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飾られずに家庭に眠ったままのひな人形に手を加えて、日常生活の一コマを表現する人形として再び飾る催しが、名古屋市と岐阜県郡上市で開かれる。ひな人形に現代の生活感を与える発想が評判を呼んでいる。
古い着物をミニチュアの着物に作り替えている「古裂(こぎれ)美術工房」(名古屋市熱田区)を開く吉野孝子さん(55)が、ひな人形の「第二の人生」を思いついたのは3年前。飾られなくなったひな人形が捨てられることに疑問があった。「飾らないから捨てるのではかわいそう。お経をあげるだけが供養じゃない」
飾られている時は、むやみに触るのは厳禁のひな人形。首の角度を変えて手元に視線を向けたり、腕を動かして小物を持たせたりして、「日常」を再現した。昨年「福よせ雛(びな)」と名付け、マージャン卓を囲んだ姿や洗濯物を干す男びななど約130体を郡上市の郡上八幡博覧館に置くと、「面白い」と評判になった。
今年は、郡上市の実行委員会が、不要になった2千体を全国から集めた。市内の160以上の店や警察署、市役所などに飾る。畳店では畳を作る様子の人形、警察署には赤ら顔の人形を置いて飲酒運転撲滅のメッセージを伝えるなど、吉野さんが展示場所と関係のある人形に仕立てた。頭髪をモヒカン刈りにした過激な人形もある。それぞれに保管して来年も飾る予定だ。
展示は、8〜12日は文化のみち二葉館(名古屋市東区)、11日〜5月13日は郡上市八幡町内、2月15日〜3月初旬は星ケ丘三越(名古屋市千種区)、2月23日〜3月6日はランの館(同市中区)などである。問い合わせは、古裂美術工房(052・253・9914)へ。郡上市での展示は郡上八幡まちごとギャラリー実行委員会(0575・65・3215)へ。(宮沢崇志)