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■特命調査班 〜マル調〜「開示されない?!“放射能拡散情報”」 2012/01/18 放送

 福島第1原発事故の影響を受けたいわき市内の大部分は、原発の半径30キロ圏外でしたが、放射能被害から逃れようとおよそ5万人が避難したとされます。

 実際、避難した人々は「とにかく遠くへ逃げる」という状態で、科学的根拠に基づいた情報を得ていたわけではありません。

 では、もし仮に福島並の事故が私たちの住む場所で起きた時、一体、何をもとに避難すればいいのでしょうか?

 「マル調」が検証しました。




 東日本大震災の影響で起きた、福島の原発事故。

 原発から出た放射性物質は広範囲に広がり、事態収束のメドは立っていない。

 その原発から、およそ55キロ離れた二本松市では、今週になって放射能に汚染された石がマンションのコンクリートに使われていたことが、新たに判明した。

 万一、事故が起きた場合の備えは大丈夫なのか。

 近畿でも、原発の周辺自治体は危機感を募らせている。

 若狭湾岸に、13基の原発が立地する福井県。

 その隣の滋賀県では、独自のシミュレーションをしているという。

 「マル調」は県の研究施設を訪ね、そのデータを見せてもらった。

 <琵琶湖環境科学研究センター 山中直部門長>
 「美浜、大飯(原発)で、福島と同等の事故が起こったときに、滋賀県にどのような影響があるかを示したものです」

 福井県にある関西電力の大飯原発と美浜原発で、福島並の事故が起きた場合の放射性ヨウ素の拡散予測図だ。

 福井県に隣接する長浜市などでは、甲状腺の被ばく線量は24時間で100〜500ミリシーベルト。

 屋内避難が必要な値だ。

 美浜原発からおよそ90キロ離れた甲賀市では、ヨウ素剤を飲むことが求められる、50〜100ミリシーベルトと予測された。


 では、こうした予測をなぜ、滋賀県が独自に行う必要があったのだろうか?

 <滋賀県防災危機管理局 若林健参事>
 「避難区域、避難経路、避難する場所を決めるなど避難計画に活かしていく。情報を正しく理解して、正しく伝えて、正しく行動してもらうということ。そのことによって原子力については、正しく避難してもらえることにつながると考えている」

 原発からおよそ80キロ離れた、滋賀県湖南市。

 ここは、50〜100ミリシーベルトという予測が出ている地域だ。

 今回のシミュレーションを、地元の人々はどのように受けとめているのだろうか?

 <湖南市民・男性>
 「他人事みたいな考えではないし、ここらへんもそんな被害を受けるんかなあ、という感じはしてるんやけどもね」
 <湖南市民・女性>
 「できるだけわかってることはすべて知りたい。(情報が)早ければいろいろ考えることもできるし」
 <湖南市民・女性>
 「公表してもらったほうが、私としては(いい)そう思います。知らないままでは余計怖いという気がします」

 ところで今回のシミュレーションでは、もともとあった「大気汚染物質」の拡散予測に用いるコンピューターが使われたという。

 本来は、「放射性物質」の拡散を予測する国のシステムを使いたかったというのだが…

 <滋賀県防災危機管理局 若林健参事>
 「もっとも信頼できるシミュレーションということで、文科省の『SPEEEDI』。それを避難計画、あるいは地域防災計画を見直す際に利用したい」

 「SPEEDI」(スピーディ)とは、放出された放射性物質のデータと気象条件や地形に基づき、大気中の濃度や人体への影響を予測するシステムだ。

 およそ116億円かけて整備され、現在は文科省の財団法人が所有し、年間およそ8億円の運営費が投じられている。

 この「SPEEDI」を巡っては、福島原発事故の際のシミュレーションの公表が
遅れたことが問題となった。

 福島県の飯舘村は当初、避難区域に指定された原発の半径30キロからは外れていたため、迅速な避難が行われず、後に線量が高いことが判明した。

 実は、このことは「SPEEDI」のシミュレーションで予測されていたことだった。

 これに滋賀県の嘉田知事は…

 <滋賀県 嘉田由起子知事>
 「不要な外部被ばくをもたらしましたね。これは住民の命を軽視する、本来あってはいけないこと。今のような意識のままだと、また次、起きても提供されないんじゃないかということで、私は『SPEEDI』データの情報公開を言い続けてきたんですけど」

 滋賀県は、去年6月から「SPEEDI」の利用を国に再三求めてきた。

 しかし…

 <滋賀県防災危機管理局 若林健参事>
 「今のところ国の防災指針自体が最終的にまだ固まっていないので、今のところ開示されていない」

 住民の安全を守るための国のシステム。

 ではなぜ、「SPEEDI」を利用することができないのだろうか…


 「マル調」は文科省を訪ねた。

 <文部科学省 田村厚雄防災環境室長>
 「『SPEEDI』というものは、現行、原発から10キロといわれている『EPZ』という範囲がある。『EPZ』の範囲の中でどのように避難区域を設けるか、区域設定などに活用、決定するための支援ツールとして開発されてきたもの。滋賀県はその『EPZ』の範囲外なので、情報提供は難しい」

 国の指針では、原発から半径10キロ以内を防災対策の重点地区に定めているという。

 だが、滋賀県は最も近い美浜原発から県境まで13キロあるため、対象外だというのだ。

 つまり制度上、「SPEEDI」を利用できないというわけだ。

 <マル調>
 「福島の事故が(去年)3月で、直後から10キロを越えて放射性物質が広がっているのは、皆見ている。国民から見ると、それで出さないというのは隠しているという印象を受けるが?)
 <文科省>
 「いや、隠しているというつもりはなくて、情報提供のあり方をきちんと考えろという指摘を受けているので、引き続きそれらの声を真摯に受け止め改善につなげたい」

 専門家は、原発からの距離に拘わらず利用を求める自治体には、提供すべきだと指摘する。

 <同志社大学心理学部 中谷内一也教授>
 「情報がどういうときに一番ひとり歩きするかというと、情報がないときなんですね。不確かな、根拠が薄弱な怪しげな噂が結局は流通してしまう。それくらいだったら不確実性が高いということを前提した上で、流すものは流すというふうにしたほうがいい」

 原発事故からおよそ10か月。

 ようやく、国は滋賀県などにも「SPEEDI」の利用を認める方向で、検討を始めた。

 だがそもそも、その利用を国が制限している限り、原発行政への国民の信頼を得ることができないのではないだろうか。




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