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教務エッセイ(算数)算数好きになるくすり

マチ子がんばれ

【推理算】
  • 2007年5月号

日能研教務部算数科 真藤 啓

このページは、「進学レーダー」に連載している算数エッセー「算数好きになるくすり」のうち、問題や解説など、紙面で書ききれなくなったことを補足するために、開設しました。
今回は5月号「マチ子がんばれ」です。

【目次】
  1. 2007年日本女子大付属中【IV】と解法
  2. 2007年甲陽学院中【5】と解法
  3. 2007年開智中(1回)【2】と解法
  4. 2001年東京大学理科前期数学【5】と解法
1. 2007年日本女子大付属中【IV】と解法

問題

ある学年の委員3人を次の2回の選挙で決めることにしました。

(選挙1)各クラスの中から代表を1人決めます。
(選挙2)各クラスの代表の中から学年の委員を3人決めます。

ただし選挙のときは、候補者のだれか1人に必ず投票し、立候補した人は自分に投票するものとします。
全体で5クラスあり、どのクラスの人数も40人です。次の(1)~(3)の問いに答えなさい。

  • (1)(選挙1)で、あるクラスでは2人が立候補しました。少なくとも何票とれば、必ずクラスの代表に選ばれますか。
  • (2)(選挙1)で、あるクラスでは4人が立侯補しました。少なくとも何票とれば、必ずクラスの代表に選ばれますか。
  • (3)下の表は(選挙2)で、130票まで開票したときの5人の得票数の様子です。
    あきらさんが委員に選ばれるためには、少なくともあと何票必要ですか。
太郎 花子 かずお よしこ あきら
52 26 13 4 35

(2007年 日本女子大附属中第1回算数IV)

解法

  • (1)40÷2=20(票) 20票どうしでは、決まりません。20+1=21(票) でクラス代表に選ばれます。
  • (2)40-4=36(票) 36÷2=18(票) 1+18+1=20(票)
  • (3)40×5÷4=50(票)・・・・50票より多い人(A)はすでに当選確実
    あきらを4位にさせるには
    (200-52-4)÷3=48(票)
    であればよい。

[解法] 2007年 日本女子大附属中第1回算数IV

あきらを49票にすれば、花子とかずおの両方がともに49票にはできない。

[解法] 2007年 日本女子大附属中第1回算数IV

(落選や同点の可能性のある最大得点)+1を目指す。
よって、あと、49-35=14(票)

答え (1) 21票 (2) 20票 (3) 14票

2. 2007年甲陽学院中【5】と解法

問題

生徒数が480人の学校の生徒会で4人の委員を決める選挙にA、B、C、D、E、F、Gの7人が立候補しました。開票数が410票になったところで中間集計を行うと上位5名の得票数はAが100票、Bが85票、Cが70票、Dが60票、Eが50票でした。無効票はなかったものとして、次の問いに答えなさい。

  • (1)中間集計で当選確実となった候補者は何人いますか。また、その理由を書きなさい。
  • (2)得票数が450票になったところで再び中間集計を行うと、Aが110票、Bが90票、Eが50票、Fが40票、Gが15票でした。このとき、得票数が何票であればCは当選確実となりますか。

(2007年 甲陽学院中【5】)

解法

  • (1)あとの480-410=70(票)がD、Eに流れると、Cは負ける可能性がある。
    C、D、Eがともに85票になるには
    (85-70)+(85-60)+(85-50)=15+25+35=75(票)
    必要だが足りない。よって、A、Bの2人は当選確実。

[解法] 2007年 甲陽学院中【5】

  • (2)110+90+50+40+14=305
    450-305=145(票) CとDの和
    未開票30票が、C、D、Eに流れるとすると、
    (145+50+30)=75×3
    よって、Cが76票であれば、D、E2人がともにCを上回ることはない。

[解法] 2007年 甲陽学院中【5】

答え (1) 2人 (2) 76票

(注意) 勝つと思うな。負けまいと思え。

日本女子大附属中にしても、甲陽学院中にしても、まっすぐ当選を狙ったり、都合よく考えたりすると、難しくなってしまいます。

いったん、どうだったら落選する可能性があるかを求め、それを打破することを考えます。ゲームの必勝法の問題では、相手が自分に一番都合の悪い操作をしたときにどう対応するかと考えますが、そうした問題を解く場合に通じる考え方と言えます。

3. 2007年開智中(1回)【2】と解法

問題

A、B、Cの容器にはそれぞれ水が入っていて、水の量が少ないほうから順に並べると1ずつの差になっています。今、Aに入っている水の量のをBに移し、その後Bに入っている水の量のをCに移したところ、水の量が少ないほうから順にA、B Cとなり、AとB、BとCの差は、ともに4となりました。
このとき、次の問いに答えなさい。

  • (1)Bに入っている水の量はどれぐらい変化しましたか。増えた場合は「何増えた」、減った場合は「何減った」、変わらない場合は「変わらない」、と答えなさい。
  • (2)最初にA、B、Cの容器に入っていた水の量はそれぞれ何ですか。考えられるすべての場合について書きなさい。

(2007年 開智中1回【2】)

解法

  • (1)最初のAの量を(5)とおくと、あとのA、B、Cは(4)(4)+4(4)+8である。
    Bについて、((4)+4)から、順にさかのぼって考えると、
    最初のBは((4)+4)←((5)+5)←((4)+5)なので、Bは1減った。
  • (2)3量の平均は、最初もあとも同じ、(4)+4なので、最初の3つは (4)+3、(4)+4、(4)+5で、
    このうち、(4)+5はBなので、(4)+3、(4)+4は、A、CまたはC、Aである。
  • (i) 最初のA=(5)(4)+3のとき、(1)=3なので、A=(5)=3×5=15 C=16 B=17
  • (ii) 最初のA=(5)(4)+4のとき、(1)=4なので、A=(5)=4×5=20 C=19 B=21

