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一章:護りたいもの
第4話:優しさと怒りの一面
 放課後になり浅井剣正は家が並ぶ住宅街の一軒で草毟むしりに勤しんでいた。今は終わりに差しかかっているようで、庭の端には抜かれた草が摘まれ結構な大きさの山が出来上がっている。


「これで……終わりっと」

「御苦労さま。いつもすまないねぇ」


 作業を終えた剣正のもとに、家の主である老人がやってきた。手にはおぼんを持っており、おぼんの上にはお茶の入ったコップと御茶請けとして川神名物の久寿餅が乗せられていた。


「ありがとばぁちゃん。これだけでお金貰うの悪いし、他に何かしてほしいことあるか?」


 剣正は川神学園の教師である宇佐美巨人うさみきょじんが経営している代行業にバイトとして雇われていて、今回のような草毟りなど比較的安全なものを担当している。


「そういえば孫がコンピュータの調子が悪いって言ってたねぇ。頼めるかい?」

「パソコンかぁ……俺にはちょっとわからないから、今度詳しいヤツ連れてくるわ」

「いいのかい?」

「孫の為だろ? それくらいならお安い御用だよ」


 出されたお茶と久寿餅を全て平らげるころには日が落ちており春とはいえ肌寒い気温になっていた。


「ご馳走さん。じゃあ俺は帰るわ。あと明日にでもさっき言ってたヤツ連れてくるけど、大丈夫か?」

「大丈夫だよ。本当にありがとうねぇ」

「いいってことさ」


 会話を終えた剣正は宇佐美のところへと報告をするために家を出て行った。








◆◇◆◇◆








 翌日の放課後、住宅街にて剣正ともう一人の少年が歩いていた。


「今日はありがとな師岡。報酬は俺が出すから、給料日まで待ってくれ」

「報酬なんていいよ。おばぁちゃんとお孫さんの笑顔見れたしね」


 パソコンなどの電子機器に疎い剣正は川神学園のクラスメイトである師岡卓也に依頼をしていた。師岡は超がつくほどのパソコンオタクで、剣正が話しを持ちかけると心良く了承してくれたのだった。


「それじゃ俺の気が収まねぇから、今度何か奢らしてくれ」

「そうだねー、じゃあ個数限定の学食をお願いしようかな。アレって競争率高くて、今まで食べたことなくて」

「任せとけ! 必ず食わしてやるよ」

「楽しみにしてるよ」


 こうして話している二人のもとへと先日、剣正が可愛がっていた猫の子供である子猫が現われた。


「おっ、どうしたんだ?今日はお前だけか?」

「この子は?」

「ちょっとした知り合いだよ。……いてっ」


 子猫は抱えられていた手を噛むと、腕の中から抜け出し剣正の方を何かを訴えるように一度見ると走りだして行った。


「なんだ? とりあえず行ってみよう」

「ちょっと浅井くん!?」


 子猫を追うように剣正駆け出した。それを少々遅れ師岡も追った。















 剣正が付いた場所は多馬川の河川敷だった。何故かその場所には剣正が会いたくない人物ともう一人いたが、気にせず子猫のもとへと急いだ。

「おいおい。なんでこんなとこ…………!?」


 剣正の言葉は続かなかった。話しながら子猫のもとへと近づいた剣正が目にしたのは、ここまで追いかけてきた子猫の母。つまり剣正が可愛がっていた猫だった。だが先日までの元気な姿ではなく、全身ボロボロで所々から血も出ている。


「大丈夫か?」


 剣正に抱きかかえられた猫は辛うじて生きている状態で呼吸も怪しい。そこに遅れて師岡がやってきた。


「浅井くん……ってこれは?」

「俺もわかんねぇよ。師岡コイツを連れてゲンちゃんのとこ行ってくれ。今日は仕事ないって言ってたはずだから島津寮にいるはずだから」

「わかった」


 剣正から猫を任された師岡は、あまりない体力を振り絞って島津寮へと走って行った。


「頼むぞ師岡……助けてやってくれ」


 師岡の背を見ながらそう呟くと剣正は振り返り、その場に居合わせた人物へと話しかけた。


「アレやったの先輩たちか?」


 その人物とは綺麗な黒髪をした少女・川神百代とクラスメイトである直江大和だった。


「答えろよ先輩」

「ちが「あー、やったのは私だ」姉さん!?」


 大和の言葉を遮って百代は自分が猫を傷つけたのだと証言した。


「何でやった?」

「お前が中々戦ってくれないからなぁ」

「そんな理由で……ごめんな俺のせいで……ごめんな痛かっただろ」


 猫が倒れていた場所を見ながら小さく呟いた。


「大和下がってろ。離れとかないと怪我するぞ」

「姉さん!?」


 剣正が俯いている間に、離れた場所へと大和を投げた百代。


「アイツらは家族なんだ……それをお前は傷つけた……許せるわけ、ねぇよなァァァァ!!」


 顔を上げた剣正は目の前に立っている百代へと、怒りの形相を浮かべながら突っ込む……。


お待たせしました……活動報告にも書かせてもらいましたが、HDDが天に召され書いていたモノ全部が消滅しました。まー、書きな直せば済むんですが、やる気が……orz

と、まぁ身の上話しはこの辺りで終わりにして、今回の話しはどうだったでしょうか?
不安な気持ちでいっぱいです。猫傷つけちゃってすみません……


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