コラム:ツイッターの「検閲」、実際は究極の抗議シンボル
不名誉なグレーボックスに映るかもしれないが、そのユーザーやツイッターにとってはそうではない。当該国が表現の自由を制限していることを、その国のオンラインユーザーに知らせるシグナルになるからだ。エジプトの民主化デモは強力で、ツイッターが原動力になった面があるが、私には検閲された投稿が究極の抗議シンボルになる世界が容易に想像できる。抗議デモ参加者のコンテンツが不幸にも奪われたとしても、それが他の参加者に対し、最も恐れていたことが正しかったと伝えるメッセージとなり、参加者は戦いをやめようとはしないだろう。
例えば、シリア政府の要請に応じて、同国内での検閲が認められたとしても、米国などその他の国では反体制派の投稿のフォローを止めることはできない。これが第二の重要なポイントだ。ツイッターは投稿が検閲の対象になったとしても、そのユーザーが投稿できないようにしたり、アカウントを削除しようとしている訳ではない。シリアのような国は、コミュニケーション網を遮断したり、ツイッターへのアクセスを禁止するかもしれないが、そういった場合を除いて、今回の同社の方針の下では、投稿が外の世界に流れるのを防ぐことはできない。実際、表現の自由が危険にさらされている国において、ツイッターはオンライン状態を保つことを強調している。
政府がアクセスを遮断する「いたちごっこ」を始めた場合、当局と反体制派が最も平等に戦える場所はオンライン上だということを覚えておいてほしい。ツイッター遮断の回避策はすでに存在しており、プロキシサーバーを用いてユーザーのIDや出身国を偽装する方法などがある。
最後に、評判は重要である。ツイッターはこれまで、その優れた活動によってテクノロジー社会や国際社会と友好的な関係を築いてきた。同社は米国務省の要請に応じて2009年、デモの発生したイランからの投稿を止めないためにサーバーのアップグレードを延期した会社だ。今回の発表においても、同社のこれまでの方針や態度に反するような項目は何もない。むしろ、特定の国の法律に従おうとする誠実な試みのように見え、自由が制限されている国では、その国民に法の力をさらすことにもつながる。
世界規模での検閲を要請する国がない限り、投稿はツイッターサーバーのどこかに存在し続けることになり、誰かがそれを見ることが可能だ。特定の国での検閲に関する規則を明確に規定することによって、ツイッターは投稿を削除できる政府や会社、個人はいないことを黙示的に示した。またツイッターは、検閲があった場合、その国に説明責任を課し、自らにも説明責任を課した。
ツイッターが、反対派が主張するように悪であれば、「ツイッター・ブラックアウト」が引き起こした結果が見えるはずではないだろうか。もし、われわれが政府より企業に権力がある世界に生きていれば、私は毎日、新しいメディア企業からそのレベルの透明性を享受することになるだろう。
[28日 ロイター]
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