一章:護りたいもの
第10話:決闘の代償と手に入れたモノ
決闘の日から数日後、すっかり怪我の具合もよくなった剣正はご機嫌な様子で朝の通学路を歩いていた。
何故ご機嫌なのかというと、怪我をしている間はずっと大和が何かと世話をやいていたからだった。それ自体は善意からやってもらっていたことなので何ら問題はない。
だが、大和が剣正の世話をやいている時、必ずと言っていいほど突き刺すような視線が剣正へと向けられていたのだった。
もちろん視線の主は京。いつもなら一緒に過ごしていた時間であっても、大和が剣正の傍にいたために二人の時間が無くなってしまっていた。大和と過ごすことが至福の時間だった京からすれば剣正は邪魔者。
だからと言って直接言うと大和に何を言われるかわからず、結果剣正へと嫉妬などの邪念が籠められた視線が向けられていたのだ。
「直江には悪いけど、アレは勘弁だぜ……」
数日間に及ぶ自分を見ていたあの視線を思い出した剣正は少しどんよりといた表情を浮かべる。
そこに剣正の横を歩いていた猫が『にゃー』と声?をかけた。
「おっ、元気出せって言ってくれてるのか?」
「にゃー」
本当に会話が行なわれているのかは定かではないが、剣正の顔に笑みが戻ったのは間違いなかった。
「お前も元気になってよかったなぁ」
剣正の隣を歩く猫は先日怪我を負った猫だったが、獣医の治療と剣正たちが看病したことで剣正同様すっかり元気を取り戻していた。
「お前も九鬼には礼を言わないとな」
「にゃー」
このあとも川神学園までの道のりを剣正と猫は会話?を楽しみながら歩いて行く。その光景を見ている者がいたが、剣正たちは気付くことはなかった。
◆◇◆◇◆
学園に着き下駄箱にある上履きへと履き替えた剣正は手に持っていた鞄を肩に掛けると、足元に居た猫を抱えて教室へと向かう。
学園内に入ってから教室までの間に剣正へと向けられる様々な視線の数々。
(慣れてはきたけど、いい加減治まってくんねーかな)
この視線の原因は数日前に行われた決闘が原因だった。決闘自体は見慣れている生徒ばかりだったが、剣正の起こした行動が拙かった。
勝負がついたのにも関わらず怒りのあまり追い打ちをかけようとしたことで、決闘を見ていた生徒たちに『キレたら何をするかわからない』要するに危ない人物だと認識されてしまっていたのだ。
自分が蒔いた種だったので文句を言うにも言えず、ほとぼりが冷めるまでの間は我慢の日々を送らなければらなかった。
(俺だけが悪いってわけじゃねぇのによー)
心の中で声に出せない叫びを上げ、溜息を吐く剣正。
「浅井くんじゃん。おはよー」
「なんだ小笠原か。おはようさん」
だが、剣正に向けられる視線や思いは、何も悪いものだけではなかった。こうして剣正に声をかけてくれる生徒もいるのだ。大半は剣正が属する2-Fの生徒たちだったが、それでも剣正は嬉しかった。
公にはなっていないが一年の時に起こした事件後、剣正は人付き合いを積極的に行わなくなっていた。
あることが原因だったのだが、二年に進級してもそれは変わらず表面上では仲良くしているようには見せていたが、本当の友達と呼べる者はたった一人を除いて居なかった。
「私じゃ不満な、アレ? その猫って」
「あ? あぁ、コイツか。ようやく元気になったから九鬼に礼を言うために連れてきた」
「そーなんだぁ。よかったね」
「おう」
自分では友達と思っていなかった人物から向けられる好意に、多少戸惑った剣正だったがようやく慣れ始めていた。
その後も次々と話しかけてきてくれる2-Fの仲間たちに感謝しながら剣正は決心した。
もう、臆病になるのはやめよう、と…………。
第一章はコレにて終了です!
中途半端だとお思いでしょう?
私もそうですw
ですが、一章で書きたかったのは心境の変化なのでコレでいいのですw
次回は番外編?みたいなものを1つやりたいと思います!
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