日能研教務部算数科 真藤 啓
このページは、「進学レーダー」に連載している算数エッセー「算数好きになるくすり」のうち、問題や解説など、紙面で書ききれなくなったことを補足するために、開設しました。
今回は5月号「マチ子がんばれ」です。
問題
ある学年の委員3人を次の2回の選挙で決めることにしました。
(選挙1)各クラスの中から代表を1人決めます。
(選挙2)各クラスの代表の中から学年の委員を3人決めます。
ただし選挙のときは、候補者のだれか1人に必ず投票し、立候補した人は自分に投票するものとします。
全体で5クラスあり、どのクラスの人数も40人です。次の(1)~(3)の問いに答えなさい。
太郎 | 花子 | かずお | よしこ | あきら |
---|---|---|---|---|
52 | 26 | 13 | 4 | 35 |
(2007年 日本女子大附属中第1回算数IV)
解法
あきらを49票にすれば、花子とかずおの両方がともに49票にはできない。
(落選や同点の可能性のある最大得点)+1を目指す。
よって、あと、49-35=14(票)
答え (1) 21票 (2) 20票 (3) 14票
問題
生徒数が480人の学校の生徒会で4人の委員を決める選挙にA、B、C、D、E、F、Gの7人が立候補しました。開票数が410票になったところで中間集計を行うと上位5名の得票数はAが100票、Bが85票、Cが70票、Dが60票、Eが50票でした。無効票はなかったものとして、次の問いに答えなさい。
(2007年 甲陽学院中【5】)
解法
答え (1) 2人 (2) 76票
(注意) 勝つと思うな。負けまいと思え。
日本女子大附属中にしても、甲陽学院中にしても、まっすぐ当選を狙ったり、都合よく考えたりすると、難しくなってしまいます。
いったん、どうだったら落選する可能性があるかを求め、それを打破することを考えます。ゲームの必勝法の問題では、相手が自分に一番都合の悪い操作をしたときにどう対応するかと考えますが、そうした問題を解く場合に通じる考え方と言えます。
問題
A、B、Cの容器にはそれぞれ水が入っていて、水の量が少ないほうから順に並べると1ずつの差になっています。今、Aに入っている水の量の
をBに移し、その後Bに入っている水の量の
をCに移したところ、水の量が少ないほうから順にA、B Cとなり、AとB、BとCの差は、ともに4
となりました。
このとき、次の問いに答えなさい。
(2007年 開智中1回【2】)
解法
答え
(1) 1減った。
(2) (15、17
、16
)、または、(20
、21
、19
)
(注意)
解法の文中、(1)、(4)、(5)はふつう丸付き数字で表しますが、丸付き数字は機種依存文字ですので、ここでは、このように青文字で表していますが、丸付き数字としてお読みください。
問題
1入りの大きなコップが5個あります。どれにも、少しずつ水が入っています。全部あわせて1
になります。一番多く入っているコップをAということにします。ほかのコップはAより少ないものとします。
次のア~ウの操作を、順に繰り返し行うものとします。
(2001年 東京大学【5】改題)
解法
もとにした問題の原文 2001年前期東京大学理科数学【5】
容量1リットルのm個のビーカー(ガラス容器)に水が入っている。m≧4で空のビーカーは無い。入っている水の総量は1リットルである。またXリットルの水が入っているビーカーがただ一つあり、その他のビーカーにはXリットル未満の水しか入っていない。
このとき、水の入っているビーカーが2個になるまで、次の(a)から(c)までの操作を、順に繰り返し行う。
説明
最初にXリットルの水の入っていたビーカーをAと呼ぶことにする。
(説明終)
なお、「進学レーダー5月号」の算数エッセー『マチ子がんばれ』は日本女子大附属中の問題をヒントに作り上げたフィクションであり、実在のモデルなどは存在しません。
上記東大の(2)は、某大学受験雑誌に大変な難問と書いてありましたが、受験算数と比べて、さほど難しくないですよね。2個のときを聞いているとき、その1回前の操作の3個のときで考えるところが、受験算数の「選挙と当選確実」の問題と似ていると思います。
今回取り上げた問題は、初めて取り組むと、多くの方が難しく感じるものばかりですが、特別の予備知識は要りませんので粘り強く考えればどなたにも解ける問題だと思います。