政府は、東京電力に公的資本を注入するのに伴い、同社の勝俣恒久会長(71)を退任させ、後任を外部から選ぶ方針を固めた。民間出身者を軸に調整しており、企業経営者への接触を始めた。ただ、電気料金の値上げや原発事故の処理など、難問が山積。人選は難航する可能性がある。
政府や電力各社でつくる原子力損害賠償支援機構は、6月の株主総会後、東電に1兆円規模で出資する方針。東電が福島第一原発の廃炉費用などの負担に耐えきれず、経営破綻(はたん)するのを避けるためだ。破綻した場合、事故の損害賠償や電力供給に支障が出るおそれがある。
機構と東電は3月、同社の将来像を示す「総合特別事業計画」をつくる。その中に機構による資本注入の方針を盛り込む一方、勝俣氏が退任を表明し、経営責任を明確にする方向だ。退任の時期は、6月の株主総会日になる見通し。
勝俣氏は2002年10月に社長に就き、08年6月から会長を務める。昨年4月の記者会見で「経営責任を感じている。退く方向で検討を進めている」と辞任の意向を示していたが、時期は明示していなかった。
後任候補の一人には、JR東海の葛西敬之会長(71)が浮上。国鉄の民営化に携わり、機構の運営委員を務めて東電の事情に明るいため、水面下で打診したが、葛西氏は断った模様だ。
政府は内部昇格では、東電の企業体質を抜本的に変えることは難しく、世論の理解も得られないとみて、企業経営の実績がある民間人の起用をめざす。新会長の意向によっては、昨年6月に就任した西沢俊夫社長(60)の退任も検討する。
公的資本の注入を受けた企業では、銀行のりそなホールディングス会長に03年、JR東日本副社長(当時)の細谷英二氏が就任。日本航空の会長には10年、京セラ名誉会長の稲盛和夫氏が就いた。