢機卿は、カヴァリエリにガリレオを紹介しました。ガリレオに会うや、カヴァリエリはガリレオを師と仰ぐようになりました。
ピサでは、カヴァリエリはピサ大学の数学の講師のカステッリから数学を学びました。カステッリはしばしば、「カヴァリエリ君、君は大学で私の講義を引き継げるだろう。」と言いました。カヴァリエリは1619年に募集のあったボローニャで数学の教授職に応募しましたが、そのときは、あまりに若すぎるのでなれませんでした。
1629年に、カヴァリエリはボローニャで数学の教授職に任命されました。この時までに、彼は積分法の開発における要因になった方法をすでに開発していました。幾何学的な量についてケプラー(1571~1630)の理論をすでに取り入れている、アルキメデスの方法の開発でした。この理論は、面積や体積など幾何学的ないろいろな量を、早く簡単に求めることができるようにするものでした。
カヴァリエリの初めての本は、わかりにくく、当初、認められないだけでなく、むしろ広く攻撃されました。それに応えて、カヴァリエリは自分の解説の改善をしました。それは17世紀の数学者のための重要な源になりました。彼は計算ツールとして対数を紹介する本を書きました。その対数の表は、天文学者によっても使用できるように三角関数の対数も載せていました。
カヴァリエリは、円錐曲線、三角法、光学、天文学と占星術について書きました。また、レンズの焦点距離に対する一般的な規則を開発して、反射望遠鏡を解説しました。さらに、運動のいくつかの問題に取り組みました。そして、1646年に占星術、1639年に彼の最後の仕事、プラネタリウムに関するいくつかの本を出版しました。
そうする一方、カヴァリエリは、ガリレオ、メルセンヌ、ロッカ、トリチェリとヴィヴィアーニを含む多くの数学者と文通しました。特にガリレオとは112通以上の文通をしたことが残っています。ガリレオはカヴァリエリを高く評価しました。カヴァリエリの研究は、はるか昔のアルキメデス以外には、誰も調べたことのない途方もなく根気のいる仕事でした。
カヴァリエリの最も有名な弟子は、ステーファノ・アンジェリでした。カヴァリエリが全く年をとって、関節炎を患っていたとき、彼はボローニャでカヴァリエリと研究しました。アンジェリは、カヴァリエリと研究したことなどを逐一、友人の数学者に手紙を書きました。
カヴァリエリは、1647年11月30日、ボローニャ(教皇領)のハプスブルク帝国(現在イタリア)で亡くなりました。
カヴァリエリの仕事はアルキメデスの着想を後世にわかりやすく橋渡ししたことだといえるでしょう。微積分学の確立に対する重要なステップでした。そしてそれは、アイザック・ニュートンとゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツらによって17世紀後半に完成されたのでした。
問題
【4】1辺が2cmの正方形を底面とする高さ8cmの直方体の内部で直径2cmの球を動かすとき、球が通る部分をAとする。1辺が8cmの正方形を底面とする高さ2cmの直方体の内部で直径2cmの球を動かすとき、球が通る部分をBとする。1辺が8cmの立方体の内部で直径2cmの球を動かすとき、球が通る部分をCとする。次の各問いに答えよ。ただし、円周率は3.14とする。
(2006年 灘中)
解法
答え (1)18.84cm3 (2)90.84cm3 (3) 378.84cm3
《参考》
(1)と(2)は平面上で円を移動させたのと同様に考えられる。
そうして、(3)ではそれらから空間について類推する。
立方体の頂点の数(8個)だけ8分球ができ、
立方体の辺の数(12個)だけ4分円柱ができ、
立方体の面の数(6個)だけ平たい円柱ができ、
立方体の中心の数(1個)だけ立方体ができる。
いまご紹介する問題は受験算数の中で、歴史に残る難問の1つだと思います。麻布中の問題は当時からみてさらに20年前の『数学セミナー(日本評論社)』などからよく出ていました。『数学セミナー』は、昔、数学を啓める書物をお書きになっていた遠山啓先生、矢野健太郎先生の創刊された月刊誌で、健在なころは編集会議などにもお出になっておられましたが、両先生がお亡くなりになった今は独自に歩き始めています。日本での数学の普及を大いに高めてきましたし、これからもそうした方向が続くのでしょう。この月刊誌は多くの大学生や高校の先生が読まれていると思いますが、この中に、「エレガントな解法を求む」と言う出題コラムがあり、この応募者にいつも数名小学生が混じっているのには驚きます。
