専門家ゲスト:中村祐輔さん(東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター 教授)
ゲスト:内藤剛志さん(俳優)、城之内早苗さん(演歌歌手)
リポーター:内藤裕子アナウンサー
日本人の2人に1人がかかると言われる“がん”。これまでのおもな治療法は外科手術、抗がん剤、放射線の3つですが、番組では、最近注目されている「がんワクチン治療」の最前線に迫りました。患者自身の免疫力を高め、がん細胞を攻撃するもので、副作用が少なく、月に数回通院して注射を受けるだけという利便性があります。日本では臨床試験の段階ですが、その効果に救われる人も出てきています。すい臓がんでもう治療法がないと言われたものの、肝臓に転移した腫瘍が消え、家族旅行を楽しめるまでに回復した30代の主婦。余命2か月と言われ抗がん剤治療を始めたものの副作用で投与を止めざるをえず、絶望のふちをさまよったが、症状が改善した40代の男性など、がんワクチン治療の体験者を紹介。その驚きの可能性から治療費など課題まで、がんワクチンの全貌をお伝えしました。
ワクチンというと、インフルエンザやBCG、最近では子宮頸(けい)がんなど病気を“予防”するものが知られていますが、今回ご紹介したのは“治療”するワクチン。自分の持つ免疫能力を活性化させ、がん細胞を攻撃します。副作用が少なく、延命効果が認められるのが特徴です。
このワクチンの中に入っているのは、『ペプチド』と言われるタンパク質の断片。『ペプチド』はがん細胞の表面に角のように出ているもので、これが治療に大きく役立っています。
監視役として働く「樹状細胞」が異変を察知、その特徴を記憶
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攻撃役として働く「キラーT細胞」に異物の特徴を伝達
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「キラーT細胞」がウィルスに侵された細胞を攻撃
この一連の流れが、私たちの体を守るいわゆる“免疫”です。
がん細胞も異物ですが、非常に早いスピードで際限なく広がるため、「キラーT細胞」の数が足らず攻撃しきれません。
「樹状細胞」はペプチドが大量に入ってきたことを異常事態だととらえ
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「キラーT細胞」に警告
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「キラーT細胞」も異常事態に反応、自ら数を増やしパワーアップしてがん細胞を攻撃
がんワクチンはまだ承認されていません。
受けるには臨床研究に参加するという方法がありますが、さまざまな条件があります。また、誰にでも効果が認められているというわけではありません。
≪臨床研究 参加の条件≫
・がんの種類
・進行度
・白血球の型・数
・リンパ球の数
・治療歴
・期間・人数
(1) VTR「すい臓がんの女性が受けたワクチン」、「ぼうこうがんの女性が再発予防のために受けたワクチン」はこちら
東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター 中村祐輔研究室
ホームページ:http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/nakamura/
(トップページに病院一覧が貼り付けてあります。)
電話:03-3443-8111(代表)
(2) VTR「小細胞肺がんの男性が受けたワクチン」はこちら
久留米大学病院 がんワクチン外来事務局
ホームページ:http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/F/
電話:0942-31-7975
■注意■
「がんワクチン」についてインターネットなどで検索するとさまざまなサイトにつながり、誰でもすぐ受けられるように感じます。しかし、がんワクチンは日本ではまだ承認されておらず、その効果を確かめる臨床試験の段階です。がんワクチンを希望する方は、そのことを十分考慮する必要があります。
2009年4月に「がんワクチン外来」を設けて以来、手術や抗がん剤、放射線などで効果がなく、もう治療法がないと言われた患者を中心に年間300人近くが受診しています。外来と言ってもがんワクチンはまだ承認されていないため、ワクチン投与を希望する患者は臨床研究に参加するという形になり、ワクチン代の一部を負担することになります。また、主治医からの紹介状が必要で、抗がん剤や放射線など標準治療で効果がある方はその治療を優先し、がんワクチンは補助的に併用するよう勧めています。
ここの特徴は、31種類のペプチドのうち、効果が高いと考えられるペプチドを最高4種類同時に投与することで、どのペプチドにするかは、血液検査で患者の状況を調べて決めます。そのため『テーラーメイドペプチドワクチン』と呼ばれています。
問い合わせは上記 久留米大学病院「がんワクチン外来事務局」へ
※ワクチン投与を希望する場合は大学の臨床研究に参加するという形になり、ワクチン代の一部を負担することになります。
1回投与ごとに10万円弱
≪例≫
・1クール目 6回投与で約58万円(初回の血液検査代込み)
・2クール目 6回投与で約50万円
※金額は久留米大学がんワクチン外来ホームページ:より
なお、悪性脳腫瘍については現在厚生労働省の科学研究費で研究が進められているため、条件の合う方はワクチン代の負担はありません。また、前立腺がん(ホルモン療法が効かなくなり、内臓機能低下で抗がん剤が使えない場合など)については高度医療に認められており、公的医療保険との併用が可能です。
がんワクチンは、もう治療法がないと言われた末期のがんだけでなく、手術後の再発予防にも効果があると考えられ研究が進んでいます。それは「がん細胞」とそれを攻撃する「キラーT細胞」の数の問題です。手術直後、がん細胞が少ない時にがんワクチンを打ち、あらかじめキラーT細胞にがんの目印『ペプチド』を覚えさせておけば、再発を防げるのではないかと考えています。
薬は、大学などによる「臨床研究」、製薬会社が患者に投与し効果や安全性を調べる「治験」、国が審査をして「承認」という道を経て実用化されます。現在、日本国内で実用化に向けて動き出したがんワクチンを表にまとめました。もっとも進んでいるものは、治験の第3段階を終了しており、早ければ今年か来年には日本初のがんワクチンが実用化される見込みです。
≪臨床研究・治験進捗状況≫
・すい臓A、すい臓B・・・東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター 中村祐輔研究室にお問い合わせください。
・肺A・・・グラクソ・スミスクライン株式会社が開発
・肺B・・・メルクセローノ株式会社が開発
・悪性脳腫瘍、前立腺・・・久留米大学 がんワクチン外来にお問い合わせください。
・胆道、ぼうこう、食道A・・・東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター 中村祐輔研究室にお問い合わせください。
・食道B・・・株式会社イミュノフロンティアが開発
・骨髄異形性症候群・・・中外製薬株式会社、大日本住友製薬株式会社が共同で開発
・大腸、肝臓・・・東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター 中村祐輔研究室にお問い合わせください。
※現在、すい臓がんの臨床研究は行っていません。
千葉徳洲会病院
ホームページ:http://www.chibatoku.or.jp/
電話:047-466-7111(代表)
(問い合わせをする場合は「がんワクチン療法について」と伝えてください。)
久留米大学病院 がんワクチン外来事務局
ホームページ:http://www.med.kurume-u.ac.jp/med/immun/F/
電話:0942-31-7975
※現在、ぼうこうがん再発予防の臨床研究参加者の募集は行っていません。
岩手医科大学付属病院
ホームページ:http://www.iwate-med.ac.jp/hospital/
電話:019-651-5111(代表)