答え
(1) 1減った。
(2) (15、17、16)、または、(20、21、19

(注意)
解法の文中、(1)(4)(5)はふつう丸付き数字で表しますが、丸付き数字は機種依存文字ですので、ここでは、このように青文字で表していますが、丸付き数字としてお読みください。

4. 2001年東京大学理科前期数学【5】と解法

問題

1入りの大きなコップが5個あります。どれにも、少しずつ水が入っています。全部あわせて1になります。一番多く入っているコップをAということにします。ほかのコップはAより少ないものとします。
次のア~ウの操作を、順に繰り返し行うものとします。

  • ア 入っている水の量が一番少ないコップを選びます。一番少ないコップがいくつかあったときには、どれかを一番少ないコップとします。
  • イ 次に、残りのコップから、入っている水の量が一番少ないコップを選びます。一番少ないコップがいくつかあったときには、どれかを一番少ないコップとします。
  • ウ さらに、アで選んだコップの水をイで選んだコップにすべて移し、空になったコップは取り除きます。
  • (1)はじめに一番多く入っているAの量が未満であるとき、Aは途中で取り除かれるか、
    または水の量が増えて最後まで残っているかであることを説明しなさい。
  • (2)はじめに一番多く入っているAの量がより多いとき、Aはもとの水のまま最後まで残ることを説明しなさい。

(2001年 東京大学【5】改題)

解法

  • (1)2個のコップが残る前の3個のコップのときを考える。
    3個のうち、最大の量は以上のものは少なくとも1つあり、これがAであれば増やされたことになる。
    また、これがAでないならば、次の操作で、増やされるか除かれる。よって、証明された。
  • (2)A以外のコップを水の少なくない順に、B、C、D、Eとすると、
    (Dの量+Eの量)は(1)×を超えないので、
    (Dの量+Eの量)が(Aの量)より多くなることはない。
    移し終えた3つのコップ、B、C、Dを、水の少なくない順に改めて、B、C、Dと名前を付け替えると、
    (Cの量)+(Dの量)は(1)×を超えないので、(Aの量)より多くなることはない。
    移し終えた2つのコップ、B、Cの量はいずれもAより少ない。
    よって、Aはもとの水のまま最後まで残る。

もとにした問題の原文 2001年前期東京大学理科数学【5】

容量1リットルのm個のビーカー(ガラス容器)に水が入っている。m≧4で空のビーカーは無い。入っている水の総量は1リットルである。またXリットルの水が入っているビーカーがただ一つあり、その他のビーカーにはXリットル未満の水しか入っていない。
このとき、水の入っているビーカーが2個になるまで、次の(a)から(c)までの操作を、順に繰り返し行う。

  • (a) 入っている水の量が最も少ないビーカーを一つ選ぶ。
  • (b) さらに、残りのビーカーの中から、入っている水の量が最も少ないものを一つ選ぶ。
  • (c) 次に、(a)で選んだビーカーの水を(b)で選んだビーカーにすべて移し、空になったビーカーを取り除く。この操作の過程で、入っている水の量が最も少ないビーカーの選び方が一通りに決まらないときは、そのうちのいずれも選ばれる可能性があるものとする。
  • (1) X<のとき、最初にXリットルの水の入っていたビーカーは、操作の途中で空になって取り除かれるか、または最後まで残って水の量が増えていることを証明せよ。
  • (2) X>のとき、最初にXリットルの水の入っていたビーカーは、最後までXリットルの水が入ったままで残ることを説明せよ。

説明

最初にXリットルの水の入っていたビーカーをAと呼ぶことにする。

  • (1) 2個のビーカーが残る前の3個のビーカーのときを考える。3個のうち、最大の量は以上のものは少なくとも1つあり、これがAであれば増やされたことになる。また、これがAでないならば、次の操作で、増やされるか除かれる。よって、説明された。
  • (2) m=5のとき、最大のビーカーをAとし、A以外のビーカーを水の少なくない順に、B、C、D、Eとすると、
    (Dの量+Eの量)は(1)×を超えないので、
    (Dの量+Eの量)が(Aの量)より多くなることはない。
    m>5のときも、最小の2個の量を合わせて(Aの量)より多くなることはない。
    以下、移し終えた3つのビーカー、B、C、Dを、水の少なくない順に改めて、B、C、Dと名前を付け替えると、
    (Cの量)+(Dの量)は(1)×を超えないので、(Aの量)より多くなることはない。移し終えた2つのビーカー、B、Cの量はいずれもAより少ない。よって、Aはもとの水のまま最後まで残る。

(説明終)

なお、「進学レーダー5月号」の算数エッセー『マチ子がんばれ』は日本女子大附属中の問題をヒントに作り上げたフィクションであり、実在のモデルなどは存在しません。

上記東大の(2)は、某大学受験雑誌に大変な難問と書いてありましたが、受験算数と比べて、さほど難しくないですよね。2個のときを聞いているとき、その1回前の操作の3個のときで考えるところが、受験算数の「選挙と当選確実」の問題と似ていると思います。

今回取り上げた問題は、初めて取り組むと、多くの方が難しく感じるものばかりですが、特別の予備知識は要りませんので粘り強く考えればどなたにも解ける問題だと思います。

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