麻布中はそういう問題や特集に出てくる図版などを工夫して、小学生にも質の高い問題をと考えておられたことがわかります。もう1つは、大学入試なども研究なさって、それを、小学生向けに直して問うようなことも見られました。大学入試を自校の在校生のために研究すると言うのは進学校ならどこでもやっておられるでしょうが、しばしば東大入試の先取りのような現象も見られます。
今ご紹介するのは、1987年つまり今から20年程前の麻布中の問題ですが、大学入試の2円柱交差を拡張したものと見ることができます。2円柱が直交するときの体積の問題は、昔、慶応大学の入試に同大学の田島一郎教授が出して以来あちこちの大学入試に出て、高校の教科書にも載るようになりましたが、これを麻布中は角柱交差として出したものでしょう。『麻布の角柱交差』とは次のような問題です。
問題
【5】正四角柱に対し、図Iのように両底面の中心を通る直線を軸(じく)といいます。ここに同じ大きさの正四角柱が3つあり、それらの軸を、
、
とします。
図IIのように、
、
は一点でたがいに直角に交わっています。さらに、
を軸とする四角柱の、軸
、
を含む平面による切り口は、図IIIのようになっています。
、
を軸とする四角柱も、それぞれ他の軸と同じような関係があります。
次の(1)、(2)に答えなさい。
(1987年 麻布中)
解法
同じ高さで切ったときに同じ幅の長方形の重なり、つまり正方形になる。従い、全体は真中が大きな正方形で上下にだんだん小さな正方形を積み重ねてできる立体(正8面体)になる。
立方体を2角柱でくりぬくと考えてもイメージしやすいかもしれない。
そういうイメージをつかんでかき込む。
(2)
答え (1) (2)
《参考1》 双対とは面と点を取り替えた立体
『麻布の角柱交差』でできる立体は菱形十二面体と言います。立方八面体との関係をアルキメデス双対(そうつい)とかカタラン立体と言います。
双対とは2つの多面体があるとき、一方の立体の各面の中心を頂点とする立体が他方の立体にお互いがなっている関係です。
普通の正多面体では
と言う関係になっていることが知られています。
《参考2》 立方体の辺を面にしたひし形12面体
ところで、ひし形12面体は、立方体の辺を面にさせた立体と見ることができます。
右の図を見ると、ちょうど立方体の辺を削り取って面にしたと見ることもできます。(そういう見方をすると答えがわかりやすいと言う意味でもあります。)
この立体はまた、立方体の6つの面に正四角錐をくっつけてできる立体とも見ることができます。
このように分けてみるのもよいです。
第6問
rを正の実数とする。xyz空間において
x2+y2r2
y2+z2r2
z2+x2r2
をみたす点全体からなる立体の体積を求めよ。
(2005年 東京大学理系[6])
解法
x2+y2r2 ・・・・・・(1)
y2+z2r2 ・・・・・・(2)
z2+x2r2 ・・・・・・(3)
とおくと、
(1)と(3)の交わりの体積から、(1)と(2)と(3)の交わりを引くと求められる。
答え r3
2本の円柱の軸どうしが直交するときの体積を求める問題は大学入試ではすでに何十年も前から何度も出ていますが、三軸が交差するのは珍しいです。しかし当然予想される問題であったので、予備校がかねてからテキストに載せていたと思われます。というのはこの問題に対して、予想的中と名乗りをあげた予備校が多かったからです。
これは、前述の麻布中の問題が解けていれば容易だったことでしょう。
(1)と(2)と(3)の交わり、つまり3つの円柱の交わりの立体は麻布の12面体(菱形12面体)の各菱形の面が、円柱の面の一部分なので、全体に膨らんでいます。「膨菱形12面体」(正式な名前は不明)と言う感じです。
これも、立方体の各面に膨らんだ四角錐を載せたような立体になります。あまりうまくかけませんが、うますぎてもわかりにくいのです。
