ほとんど家にいなかったし、たまにいても酔ってる。ちゃんと話すことも少なくて、ずっと父・中島らもとの間には薄いベールがあった気がします。
父のバンドにコーラスで参加させてもらった高校1年の時。お酒飲んでだらーっと練習する姿に腹が立った。「みんな一生懸命やってるのに」。帰りのタクシーで怒りをぶつけました。初めて父に意見した、自分からベールをめくった瞬間でした。
「キミは全然わかってない。練習とか技術とかじゃなくて、ロックは殺気やから」。自信満々なんで、何かそんな気もしてきたら、「お父さんおなかすいたからうどん食べて帰るわ」って1人で降りてった。「うどんて。全然殺気ないやん」て。
でも、確かに本番ではオーラを放ってました。ただ立ってるだけなのに、お客さんからバンド仲間までが注目する。わくわく半分、「べろべろやけど倒れへんか」っていう心配半分だったのかもしれませんが。
幼いころの私にとっては「近づいたらいけない人」。好きだと体が心配でたまらないだろうし、嫌いでもつらい。感情を持つと傷つくと直感して、身を守るために傍観してたんでしょうね。反動か、幼稚園のころから好きになるのは40歳以上のおじさんばかりです。今でも。
すごいエネルギーの一方で、繊細でシャイで優しすぎる。娘のことも、かわいがりたいけどやり方がわからない、という感じ。エッセー書いてみろと言われて書くと「才能ある」って。愛情表現だったんでしょう。
大麻で逮捕されてから亡くなるまでの1年半で4回、一緒にライブをやりました。私はサックスなので、ロックにはあんまり必要ない。バンドでしか一緒にいられないので呼んでくれたんでしょう。大人になった自覚も出てきた私は、少しずつベールを取り払って、近づいたかなと思った時、亡くなりました。
同じ仕事をして、「また遠い存在になった」と思います。いい意味で。私が書いたものを読んで、感想を言ってほしい。目を合わせず、ほめるだけでしょうけど。(聞き手・小林恵士)
なかじま・さなえ 小説や音楽など様々な分野で活躍した故・中島らもさんの長女。2009年に初エッセー「かんぼつちゃんのきおく」を発表。10年には「いちにち8ミリの。」で小説家デビューした。33歳。