Updated: Tokyo  2012/02/08 07:59  |  New York  2012/02/07 17:59  |  London  2012/02/07 22:59
 

ストレステストに福島第一原発事故の教訓生かされず-意見聴取会委員

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  2月1日(ブルームバーグ):原子力発電所の安全性を調べる「ストレステスト」には東京電力・福島第一原子力発電所事故の教訓は生かされていない、との見方を経済産業省原子力安全・保安院意見聴取会の2委員が示した。

  ストレステストは原発が設計上の想定を超える地震や津波に襲われた場合、原子炉建屋や炉心の損傷などの深刻な事故に至るまでにどの程度の余裕があるのかを調べる検査。各電力事業者が原発の再稼働の判断に使う1次評価と稼働継続の判断に使う2次評価の2段階で実施し、評価結果を保安院に提出する。

  意見聴取会の後藤政志委員は、ストレステストについて地震と津波といった2つの自然災害が同時に起きた場合を無視しており、原子炉の稼働年数も顧慮されていないと述べた。後藤氏は工学博士で、元東芝の原子炉格納容器設計技師。

  井野博満委員(東京大学名誉教授・金属材料学)は福島第一原発事故前の安全性審査は誤りだったとした上で、同じシステムが原発事故の原因を考慮に入れず使われていると述べた。

  後藤委員は先週の記者会見で、ストレステストは災害をコンピューターでシミュレーションしただけで、人為的なミスや複数の機器の多重故障が含まれていないと指摘した。

              評価結果

  54基の原発中、1次報告書を保安院に提出したのは14基。政府の福島第一原発事故調査委員会が報告書を提出するのは7月の予定。

  保安院は関西電力・大飯原子力発電所の2原子炉の1次評価を承認した。原子炉を再稼働するには地元の了解が必要となる。

  井野委員は先週、事故が起きる前の福島第一原発にストレステストを実施し、実際に起きたことを比較してテストの有効性を確かめるべきだとの考えを示した。その上で、これらの問題に対する答えを得る前に保安院が1次評価を承認したのは間違っていると述べた。

  井野委員によると、東電は委員の意見の一部を受け入れ、ストレステストで福島第一原発を襲った津波のシミュレーションを実施すると述べた。

  後藤委員は、東電が地震や複合災害のシミュレーション・テストを実施する計画がないことや、残骸や漏れ出した燃料に起因する爆発による原子炉へのダメージが顧慮されていない点を指摘した。

  保安院原子力安全技術基盤課の田口達也課長補佐は1月27日、保安院としてはストレステストのやり方を変える予定はないとしながらも井野、後藤両委員から示された懸念については議論していることを明らかにした。

  両委員によると、ストレステストは原発メーカーの三菱重工業が実施している上、三菱重工の元社員を雇用している独立行政法人原子力安全基盤機構が審査するので利害相反が起きる可能性があるという。

記事に関する記者への問い合わせ先:Yuriy Humber in Tokyo at yhumber@bloomberg.net

記事に関するエディターへの問い合わせ先:大久保 義人 Yoshito Okubo yokubo1@bloomberg.netピーター・ランガン Peter Langan at plangan@bloomberg.net

更新日時: 2012/02/01 15:26 JST

 
 
 
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