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二章:変わったもの
第3話:ついに限界

 浅井剣正は有名人となっていた。先日の決闘騒動にLOVE川神ラジオ、それに引き続き今朝の出来事。今や川神学園で浅井剣正を知らぬ者はいないと言っても過言ではない。


 人伝いに広がる噂には、いつの間にか尾鰭が付き大げさに伝わったりする。


 今朝の出来事も正確には剣正が巻き込まれただけに過ぎなかったのだが、生徒たちの間では『剣正が百代のために戦った』と実際とは異なったもので広がっていた。

 挙げ句の果てに『百代と付き合っているのではないか』などといった疑念も生まれ、剣正からしたらなんとも迷惑な状態になっていた。


「勘弁してくれ……」


 休み時間になるたびに、あれやこれやと質問される剣正。

 昼になっても一向に止まる様子のない質問責めに完全に参っていた。


「どれもこれもあの先輩の……」


 心の声が漏れ、つい呟いてしまう。


「私がどうかしたか?」


 そこに現れたのは、剣正にとって今一番出会いたくない人物だった。


「うおっ!?」


 驚きのあまり一歩二歩と後退ってしまい、後頭部をぶつけてしまう。


「ってぇ……いきなり現れんなよ」


 ぶつけた箇所を手で押さえながら文句を垂れる剣正。


「どこを歩こうと私の勝手だろ。それともお前には私の行動を制限できる立場なのか?」


 一瞬無視を決め込もうとした剣正だったが、今朝の事もあったため断念し話を続ける。


「先輩のせいで、こっちは大変な目にあってるんだ。頼むから俺に関わらないでくれ」

「嫌だ」


 真っ正面からたった一言で切り捨てられる。剣正の心からの願いは叶わなかった。


 剣正の中で何かがキレた。


「いい加減にしろよ! もう我慢の限界だ!」


 百代と出会ってから今日までの間に剣正はありとあらゆる嫌がらせ(イタズラ)を受け続けてた。

 今までは我慢をしていたが、些細な事でも積もり積み重なれば大きなものになる。いつ爆発してもおかしくなかったのだが、今回のことでついにキレてしまったのだ。

 この騒ぎを聞きつけ川神学園の生徒たちが集まり出す。元々人気のある百代と今や時の人である剣正の言い争い。それは注目されて当然だった。瞬く間に廊下は野次馬で溢れかえり箱詰め状態になる。

 そんな中でも剣正と百代を中心とし二メートル以内には誰も居なかった。 いや、正しくは近付けずにいたのだ。互いが発する気に当てられ、一般人である生徒は体が本能的にこれ以上ね接近を許さずにいた。

 周囲の様子が目に入らない剣正は、語気を強め百代にくってかかる。もし見えていたとしても状況は変わらなかっただろう。


「一回だけだ」


 剣正の言葉を聞いた百代の耳が僅かに動く。


「一回だけやってやる」


 そう言うと剣正はワッペンを床に叩きつけた。奇しくもこれは剣正を有名人へとさせた決闘の議を申し込む行動。

 それを見た百代はニヤリと笑うと、自身の持つワッペンを剣正のワッペンの上に重ねた。

 剣正の申し込みが受理されたのだ。

 百代からすれば願ったり叶ったりの状況。

 これまで何を言っても戦いを拒まれていた相手から決闘を申し込まれたのだから。


「楽しみにしているぞ」


 百代はそう言うとこの場から立ち去っていく。歩いている百代の顔には笑みが浮かんでいた。

 戦いに魅入られた狂気の笑みが……。

 この話は生徒間で爆発的に広がり、川神学園で知らぬ人がいないくらいまでの注目を集めた。


 剣正の武勇伝(?)にまた一つ刻まれた瞬間でもあった。

お久しぶりです!
リアルが忙しく執筆する時間が中々とれず……

今回はいつにも増して短い話でしたがご容赦を orz

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