広島市は、原爆投下後の復興期に建設した「平和アパート」(同市中区)を取り壊す方針を決めた。7日発表した12年度一般会計当初予算案に検討費450万円を計上した。アパートは市営では初の鉄筋コンクリート住宅で、「にんげんをかえせ」で有名な原爆詩人・峠三吉(1917~53)も一時暮らした。建物が老朽化し、同市は建て替えや民間住宅の建設などを検討する。
平和アパートは爆心地の南東約1.7キロにある。原爆投下3年後の48年度に建設が始まり、翌年度までに4階建ての1~3号棟(計72戸)が完成した。現在も高齢者を中心に67世帯が暮らす。
峠は50~53年に3号棟に住んだ。部屋の窓から眼下の京橋川を眺めてつくった「河のある風景」が代表作「原爆詩集」(51年)に収められ、アパート敷地には詩碑が建つ。峠と親交があった詩人の丸屋博さん(86)=ペンネーム・御庄(みしょう)博実=は原爆詩集の刊行直後にアパートを訪れ、峠と夜を徹して詩作への情熱を語り合ったという。丸屋さんは「残念だが、やむを得ない。詩碑も古くなって人目につきにくくなっている。峠のいた平和アパートだったと分かるように残してほしい」と話している。【樋口岳大】
毎日新聞 2012年2月7日 11時11分(最終更新 2月7日 11時30分)