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【サッカー】

<目撃者>権田は恐怖の裏側を知った

2012年2月7日 紙面から

 衝撃音から一拍おいて、うなりを上げたサリハの弾丸ドライブ。アンマンの青空に響く「シリアッ!シリアッ!!」の大合唱。顔をこわばらせて引き揚げる権田。キング・アブドゥラ競技場の結末はあまりに残酷だった。

 「みんな頑張っていたのに、一番後ろ(のGK)がこれじゃ…。謝るのもおこがましいです」

 守り切れなかった後悔。そして、陥落…。敗北の責任を1人で背負うことで、現実を受け入れようとしていた。その悲壮な思いが五輪へと導いてくれるとは限らない。ならば、サリハのシュートを褒め、「あれはしょうがない」とは口が裂けても言わない。それは、権田自身が決して望んではいないからだ。

 GKという職業は孤独だ。誰も心配してくれないからこそ、孤独なのだ。勝負は紙一重。このレベルなら、権田ともなれば天国にいて当然。ほんの少しミスを犯せば、奈落の底に突き落とされる。1つのプレーで運命が変わってしまうから、常に自分との「格闘」がある。本人からそんな話を聞いたのは、今年1月のグアム合宿だった。

 「(シーズン中の)オフ前に飲みに行ったりしている選手もいるけど、その場を楽しむより…。それが悪いわけじゃないけど、ボクは違う。サッカー選手としての時間は短い。本当に短い。そのために毎日を使いたい。1つのプレーのために使いたい。1分も1秒も無駄にしたくないんです」

 真っ先に練習場に現れ、いつも最後に帰るのが権田だった。それはみんなが見ている。「自分だけで(責任を)負う必要はない」。関塚監督は権田にそう声をかけたそうだ。

 努力の陰で恐怖の裏側を知った。GKとして強くなる理由が、また1つ増えた。(松岡祐司)

 

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