今回は、高校数学の総仕上げ的な課題である、積分の兆しのようなことを発見していたアルキメデスについてでした。また、「アルキメデスの生涯のユーリカ」は「円柱と球の関係」だと言うことは知られています。有名な伝説の王冠の話は実はこうだったのではということで、『進学レーダー』では書きましたが、伝説の信憑性も疑わしいものの、私の話も、正式な文献に全くないものです。その昔、文字はあったものの、文字を読み書きできるのは一部のエリートに限られていたころ、この伝説はできたのでしょう。そうして史実そのものではなくてもアルキメデスを語り伝えやすい話に変えたのだと思っています。
問題
正六角柱ABCDEF-GHIJKLがあります。このとき、次の問いに答えなさい。
(2008年 開智中1回特待生「6」番)
解法
(2) 6つの面のうち1つの面で切られる部分ごとに6つに分けて考える。
図6に対して図4や図5を参考にしてかくと、図7のような図が考えられる。
対称性からさらにたてに半分に割ると、図8のような『切断三角柱』ができるので、体積比は
(4+1+0):(6+6+6)
=5:18
なので、となる
答え (1) (2)
《参考》
鉛筆削りを想像するとわかりやすいのではないでしょうか。
この問題を解く場合に、先のように解くほか、図アのように「はみ出し6角錐」を考えてはみ出し分を調整するとか、下部分を分けて「うちわ6角錐」を考え、下部分を調整するとか、いくつかの解法が浮かびますが、いずれにしろ、先月号で述べたように図ウのように正6角形と辺の中点を頂点とする内接する正三角形の面積比が4:3などをあらかじめ知っておかないと辛いと思います。
《参考》 3つの辺が平行な5面体(切断三角柱)の体積
三角錐の等積変形なので、意味はわかりやすいのですが、わからずに丸暗記しないように、必ず意味がわかって覚えるようにしてください。3.だけ覚えればよいでしょう。
この模様は「麻の葉」という日本の伝統的な文様です。
いろいろなところに使われているので、何度か見たことがあるでしょう。
ここで、問題です。
問題1(未来問)
次の図のように3つの正三角形ア、イ、ウがあります。イはアの高さを1辺とする正三角形で、ウはアの高さを1辺とする正三角形です。アの正三角形の1辺の長さが12cmのとき、ウの正三角形の1辺の長さは何cmですか。
(本稿のためのオリジナル問題)
解法
ウの面積はアの面積の
×
なので、長さは
倍になる。
12×=9(cm)
答え 9cm
問題2(未来問)
次の図のように3つの正六角形ア、イ、ウがあります。イはアの辺のまん中の点を頂点とする正六角形で、ウはイの辺のまん中の点を頂点とする正六角形です。アの正六角形の1辺の長さが12cmのとき、ウの正六角形の1辺の長さは何cmですか。
(本稿のためのオリジナル問題)
解法
ウの面積はアの面積の
×
なので、長さは
倍になる。
12×=9(cm)
答え 9cm
問題(過去問)
次の図のように3つの正方形ア、イ、ウがあります。イはアの対角線を1辺とする正方形で、ウはイの対角線を1辺とする正方形です。アの正方形の1辺の長さが12cmのとき、ウの正方形の1辺の長さは何cmですか。
(古典的中学入試問題)
解法
ウの面積はアの面積の2×2なので、長さは2倍になる。
12×2=24(cm)
答え 24cm
問題
【4】図1のような、底面が二等辺三角形で、側面が正方形と長方形である三角柱があります。この三角柱の側面の正方形を合わせ、図2のような立体をつくります。この立体において、それぞれの三角柱の三角形に番号をつけ、白と黒の2色の色をぬります。
図2の立体において、三角柱と三角柱
を合わせた正方形の対角線の交点を中心として、図3のように三角柱
を90°回転させます。以下、同様に、偶数番号の三角柱を同じ向きに90°回転させます。次の問いに答えなさい。
(2008年 城西大学川越中)
【解法の視点】
スネークキューブで遊んだ事があると簡単かもしれません。そうでない人にはわかりにくいかもしれません。各三角柱を立方体で包んで考えるとわかりやすいと思います。
解法
4つごとに同じ向きになる。
(1)
(2) 13-8=5
(3) 19-8=11 11-8=3
答え (1) (2)
(3)
2月15日現在、入試問題がぞくぞくとはいってきていますが、今年も3年のテキストの問題によく似た問題が出ました。
3年のテキストで「同じ年の3月3日と5月5日と7月7日は同じ曜日である」ことに気付いてもらうようになっていますが、フェリス女学院中で次のような問題が出ました。
ある年の3月1日が月曜日のとき、この年の7月7日は何曜日ですか。(2008年フェリス女学院中)
これは、
