2012年2月7日10時33分
■延岡湾栽培漁業協会(宮崎県延岡市)
柔らかく殻ごと食べられる。偶然網にかけた漁師だけが味わえた幻のイセエビを、脱皮時期を観察し、急速冷凍することで安定出荷にこぎ着けた。今や人気の高級食材だ。
ゆでて鮮やかな赤色になった殻にかぶりつくと、ごつごつとした外見にもかかわらず歯が一気にぷりぷりの身に届いた。ほんのりと甘い。
地元で「ヤワラ」と呼ばれる脱皮直後のイセエビ。延岡湾栽培漁業協会が、殻が固まるまでの数時間のうちに真空パックにし、マイナス30度で急速冷凍して「のべおかソフトシェルイセエビYAWARA」の名で売り出している。
本業はクルマエビの稚エビの生産。地元で取れるイセエビのうち、市場でほとんど値が付かない小型のものに付加価値を付けようと、2009年から200グラム以下のイセエビを仕入れて養殖を始め、10年に商品化に成功した。
最初は肝心の脱皮のタイミングがつかめなかった。朝、水中に「動かないエビ」がいて、「夜間に脱皮した殻だと気づいた」と技術員の西山桑一朗さん(63)。
さらに観察を重ねると、脱皮前は食欲が落ち、群れから離れることが分かった。今では水槽の水面に浮かべたかごに隔離すると、3〜4日でほとんどが脱皮する。
今季出荷する約1200匹は、ほとんどが東京や京都の料亭、レストランなどに出荷される予定だ。コストがかかり、今は1キロ1万円と値が張るが、同協会常務理事の黒水直雅さん(64)の願いは、地元の身近な食材として流通させることだ。(上田輔)