ある年の3月1日が月曜日のとき、この年の3月3日は何曜日ですか。
と読むことができます。すると、月、火、水とかぞえて水曜日と分かります。
なお、この連載からも類題が圧倒的にたくさん出ていて、枚挙にいとまがないくらいです。というか、今年、例年にも増して、レベルの高い問題がたくさん出ましたが、まるで、この連載があおってしまったかと思えるほどです。文科省も30年ぶりに、やや難しいカリキュラムに戻る動きがあり、甲斐徹郎さんではありませんが、パラダイムシフトが始まったような感です。
パラダイムという言葉が今年(2008年)の江戸川取手中の国語の問題にでました。冒頭の数行を引用すると
時代時代を見ていくと、どうも徐々に変化してくるのではなくて、どこかで不連続に、ガラッと価値構造が変わる瞬間があります。どう考えても、1960年代から70年代より前の時代と現代とは、都市の価値構造が違う。その価値構造の枠組のことを「バラダイム」と呼びます。
(2008年江戸川取手中の国語の問題『自分のためのエコロジー(甲斐徹郎)』より)
甲斐徹郎(かい てつろう)
1959年東京生まれ。千葉大学文学部行動科学科卒業。環境共生住宅論の専門家、都留文科大学、立教大学、日本女子大学講師
「パラダイム」については、もともとのおこりになど、さらに詳しくは6月号「真理に気づいて!」でコペルニクスやガリレオについて書くときに合わせて述べる予定です。
さて、今年の桜蔭中の問題ですが、
問題
ある整数nを2回かけてできた数と3回かけてできた数の和を《n》で表します。たとえば、《2》=2×2+2×2×2です。このとき、《3》=ア、《17》=イ、《n》=60840となる整数はウです。
(2008年 桜蔭中)
つまり、「n3+n2=60840 のnを求めよ。」ということで、3次方程式になります。
解法
ウ n×n×(n+1)=60840
60840を素因数分解すると、 60840=2×2×2×3×3×5×13×13 となります。
nと(n+1)は「互いに素」ですから、同じ約数を持ちません。たとえば3つとも偶数にはなりません。すると、必然的に、(3×13)×(3×13)×(2×2×2×5)=39×39×40 となります。
答え n=39
これは、矩形数の問題として扱った、この連載の「20007年4月号 まぼろしの定理」の次の問題に似ているようです。実は、これについては昨年「プレジデント・ファミリー」に取材を受けて、灘中や筑波大駒場中や麻布中の問題と東京大学の過去問との類似性が話題になったときに、記者が「来年、桜蔭中あたりから、類題が出そうですね」と水を向けてきたので、「そうかもしれません」と答えておいたのですが、本当に出るとは実は思っていませんでした。「プレジデント・ファミリー」の記者ってすごいなあと感心します。
本稿の07年6月号「カールの秘密」 3. 矩形数の問題(2005年東京大学前期文理科共通)で、以下のようなことを述べましたが、
【再掲 矩形数の問題(2005年東京大学前期文理科共通)】
問題
連続する2つの整数の積、(a-1)×aが10000で割り切れるような数aを求めなさい。ただし、aは3以上9999以下の奇数です。
(2005年 東京大学前期文理科共通・改題)
解法
10000=2×2×2×2×5×5×5×5 である。連続する2つの整数(a-1)とaは「互いに素」(両方が2の倍数であることはない。両方が5の倍数であることはない。)なので、どちらかが (16=2×2×2×2) の倍数で、どちらかが、 625(=5×5×5×5) の倍数である。
aは奇数であることから、aは625の倍数で、(a-1)は16の倍数である。
言い換えるとaは、625の倍数で、16で割って1余る数である。
ここまでくると、よくある中学入試問題となります。
625-1=624=16×39 なので、 a=625 は成り立つ。
(625は625の倍数で、16で割って1余る数である。)
次に大きい数は、 625+625×16=10625 ですが、9999を越えますので不適当である。
答え a=625
2つの問題について共通する重要なことは「互いに素」に着眼することです。今年は(今年から?)、中学入試は難しくなりました。受験生も大変ですが、きっと一生物の力がつくことでしょう。
手前味噌ですが、この連載は、入試にかなり役立つと思いますのでこれからも、目を通すようにすることをお勧めします。